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37話 私のお姉様①

テルミナ視点の話です。

「ありがとうございました! 是非またお越しくださいませ!」


「ばいばい! お姉ちゃん!!」


 手を振り旅館を去っていった猫人族のお二人、私もお姉様と一緒に頭を下げてお見送りをした。


「ジーナさん、なんだか海猫に来た時とは大違いでしたね。何だか元気になったというか……」


 きっと、お姉様の影響なんだろう。


「うん、じゃあ戻ろうか」


 お姉様は満足げな様子で旅館に入っていった、私もその後をついて行く。お姉様の尻尾は機嫌が良さそうに揺れていた。



〜〜〜〜〜〜〜



 私の名前はテルミナートル・スノーラビット。北大陸、サウスローズ地方に生まれたごく普通の兎人族の女の子です。


 私には、大好きな1人のお姉様がいます、それは猫人族のベールクトお姉様。


 このかたは私の命の恩人です。お姉様がいなければ私は多分死んでいたと思います。


 お姉様と私は海都にある旅館"海猫"で働きながらホワイトリリィ女子魔法学園という歴史のある魔法学園に通っています。


 旅館のお仕事と学園生活、両立は大変ですが……お姉様と一緒に居られることが私にとっては何よりの幸せ!



「はぁ……お姉様ぁ♡」


 離れから庭園のお手入れをするお姉様を眺めます。ああ、今日もなんと美しいのでしょうか……


 お姉様は普段は実に可愛らしいメイド服を着てお仕事をしています、どうやらホーネット様がお作りになられた服だとか。お姉様にとても良く似合っていて……ホーネット様は実にいい仕事をしてくれました。


 不満があるとするなら……私のこの服でしょうか。私はお姉様と違い大和の和服というものを着てお仕事をしております。これも可愛くて気に入ってはいるのですが、どうせならお姉様とお揃いの服が良かったです。



「テルミナ、なにボーッとしてるんだ?」


 ……この声は。


「グリベンさん、なんですか?」


 いつの間にか私の隣にいた人、このかたは竜人族のグリペンさんです。私はこの人があまり好きではありません。この人はやたらお姉様の身体を弄る危険人物の1人!


「いやぁ、なんか三階の客室からお前がここでサボってるのが見えたからさ〜」


「サボってなんかいません、グリペンさんこそ三階の部屋で昼寝でもしてたんじゃないですか?」


 この人はよく空いている客室でお昼寝したりしてサボっているのをみかけます。全くとんでもない人です。


「ぎく……いやいやそんな事はないぞ……」


 と、口笛を吹きながら誤魔化す彼女、嘘が下手すぎです。


「はぁ……」


 気がつけばお姉様は庭園からいなくなっていました。全く私の貴重な時間を……



〜〜〜〜〜〜〜



 海猫での私のお仕事は主に客室や温泉、旅館の色々な場所のお掃除。お出しする料理の配膳。お泊まりになるお客様対応など……まあ普通の宿屋と何ら変わりのないお仕事です。


 因みに私は料理が苦手なので、そういったモノには一切関わりません。前にお姉様のお手伝いをしようとして酷い目に遭いました……


 この旅館で食事担当はお姉様と先程のグリペンさんです。お姉様のお料理は絶品です! 真心がこもっています! グリペンさんも……まあ、そこそこ料理の腕はある様です。


「はぁ……私ももっと料理が上手かったら……」


 旅館の玄関に座り込みながら私は愚痴を溢します。残念ながら調理場はお姉様とあのグリペンさんの城となっており。私が入る隙がありません……


「テルミナちゃん、暇そうだね〜」


 そ、そこに1人の女性がやってきました。


「ファルクラム様、なにしに来たんですか?」


 私の目の前に現れたピンク髪の女性、頭の小さな角と細い尻尾が特徴のこのかたはラーストチカ・ファルクラム様。魔界からやってきたサキュバスの留学生です。


「いや〜、暇だったから。可愛い妹の顔でも見に来ようかなぁって」


 あなたも人の事言えないじゃないですか。


「お姉様は今忙しいんです、どうぞお引き取りください」


 この人はお姉様を狙う危険人物その2。非常に不本意ですけど、この人は学園でお姉様と誓約し姉妹の契りを結んだ誓約姉。


 はぁ……私がもう一学年下だったら……なぜ同学年では誓約出来ないのでしょうか? この点に関しては学園に不満しかありません。


「いや、ここそんなお客さん来ないし忙しくないでしょ」


 と、痛いところを突かれました……確かにこの旅館はそれほど繁盛しているわけではありません。


 確かに最近になってお客様は増えてきましたけど。それでも繁盛しているお店に比べるとまだまだです。


「あれ、チカ姉何しにきたの?」


 と、後ろからお姉様の声。


 はぁ、出来ればファルクラム様にはお姉様に会わずこのまま帰って欲しかったのに。


「暇だったから遊びにきたよ!」


「遊びにって……」


 呆れ気味のお姉様。お姉様はいつもファルクラム様に振り回されっぱなしで可哀想です。


「テルミナちゃ〜ん、そんな嫌そうな顔しないで」


 表情に出てしまいました。


「ほら、お土産あるから! ミラージュが作ったお菓子持ってきたよ!」


 と、空間魔法を駆使してどこからか紙袋を取り出したファルクラム様。


「ミラージュのやつ、最近お菓子作りにハマってるらしくてね、ベルちゃん達に渡してこいって頼まれたんだ」


 初耳です、バイオレット様にそんな一面があったとは。


「お、お菓子……」




 思いっきりお菓子に釣られてるお姉様。あぁ、そんなチョロい所も魅力的です!

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