20話 大図書館と姉妹制度
「色々と突っ込みたい所はあるんですけど、なんで黙ってたんですか?」
「聞かれなかったからな」
お決まりの言葉を返してくるラプターさん。いや確かに聞いてないけどさ……
「まさかラプターさんが私らの担当教員だなんて……」
私は頭を抱える、今まで"海猫"をほぼ放ったらかしにしてたのって、ここで働いてたからって事なのか?
「いいじゃないですかお姉様、全く知らない人より、それにラプター様はこう見えて魔法史の専門家らしいですし」
そう、この人どうやらその手の分野じゃそこそこ有名な人らしい、自分の受け持つ教科を説明する時それを誇らしげに語っていた。
因みに。魔法史とはその名の通り魔法に関する歴史を扱う学問だ。
「はぁ……私だって桜組の担当はしたくなかったんだがな、菫組に1人気になるやつがいるし」
不満そうに言うラプターさん、この人何様? あ、英雄様でした……
というか、この人本当イメージと違すぎる、英雄の1人だったりするし。
「それより二人とも、学校ではちゃんと先生って呼べよ? 私にも立場ってものがあるからな」
なんだか得意げな様子でそんな事を言うラプターさん。ウザい……ドヤ顔がウザい……
「じゃあ2人とも、気をつけて帰れよ、学園生活をせいぜい楽しめ、勿論海猫の仕事も手を抜くなよ」
そう言って教室から出て去っていく彼女。
「はぁ……」
あの人が担当教員だなんて、大変な学園生活になりそうだ。
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「ふにゃ……ここが大図書館……」
私たちの目の前に広がる本、本、本。とてつもない広さ……学園の施設にしては大袈裟すぎる。
私とテルミナは帰る前に学園にある大図書館に寄ってみた。噂には聞いていたけど、とてつもなく大規模なものであった。
「ひろいですね〜」
感心した様に言うテルミナ、広いなんてもんじゃないでしょこれ、相変わらずここの学園の設備はとんでもないなぁ。
その後、私達は大図書館を散策、参考になりそうな初級魔法に関する本が何冊かあったので試しに借りてみたりした。今度の休日にまとめて読んでみよう。
結構な時間を使ってしまったので、そろそろ帰ろうとしたんだけど……
「あれ〜、テルミナどこいったんだろ」
テルミナとはぐれてしまった。ここは広いし迷子が見つけにくそう。で、テルミナを探して歩き回っていたんだけど……
「あれって、生徒会長? 何してるんだろう……」
なんだかキョロキョロしながら部屋みたいな場所に入っていった。う〜ん。なんだか凄く気になるんだけど。
「ちょっと覗くだけ……」
好奇心が勝ってしまった。私は彼女の後を追い、部屋の中を覗いて見る事にした、部屋は小さな書架が集まる小部屋であったが、座り心地の良さそうなソファーや高そうなテーブルがあって軽い隠れ家みたいな雰囲気になっていた。中々良さげな雰囲気の場所である。
ミラージュはなにやら本を抱きしめて恍惚の表情をしていた。
「はぁ〜ん……高貴な貴族の娘と奴隷の獣人娘の禁断の恋! 相変わらずこのシリーズはたまりませんわ〜♡」
……うん、何も見なかった事にしよう。個人のお楽しみを邪魔してはいけない。
そうして私はその場を去る。迷子のテルミナを回収してさっさと帰路についたのであった。
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学園を出る生徒はそれ程多くなかった、学園の寮は敷地内に存在している、みんな大体その寮に入るので私たちのように外から通ってくる生徒はそれほど多くないみたいだ。
私たちみたいに外から通ってくる生徒は大体海都の何処かで住み込みで働いている苦労人だったりする。
ただ、帰りにチラッと寮を見てみたけど、これまた露骨な程クラス格差が存在した。寮もクラスの色ごとに分かれているんだけどこれがまた……
最上位クラスはお城みたいな寮だけど最下位クラスは古めのアパートみたいな感じであった。
改めてこの学園が超実力主義社会である事がわからされた。待遇に不満があるなら成績を上げ自分で勝ち取って見せろ、という事らしい。
「そういえばお姉様、姉妹制度をどう思いますか?」
帰り道、テルミナが突然そんな事を言い出した。
「えっと、何それ?」
姉妹制度、どこかで聞いたことがあるような……なんだったかな?
「説明聞いてなかったんですか?」
聞いたはずなのにすっかり思い出せないのでテルミナに再度説明してもらった。
姉妹制度というのはこのホワイトリリィ学園に存在する特殊な制度。下級生と上級生が互いに誓約を結び誓約指輪を交わすことで、その2人は学園における最重要のパートナーになる……という制度らしい。
なんかすごい制度、誓約指輪って、こ、婚約ですか……?
「下級生と上級生でしか誓約出来ないのが残念ですぅ……私はお姉様と姉妹になりたかったのにぃ!」
恨めしそうに叫ぶテルミナ。ていうかあなた普段からお姉様お姉様って、もう半分姉妹の様なものでしょ。
「はいはい」
にしても上級生ねぇ……上級生、上級生。
何故かミラージュが思い浮かんでしまった、いやいやないない。
「お姉様?」
「……なんでもない! ほらとっとと帰るよ!」
こうして学園生活1日目は終了した、なんか凄く色々な事があったけど……とにかくこれから学生として、仲居として頑張っていこう!




