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28話 演劇する猫

「え……ど、どういう事ですか!?」


「だから〜、ベルちゃんに役を頼めないかなぁ……って」


 昼食の時間、珍しくチカ姉がご飯を奢ってくれるというので、学園の食堂に来てみたんだけど。


「私が演劇? いやいや無理ですって!」


 一体何を企んでいるのかと思ったら、突然「学園祭で演劇をするから部員であるベルちゃんにも参加して欲しい」と言われた。


 ちなみに、学園には複数の食堂が存在する。どこもオシャレなカフェテリアみたいな雰囲気で、旅館で余った食材が出なくてお弁当を持って来れない時は、テルミナやミラ姉とよくここで昼食をたべている。


 ミラ姉はよく昼食をご馳走してくれる。もう一人の姉とは大違いだ。


「ていうか、演劇なんて本気でやるんですか? 殆ど活動していない名前だけの部活だったんじゃ……」


 話を戻そう。まさか学園祭で演劇なんて、如何にも部活らしい事をするなんて思わなかった。


「いやぁ、そのつもりだったんだけどねぇ……ミラージュがさ」


 不満そうにそう呟くチカ姉。またミラ姉に何か言われたのだろうか。


「今度は活動実績が見られないから廃部だ!! って、ミラージュの奴私の事目の敵にしてない!?」


 確かに、なんだか私が2人と誓約した時から、よりミラ姉はチカ姉を敵視している様な気がする。なんとなくミラ姉がよりチカ姉をライバル視している様な……


「にしても演劇って、私ほぼ素人ですよ?」


 演劇なんて私は全くの未経験だ。


「大丈夫大丈夫、あと一週間もあるし」


 あと一週間しかないの間違いでは?


「話は聞かせて貰いました!!」


 と、突然テルミナがテーブルの陰から現れた、いやいつの間に。


「テルミナちゃんも手伝ってくれるの?」


「はい、ラーストチカ様のお手伝いをするのは癪ですが……」


 そこで言葉を切るテルミナ。彼女は私に抱きつき……


「お姉様の恋人役とかなら、やってあげないこともないですよ〜♡」


「こ、恋人って……」


 相変わらずこの娘のノリにはついていけない。


「よし決まり! うーん、となるとベルちゃん、テルミナちゃんに私、あと1人欲しいなぁ」


 あれ、結局私も参加することになってる!? 私の意思は?


「……! そうだ、ミラージュも巻き込んじゃえ」


 今とんでもないような言葉が聞こえたような……



〜〜〜〜〜〜〜〜



「……」


 放課後、演劇部の部室に集められた私達。


 この学園には立派な部活棟が存在する。これまたお城みたいに豪華な作り、相変わらずこの学園はとんでもない。


「ゴミ屋敷?」


 演劇部の部室には初めてきた。ほとんどチカ姉の根城と化しているとは聞いていたけど……


 室内は魔導書が乱雑に積み重ねられ、なんだかよくわからない魔法具が散乱していた。


「演劇の"え"の字もないですねこの部屋……」


 テルミナが呆れた様な声を出す。


「はぁ……何故ワタクシが……」


 と、あとから部屋に入ってくるミラ姉。あの後、「私たちの演劇に協力しなきゃあの事をベルちゃんにバラすよ?」とチカ姉に脅迫され、彼女も参加する事になったという。あの事とは一体……すごく気になるけど。


 そしてこの城の主人、チカ姉はというと……


「よし! じゃあまずこの部屋を整理する所から始めようか!」



 いや、本気ですか……気が遠くなりそう……




〜〜〜〜〜〜〜〜



「はい、海都に複数の猟兵団が出入りしているとの情報が」


 ホワイトリリィ女子魔法学園の学園長室。3人の女性が真剣な面持ちで話し合っている。


「う〜ん、面倒くせえなぁ……このゴタゴタした時期に」


 そのうちの1人、この学園の教員であり、ベルたち桜組クラスの担当教員であるラプターが唸る様な声をあげる。


「確かな情報なのですか?」


 と、この学園の学園長がもう1人の女性、聖騎士のラファールに問いかける。


「帝国聖騎士連合が裏をとっています、間違いない情報です」


 ラファールは答える。


「狙いはなんだ、まさか星空祭を楽しみにきたって訳じゃないだろ?」


 ラプターがそう彼女に問いかけた。


「複数考えられますが、まだ決定的にこれというものは」


 煮え切らない返答が返ってくる。


「はぁ……ジュラーヴリクが探してるって奴もこの海都に潜伏してるかもしれないって話だし、ややこしくなってきたな」


 頭を抱えるラプター。


「例の彼女ですね……その件もあって、あの人には色々と協力してもらってますが」


 そうしてしばしの沈黙の後、学園長が口を開いた。


「……海都の星空祭、そして学園祭には第四皇女殿下のミステール様も来られる、何かあってからじゃ遅い、厳重な警戒が必要です」


 学園長が真剣な声色でそう言った。第四皇女"ミステール・ド・エルトニア"はエルトニア帝国現皇帝の四人目の子供であり、来年には本人たっての希望で、この学園を受験することが決まっていた。


「恒例行事とはいえ面倒極まりないな、帝都でも星空祭は有るってのに、何でこっちに来るかね……いっそのこと来るのをやめてくればいいのに」


 怠そうにそう言い放つラプター。


「ラプター、不敬ですよ」


「はいはい」


 学園長は2人のやりとりを眺めながらため息をついた。


(この2人は変わりませんね……それよりも、星空祭に学園祭。何事もなく無事に終わるといいのですが……)

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