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29話 チカ姉襲来

 そうして翌日、学園祭まではあと一週間もない。


 魔法を駆使しなんとか部室を片付けた私たち。本番に向けた"戦い"が始まった。


「まず、どんなお話をやるつもりなんですか?」


 私はチカ姉に聞いてみた。


「ぶっちゃけ考えてない」


 悪びれる様子もなく自信満々に答える彼女。


「え、ちょ……」


 マジですかこの人。


「はぁ……そんな事だろうと思ってましたわ」


 呆れ気味なミラ姉様、そりゃそうだ、私だって呆れた。


「脚本……脚本ですね! 私にお任せください!」


 と、テルミナが元気よく手を上げる。いやちょっと待って、なんか嫌な予感しかしないんですけど……


「任せたテルミナちゃん!」


 チカ姉はテルミナの肩をポンと叩いた。


「衣装や小道具は私の方でツテがあるから大丈夫、うーん……なんとか形になってきそう!」


 はぁ……ホントに大丈夫かなぁ、これ。



〜〜〜〜〜〜〜



「……なんか疲れた」


 学園から帰宅し、離れに直行した私、制服のまま畳の床に寝転ぶ。


 テルミナは学園に残り脚本を書き上げるとのこと。本当に大丈夫かなぁ……


「えっと、今日は夕方に泊まりのお客様が来るんだっけ……」


 今現在、海猫には剣聖さんが長期滞在の予定で宿泊をしている。まあ基本あの人日中はどこかに行っているのでその間、特に私たちが何かをすることはないのだが。


 前にも言った通り、剣聖さん以外のお客様がそこそこ増えてきた。どうやらこれらはラファールさんやピクシーさんの口コミによるものらしい、感謝しなければ。


 日中、私やテルミナが学校に行っている間はホーネットさんやグリペンが接客などの対応をしてくれている、放課後は私たちの担当。


 なんだかすっかり私もこの生活に慣れてしまった様な気がする……


「ベルちゃん、何ボーッとしてるの?」


「!?」


 突然チカ姉の声が聞こえた、私は声のした庭の方を見てみた。


「やっほー」


 こ、この人なんでここに!?


「私もいますよ!」


 テルミナも一緒にいた、脚本を書き上げてるはずじゃ……


「ふふーん! じゃーん!」


 と、テルミナがドヤ顔で何やら紙の束を見せつけてきた。


「って……! もう書き上げてきたの!?」


 いくらなんでも早過ぎる。


「お話は既に頭の中にありましたから!」


「いやーテルミナちゃんは優秀だね〜うちの部に入らない?」


 そう言ってテルミナの頭を撫でるチカ姉。


「お断りします! これはあくまでお姉様のためなのですから!」


 チカ姉の手を振り払う彼女。


「うーん残念……それにしても……」


 そう言いながら周りを見渡すチカ姉。


「ここがベルちゃん達が働いてる場所かぁ、こういう大和風の建物は初めて見たけどすごいねぇ〜」


 そういえば、この人がここに来るのは初めてか。


「景色も雰囲気もいいし、なんで繁盛してないか不思議だよホントに」


 繁盛してなくてすみませんね……


「で、結局何しに来たんですか?」


 私は離れを出て2人の元に行く。


「よくぞ聞いてくれた! 実は練習場所を探しててね……」


 そこで困ったような素振りをみせ「部室は狭いしなぁ」と呟くチカ姉、確かにあそこで練習するのは厳しそうだ。


「それで、ここに丁度広いスペースがあるってテルミナちゃんに聞いたんだよ」


 広いスペース? あ……


「もしかして宴会場ですか?」


 そう、この旅館の一階には少し広めの宴会場が存在する。


 宴会場と言っても全く使われてない。だってそれほど大人数のお客様が来る事なんてないし……


 私はチラリと旅館の方を見る、実はこの場所からそこは見える、宴会場も庭園に面している、見事にすっからかん。


 あんな立派なスペースが殆ど使われてないなんて勿体なさ過ぎると常々感じていた。


「あそこです、ラーストチカ様」


 テルミナが指をさす。2人は宴会場の方に近寄っていった。


「ふむふむ……いいね〜、よし、あそこに決まり!」


 ちょっと、何勝手に話を進めてるのこの人。


「あ、ステルス先生にはちゃんと話を通してるから安心していいよ〜」


 と、私の考えを読んだようにそう言ったチカ姉、意外とこの人抜かりないなぁ。


「ついでに、本番まで私もここに泊まるから」


「はいはい……って! ええ!?」


 本気ですかこの人……



〜〜〜〜〜〜



 そうして、私達は宴会場に移動する。


 私は改めてその広い空間を見渡してみた。使われてなくとも、掃除は欠かしてないので綺麗な状態である。


「はぁ、ミラージュも来れば良かったのに」


 と、愚痴をこぼすチカ姉。彼女は学園祭準備に向けた生徒会の仕事で忙しいらしい。


 当然っちゃ当然なんだけど、そんな状態でよく参加してくれる気に……ああ、ほとんど脅迫されたようなものだったっけ。


 あの人も結構な苦労人だなぁ……


「じゃあまず、これ読んでみて」


 広いスペースの真ん中に陣取った私達、いつの間にかテルミナの持っていた脚本はチカ姉が持っていた。私はそれを渡される。


「私自慢のラブロマンスものです! 期待してください!」


 自信満々なテルミナ、私はそれを受け取り読み始めた。



 そうして数分後、脚本を読み終えた私は頭を抱えた。


「えっと……これ本気でやるんですか?」

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