表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/91

2話 猫娘、攫われる

 記憶を取り戻したって、特に世界が変わるなんて事はなかった。私の生活はいつも通り、狩をして食料や金を得て、薬を買って母の看病をする。


 これが私の人生のルーティーンであった、辛い毎日ではあったが、決して絶望的なものではなかった。


 だがそんなルーティーンは呆気なく崩れ去った。



「ごめん……なさい……」


 十四歳の冬、母が息絶えた。最後まで謝り続けてた人だなぁと、冷静を保っていたつもりだったが目からは涙が止まらなかった。


 母は村にある墓地に埋葬された、葬式なんて立派なものは出来ない、私は一人になった。


 それから一年ちょっと、一人寂しく暮らす私に絶望的な出来事が起こった。


「ヒヒっ……お前さんがベールクトか?」


 なんだこのキモいおっさんは、生理的嫌悪感しかないぞ。


「……は、はぁ」


 私は警戒しつつ答える。


「おいお前ら! とっととコイツを捕まえろ!」


 後ろから2人の男、私は羽交締めにされた。


「なっ……何するの!!」


 私は叫ぶ、するとキモいおじさんは。


「悪いな……お前のオヤジさんのツケを回収しにきた……ヒヒっ」


 そして私は村から呆気なく連れ去られた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 父親のことは全く記憶にない、私は物心ついた頃から母親と2人暮らしだった。


 母は父について全く語ろうとしなかった。まあ、その事から多分クズなんだろうなとは思っていたけど。


「……まさか、莫大な借金を残して消える程のクズだったなんて」


 私は絶望のため息をつく。


 私は今船に乗せられ何処かへ運ばれていた。船なんて聞こえがいいけど、あまりにもボロくて不衛生すぎる。


 あの後ゴミみたいに汚い馬車で荷物の様に雑に運ばれた、山をいくつも超えた、次第に雪は消え緑も増えてきた。


 そして今、私は馬車から船に載せ替えられ運搬されていた。


「うぃ〜ヒック……」


 私が詰め込まれている部屋にガラの悪そうな男が入ってきた。


「おい……クソ猫!! 俺は賭けに負けてイラついてんだ!!! 蹴らせろ!!!!」


 そしておもいっきり蹴られる、痛い、痛い、あまりにも理不尽だ。


 航海中はこんな理不尽なことばかりに襲われたが、幸いにも性的な暴行はされなかった。「キズモノにしたら買い主に怒られる」とかなんとか、余りにも下世話な話だが、その方針に救われたとこもあるので文句は言えなかった。


 その代わりに先ほどの様な理不尽な暴力の嵐にあった、お陰で私の身体はアザとキズだらけになった、キズモノにしたら怒られるんじゃないのか?


「お腹すいた……」


 出港から1週間、地獄の様な日々が続いた。食料は与えられはしたが、量も少なく痛んでいたりで、まともな栄養が取れているとは思えなかった。


「なんで私がこんな目に……」


 獣人の扱いが過酷なものであるのは知っていたが、ここまでとは思わなかった。私が住んでいた北方ノースガリアは殆ど獣人しかいなかったから、こんな差別的で過酷な扱いは初めてであった。


「……ダメだ、すごく眠い」


 このまま寝て、もう一生目を覚まさなければいいのに。そんな思いで私は目を瞑った。


 だがその数時間後、私は叩き起こされ……


「オラっ! さっさと出ろ!」


 どうやら目的の港町に着いた様だ。私は船から降り桟橋に立つ。


「……はぇ」


 周りを見渡す、そこには賑やかしく、明るい雰囲気に包まれている港町であった。


 この港町こそ、私がこれから長らく人生を過ごすことになる海都"ユリシア"であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ