表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/91

23話 誓約届

 休日も終わり、学園ではいよいよ本格的な授業が始まった。魔法学園では語学や数学、大陸史や体育などの一般教養科目、そして魔法史や実技魔法、薬草学などを始めとする専門科目を教わる。


 あと、変わった制度として自由取得単位なんてものが存在した。これは学園の掲示板に貼られた学内の関係者からや一般人などからの依頼をこなす事で、単位として認定され成績に加算されるというシステムだ。


 ……なんか冒険者みたいなシステムだなぁ、でも単位が足りない時とかに役立ちそう。


 なんか面白そうだったので、早速授業の合間に掲示板を見に行ってみた。



「ふーん……モンスター退治、収集品の捜索、薬草の回収、本当に冒険者みたいな事するんだなぁ」


 掲示板には様々な依頼が貼ってあった。


 ちなみに、今は珍しく私1人だ。テルミナはラプターさん……ラプター先生に授業の準備を手伝えとかで連れて行かれた、哀れテルミナ。


「……ねー、そこの仔猫ちゃん」


 ふと、後ろから声をかけられた。振り返るとそこには1人の女子生徒がいた。


「えっと……」


 背丈は私と同じくらい、ピンクの綺麗な髪をツインテールにしている、ツインテールの根本を結んでるブルーのリボンが印象的だ。そして……頭の小さなツノと先っぽが逆さのハートの様な形になっている尻尾、この人……魔族?


 そして桜色の制服を着ている、同級生だろうか。


「あなた可愛いわね、何年?」


 妖艶な笑みを浮かべる彼女。すごく……かわいい。見つめていると心が持ってかれそうになるほどの美少女っぷりだ。


「んー? どうかした?」


 赤い瞳が私のことをまじまじと見つめる。


「いや、なんでも……1年生ですけど」


 いきなりなんなのこの人……


「ふーん……あ、私は2年生のラーストチカ・ファルクラム、みんなはチカってあだ名で呼ぶわ、よろしくね!」


 私の手を握りブンブンと大振りで派手な握手をする。先輩なのか……なんだかすごく馴れ馴れしいけど。


「あなたの名前は? ちょっとこの紙に書いてみて」


 と、いきなり何やら紙を渡される。


「はぁ……」


 さらさら……と、ん? この紙、なんか誓約届って書いてあるんですけど……


 なんだかとても嫌な予感がしてきた。


「ファルクラム!!! あなたまた授業をサボって……」


 そこに、ミラージュ生徒会長の怒鳴り声。ホントタイミング悪い……また絡まれそうだしここはさっさと退散しなければ。


「……ん? あなた、何時ぞやの野良猫、こんな所で何をしてるんですの?」


 遅かった。


「んー、私この娘と誓約姉妹になるから」


 ラーストチカさんが私をグイッと抱き寄せる、ん、今誓約姉妹って……えぇ!?


「ちょっと……どういうことですか!?」


「どういう事もなにも、君いまこの書類に名前書いたよね?」


 ピラピラと紙を私に見せる彼女。そこには私の名前と、"ラーストチカ・ファルクラム"と名前が書かれていた。


「これって……」


「な、あなた!! いくら相手がいないからって何も知らない娘を無理やり……」


 と、そこに私達のこの騒ぎを聞きつけたのか、いつの間にか周りには野次馬が集結していた。


代表魔女(エトワール)さまとラーストチカさま……何をなさっているのかしら」「誓約姉妹? もしかしてあの野良猫を取り合って!?」「修羅場の予感ですわー!」


 まずい、なんだか注目されている。めちゃくちゃ視線を感じる……


「別に私が誰と誓約しようが勝手でしょ? もしかしてミラージュもこの娘狙ってた?」


「は、はぁ!? 私がなんでそんな野良猫と……!」


 なんだか話がおかしな方向に進んでいる。というか私の意思は……?


「話は聞かせてもらった!」


 と、そこに聞き覚えのある声、この声はラプターさん? 騒ぎを聞きつけてきたのであろうか。


「2人してベルを取り合っているようだな、それほどこの娘に惹かれたか、それなら2人で決闘して所有権を決めると良い」


 な、なんだってー!? なにを言っているんだこの人は、というか私をモノ扱いするな、そして授業の準備は?


「それならテルミナに任せてきた、あいつはよく働いてくれる」


 押し付けてきたのか、ていうか……


「私の心を読まないでください!」


「ちょっと! ステルス先生! 私は別にこの娘の事は……」


 困惑の表情を見せる生徒会長。それはそうだ、私だって生徒会長の姉妹になるのはごめんだ。


「その勝負乗った!」


 何故だか乗り気のラーストチカさん。


「お二人がそんなに夢中になるなんて……」「あの猫娘何者なの!?」


 ザワザワする野次馬。なんだか勝手に盛り上がっている。


「いい加減にしてください! 私は別に……」


「逃げるのかミラージュ? 代表魔女とあろうものが情けないなぁ」


 生徒会長を挑発するラーストチカさん。流石に代表魔女とあろうものがそんな安い挑発に乗るはずは……


「なっ……! 逃げる? このワタクシが? ありえませんわ! バイオレット家の名にかけて決闘を逃げるなんてあり得ません!!」


 え、えぇ……


「その決闘受けて立ちますわ!!」


 この人、意外と煽り耐性皆無だ。


 そうして生徒会長は決闘を受けた。私の姉妹の座と所有権をかけて明日の放課後2人は決闘することが決まった。



 ……あの、すみません私の意思は?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ