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30話 猫姫と盗賊

・タイトル「猫姫と盗賊」


・あらすじ


 昔々、あるところに。1人の猫姫がおりました。呪いを背負った彼女は、人々に恐れられ王都の隅っこにある離宮に追いやられ外に出る事すら許されませんでした。


 ある日、1人の少女がその離宮に忍び込みました、彼女は兎人族の盗賊。猫姫の呪いのことは知らず、国外から来た彼女はお宝を探して離宮内を探索しましたが目ぼしいものは見つかりません。


 諦めてその場を去ろうとした彼女でしたが、ふと、誰かの気配を感じ取り離宮の一番高い塔に登ってみました。


 その塔の天辺の部屋にたどり着いた彼女、部屋に入るとそこには猫姫がおりました。


「あ、あなたは誰?」


 猫姫は問いかけます。


「私は盗賊、お宝を奪いにきた!」


 猫姫は自分の事を全く怖がらない彼女に驚きました。


「宝物なんてないわ、それよりあなたは私が怖くないの?」


「どうして? こんなに可愛いのに」


 そうして2人はお互いに色々な事をお話ししました。次第に仲良くなっていく2人。盗賊は何回も離宮に通うようになりました。


 しかしある日、悪い魔法使いが現れ、猫姫こそこの王国に災いをもたらす死神で有ると主張しました。魔法使いの主張を信じた国民達は「彼女を国外へ追放しろ!」と叫びます。


 猫姫は心を病み、自ら命を絶とうとしました。しかしそれをすんでの所で阻止した盗賊。


「そんなバカなことはやめて! こんな国出て行って私と一緒に遠い南の島で暮らそう!」


 その言葉に答えた猫姫は盗賊と共に離宮を出て南へ向かいました、しかしそこに魔法使いとその弟子達が追っ手として現れました。


 魔法使いの目的は、追放された猫姫を生贄に捧げ、彼女の呪いの力を解放して王国を乗っとる事でした。


 彼らとの激しい争いに打ち勝った盗賊、そうして無事南の島にたどり着いた2人は末長く幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし。



・配役


猫姫 ベル姉様

盗賊 わたし

悪い魔法使い ラーストチカ様

召使い ミラージュ様



作 テルミナートル・スノーラビット



〜〜〜〜〜〜〜



 脚本の一枚目には大まかなあらすじが載せられていた。二枚目以降の細かい脚本をパラパラめくる。


「これ本気でやるんですか?」


 最後まで読み終えた私、脚本をチカ姉につき返す。


「充分だと思うよ? それより何、ベルちゃんこれよりいいモノ書いてこれる?」


 うぐ、そう言われると弱い。私に脚本なんて書ける気がしない。


「よし、じゃあこれで行こう!」


 結局、ほぼこの脚本が採用されることになってしまった……




 そうして、演劇の練習が始まった。チカ姉は宣言通り"海猫"に泊まって学園に通っていた。彼女の事はお客様扱いしなくていいとラプターさんは言っていた。本当に客室に寝泊まりしているだけで、食事すらここでとっていなかった。一体何処で飲み食いしているのであろうか……


 私とテルミナは仲居の仕事の合間を見つけては練習に勤しんだ。ミラ姉様もたまに海猫に顔を出してくれた。忙しい筈なのに、ミラ姉様は苦労人だなぁ……



 練習を行っていたある日の事だった、海猫に学園の生徒が複数人訪ねてきた。


「えっと……私達も協力させてよ!」


 彼女たちは同じ一年の桜組のクラスメイトであった、自分達も協力させて欲しいとのこと。一体何処から聞きつけたのか。


「あの代表魔女(エトワール)様とラーストチカ様のお手伝いができるなんて!」「クラスメイト様々だね!」「ベルちゃんはウチら桜組の誇りだよ!!」「よっ! エルトニアいち!!」


 との事。あまり意識はしていなかったが、学園のトップ2と誓約した私はいつの間にやら一年桜組の虎の子のような扱いになっていた。これは果たして喜んでいいのか……


 そうして、桜組クラスメイトを加え結構な大所帯になった私たち。役もいくつか追加され、この演劇はそこそこ立派なものに仕上がってきた。


 チカ姉は宣言通り何処からか衣装や小道具を仕入れてきた、この人の人脈は割と謎だ……



 そうして時間は流れ、ついに学園祭当日を迎えた……



〜〜〜〜〜〜〜



 星空祭&学園祭当日、一年生はほぼ何もしないので(私達は例外)、特に学園に早く行くこともない。


「いや〜凄い人ですねぇ……」


 感嘆するテルミナ、私はあたりを見渡す、とにかく人が多い。


 海都はかつてない賑わいを見せていた。普段も大概賑やかではあるが、今はそれの倍以上は喧しい。


 あちこちで出店が出てたり、あちこちに星座や天の川を模した飾りがされていたりと、まさしくお祭り状態であった。


 流石に大陸で二番目の規模の都市で行われるお祭りだ、海都でこのレベルならば帝都の星空祭はもっと凄いんだろうな……


「学園に行くのも一苦労ですね」


「だね……」


 と、その時だった。ふと、私の下腹部が少し熱を持った様な気がした。


「……?」


 気のせいだろうか、この部分が熱を持つなんて、思い当たることは一つしかないが……


 私はその部分を制服の上からサワサワしてみた。


「お姉様?」


 不思議そうに私を見つめるテルミナ。


「あ、いやなんでもない」


 なんだか嫌な予感がしてきた、学園祭、無事に終わるといいけど……

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