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33話 頼もし過ぎる援軍

「あの方は……私もよく知りませんが、帝国中で指名手配されている危険人物だと聞いています」


 と、ミステールが説明する。


「危険人物……」


 まあ、確かに少し戦っただけでもヤバイ人なのはわかった。


 そうしてしばらく走ると、広めのホールのような場所に出た。


 天井に大きな金属製の扉のような蓋が見えた、そこから少しだけ太陽の陽が差し込んでいる。おそらくこの地下空間への入り口なのだろう。


 だけど天井は高い、流石にあの高さには届きそうになしどうしたものか……


「はぁ……はぁ……ちょっと、一旦止まろう」


 私はチラリとホールの入り口を見る、追ってきている様子は無いけど、あんな様子で見逃してくれるとも思えない。


「おそらく、目的は私でしょう」


 と、ミステールが突然変な事を言い出した。


「えっと……どういう事?」


 私が目的? 一体どういう事だろうか。


 すると、彼女は被っていたフードを外した。


「変装解除……」


 小さく呟く、すると彼女を取り囲む雰囲気が若干変わった様な気がした。


「あーっ!!」


 テルミナが大声をあげる。


「アナタ様はもしや、エルトニア第四皇女の……!?」


 え? いやいやテルミナ何を言って……


「ふふっ、そうですね。私はミステール・ド・エルトニア。現皇帝の四番目の子になりますわ」



〜〜〜〜〜〜〜〜



「えっと、なんで皇女様がこんな場所に……」


 狼狽するテルミナ、この娘。そんなに偉い方だったの……? 同じ名前だとは思ってたけどまさか本人だったなんて……


「……!?」


 と、そこに背筋が凍る様なプレッシャーが走る。


「追いかけっこはもうお終い?」


 余裕そうな笑みを浮かべる"白百合"使い。やはりそう簡単に見逃してくれるはずもないのか。



「ちょ……この扉開かないんだけど……!」


「どきなさい! "光子(フォトンスパー)煌剣(クルセイバー)"!!!!」


 と、その時だった。聞き慣れた声がした。この声はもしかして……


「2人とも後ろに下がって!」


 私たちは咄嗟に扉のある方から距離をとった。すると、天井の金属製の扉が切り裂かれ大きな音を立て地面に落ちる……!


 そうして太陽の陽が一気に差し込む。開かれた入り口からダッと飛び降りてくる女の人。


「み、ミラ姉様!?」


 降りてきたのはミラ姉様であった。光子(フォトン)を束ねて作った思われる剣を構えていた。刃はそれ専用の(つか)と思わしき魔法具から放たれている。


 あれで斬ったのか……明らかに切れ味抜群ぽいし……


「私もいるよ!」


 背中の小さな翼をパタパタさせてゆっくり降りてくるチカ姉。


「3人とも無事ですの!?」


 ミラ姉が私たちの方を見る。


「2人ともどうして……?」


 一体どういう風の吹き回しだというのか。


「大切な妹の危機、姉が放っておくわけありませんわ!!」


 と、そう叫びながら"白百合"使いに斬りかかるミラ姉。


「っと……!」


 彼女はそれを受けずに躱した。


「その光子の刃は少し厄介だね、受けたら刃ごと斬られそう」


 バックステップで後ろにさがる"白百合"使い。


「"重力鎖(グラビティチェーン)"!」


 チカ姉が呪文を唱える、すると黒い鎖が地面から出現し彼女の足を捕らえた。


「……やれやれ、魔王の(むすめ)まで現れるとは。仔猫ちゃんはよっぽど変人に好かれる体質の様だね」


 何故かディスられる私。ん? というか魔王の娘って……?


「まあ、学生2人だし本気出せば負けないと思うけど、流石にアナタまで一緒だと相手が悪過ぎるかな」


 と、開け放たれた入口を見上げる彼女。そこには鶴の剣聖さんが立っていた。


「剣聖さん……いつの間に」


 全く気配を感じなかった。


「久しぶり、元気してた?」


 スタッと、ホールに降りてきた剣聖さんは軽い口調で彼女にそう言い放つ。


「……やっぱり魔女(ウィッチ)じゃない私がこんな魔法具(おもちゃ)を使っても大して効果はないか」


 "白百合"使いはポケットからペンダントの様なものを取り出して地面に落とす。


「ここ、何処だと思ってるの? 魔女の巣でそんな撹乱魔法(ジャミングマジック)がまともに作用するはずないでしょ」


 落としたのは、何かの魔法具なのかな……? それも気配を隠す様な……


「どうする? 久しぶりに斬り合う?」


 "彼岸花"に手を置く剣聖さん。


「やめておきます、流石に相手が悪い」


 そうして、彼女の足元に私たちを地下通路のような場所に飛ばした時と同じ色の魔法陣が展開される。


「今日はほんのご挨拶です、また会いましょう」


 そうして彼女は消えた、いや何処かに転移したのだろう。場を包んでいた緊張感が一気に消えた。


「はぁ……」


 私は地面にへたり込む。終わった、のかな?


「見逃して良かったんですか?」


 チカ姉が剣聖さんにそう問いかける。


「まあ、私たちが本気で斬り合ったら周りがどうなるかわからないし」


 周り、天井の入口から外を見上げる。見慣れた建物がいくつか見えた、ここ学園だったのか……


「ベル! 大丈夫ですの!?」


 光子の剣を収めたミラ姉様が私に駆け寄ってくる。


「このバカ猫……! 心配させて! どこも怪我していませんわよね?」


 私にギュッと抱きつく彼女。


「にゃっ……! ちょ……くるしい……」


 彼女の大きな胸が私の顔一杯に押しつけられる、柔らかいけど苦しい……!


「あーゴホンゴホン」


 わざとらしく咳き込むミステール様。ミラ姉様はハッと私から離れる。彼女の顔は少し赤かった。


「その……ミステール様、あとテルミナさんもお怪我はありませんか?」


 2人にそう問いかけるミラ姉様。


「はい、私も彼女も無事ですミラージュ」


 落ち着いた様子のミステール様。というか、この人本当に皇女様なのか、あれ? というか……


「ミラ姉様の事ご存知で?」


「ええ、昔からの知り合いです」


 と、ニコニコした笑みを浮かべるミステール様。


「それにしてもあのミラージュがあんなに取り乱すなんて……お熱いモノを見せていただきました♡」


 からかうようにそんな事を言う彼女。


「ちょ……お熱いだなんてやめてください! 私は姉として当然の責務を……」


 狼狽するミラ姉様、そこにチカ姉が近寄ってくる。


「こう見えて、ミラージュはかなりベルちゃんに入れ込んでるからね〜妹ができるのが夢だったみたいだし」


「ファルクラム……余計な事言わないでください!!!」


 と、ワイワイガヤガヤとしたやり取りが続く。すると、ふとチカ姉が真剣な表情をして私を見つめる。


「あの……チカ姉どうかした?」


 チカ姉がこんな表情するなんて珍しい、そして彼女は重い口を開き……


「その……言いにくいんだけど、演劇の開演まであと十分しかない」





 完全に忘れてた……

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