19話 ドロップアウトガールの入学式
そんなこんなで数日後、遂にホワイトリリィ女子魔法学園の入学式を迎えた、私とテルミナは。今学園の大講堂で式の真っ最中。
私は自分の着ている制服を見る、ホワイトリリィ女子魔法学園……改めて自分がこの学園の生徒になった事を実感する。
あ、そうそう。そういえばこの学園の学費についてだけど。ラプターさんが出してくれるらしい。といっても借金だけど……そして何故かテルミナの学費まで私が負担する事になってしまった。曰く「保護者のお前が負担しろ」との事。私いつの間に保護者になってたの?
「……はぁ」
この街に来てから、借金は減るどころか膨れ上がっている。返せる気がしないんですけど。
私は周りを見渡す、私と同じような桜色の制服を身に纏った女の子たちが20人ほど、これがCの桜組、前には黄緑組、菫組。
……ここで改めてこの学園についておさらいでもしておこうかな、式も退屈だし。
ホワイトリリィ学園は100年以上の歴史を持つ古い女子魔法学園、私達は101期生だけど実際の歴史はもっともっと古いらしい。身分や種族に関係なく入学が可能でクラス分けも完全な実力で判断される。
そして、この学園の最も特徴的なもの、それが色による実力順のクラス分け。それぞれのクラスには象徴となる色が与えられる。
この学園はクラスによって待遇がかなり違う。学内の施設や寮などかなりの面で差がある。そういえばこの学園にも寮があるんだっけ、全寮制ではないので私にはあまり関係ないけど。
以上、あ、学園長のスピーチまだ終わってない。遅いなぁ……
私たちは一番後ろの方に座っている、周りにいるのは桜色の制服をきた桜組、桜組のみんなは何となくやる気がなさそうというかフワフワした雰囲気というか、大丈夫なのかなこれ……
そんな私のブルーな気持ちとは裏腹に、式はスムーズに進んでいく。そして……
「私は2年生、生徒会長、菫組のミラージュ・バイオレットです、本日は在校生代表として……」
在校生代表としてあのミラージュのスピーチ。生徒会長は代表魔女とも呼ばれ、学園の顔でもあるらしい。
「あの人……嫌な感じでしたね」
隣に座っていたテルミナ。この前の試験後のやりとりに関してだろう。確かにあれは感じが悪い。如何にも悪役のお嬢様みたいな雰囲気だった。
「あぁ……まあね」
あの人と私はどうも相性が悪い様な気がする、出来ればこれからの学園生活であまり関わりたくないなぁ。
「この学園の卒業生は多方面に進出して非常に優秀な結果を残しています、私たちや皆さんも……」
ミラージュのスピーチは続く。長い、早く終わらないかなぁ。
「ふわぁ……」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そうして、退屈な式が終わり、私達桜組は自分達の教室に向かった。
「なんかちっちゃくない?」
辿り着いた教室は何やら少し窮屈気味であった。学園内部の部屋だし、つくりは豪華でちゃんとしていたけど……
「そりゃ、桜組だし」
と、後ろから教室に入ってきた同級生。
「私達ってそんな扱い悪いの?」
私は彼女に聞いてみる、最底辺クラスとはいえこうも露骨なものなのか。
「最底辺だし〜、まあこの学園に入れただけでもありがたいと思わなきゃ」
そうして、席に座る彼女。私とテルミナはその後ろに座った。
彼女曰く、ホワイトリリィ学園は露骨な程実力主義であり、クラスの扱いもかなり差があるらしい。
「Cの桜組はドロップアウト組って言われてるから」
「へ、へぇ……」
なんかこの先不安になってきた。大丈夫かな……
「お姉様なら直ぐにでも菫組に上がれます! 私と一緒に頑張りましょう!」
と、隣のテルミナ。励ましてくれてるのかな。
そうしてるうちに20名程の桜組生徒が教室に入り席に座る。私は周りを見渡してみる、獣人は私とテルミナと……あ、この前3人組に絡まれてた娘がいる、私は軽く手を振ってみた。彼女もそれに応えてくれた。
んー……でもやっぱ、みんな何処かやる気がなさそうというか。
そうして、暫くすると。教室の扉がガチャン! と勢いよく開かれる。入ってきたのは……
「…………ふぅん、これが今年のドロップアウトガールたちか」
綺麗な銀髪に凛々しい顔付き、長身でスタイルが良く、腰には日本刀…………ってあれ、この人。
「私はラプター・ステルス、一年の桜組、最底辺のドロップアウトガールズを受け持つ貴様らの担当教員だ」
え? いやいやこの人、何してるの…………
「ラプター様、ここの教員さんだったのですか?」
テルミナが私に聞いてくる、いやそんな話一度も聞いた事ないけど…………
「いいか! 貴様らは学園で最底辺! せいぜいこの学園を卒業できる様に必死で頑張るんだな! 以上!!」
あなたは熱血教師か何かですか……?
そんなこんなで、ラプターさんはこのクラスや学園のカリキュラムについて説明して教室を去った。
「まさか、あの人が担当教員だなんて……!」
前の席の娘がボソリとつぶやく。
「……ラプターさんの事知ってるの?」
私は彼女に聞いてみた。あの人がこの海都において特別な存在なのはなんとなく知ってるけど……
「知ってるも何も! あの人魔族との戦争で活躍した英雄の1人だよ!?」
「え、英雄?」
初耳なんだけど……
「ラプターっていう本名はあんまり知られてないけどね、私は歴史好きだから知ってるけど! 戦域支配の猛禽娘って言った方がわかるかな!?」
それなら聞いたことがある……ちょうど私が生まれた年、魔族との大きな戦争があり。5人の英雄が大活躍した……
戦域支配の猛禽娘
その中にそんな異名を持つ人物がいたと聞く。
「え、え〜〜……」
私の中の英雄像はガラリと崩れ去った、だってあのラプターさんがだよ?
「お姉様、知らなかったんですか?」
と、テルミナ。いやテルミナは気が付いてたのか、只者じゃないのはなんとなくわかってたけど。
やっぱり、あの人はとんでもない人だった……




