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16話 入学試験と桜色の烙印①

「相変わらずすごいなぁ……」


 私の目の前に聳え立つ大きな建物。豪華な装飾が施されたその装いはまるで王様が住むお城のような印象を思い浮かべる。


「すっごいですね……まるでお城みたい」


 私の気持ちを代弁してくれるテルミナ。



「ねぇ……あの人たち……」「嫌だわ、落ちて欲しいわね……」



 ……やはり、居心地が悪い。周りからのヒソヒソ話が身に刺さる。


 獣人に門戸が開かれているとはいえ、実際は殆ど獣人の生徒はいないというのが現実らしい。入っても差別的な扱いに耐えられず辞めていくとかなんとか。


 それらを跳ね除けここを卒業したエリートもいるが、数える程だと聞く。


 あたりを見渡す。入試を受ける為に百人くらいの女の子たちが、学園正面玄関前に集まっていたが、獣人の娘は大体5%程しかいなかった。


「倍率は2倍くらい、半分は落ちる……」


 私は気合を入れる為に頬をペチンと叩く。


「……っし、頑張ろうテルミナ!」


「はいお姉様!」


 そうして、校舎正面玄関から学園の関係者らしき人達が出てきた。


「えー……みなさん、本日はようこそホワイトリリィ女子魔法学園へ」


 いかにも学園長、なお婆さんだなぁ。


「本日は第101期生の入学試験という事で、みなさんこの伝統あるホワイトリリィ学園に……」


 長い、話が長い……


 そうして、暫く話が続いた後、校舎に入る。当たり前だが中もとてつもなく豪華な物であった。


 そして大きな講義室に。願書は事前に提出している、自分の名前が書かれた席に座り筆記試験を待つ。


「あぁ……お姉様! 離れ離れになるなんて!」


 テルミナとは離れた位置になってしまった、というかお姉様呼び、視線が痛いからやめて欲しい……


 そうして、試験が始まる。幸いにも手こずる事はなかった。私の知識でも充分対応可能な物であったし、ホーネットさんから事前にヤマを張ってもらったのもある。


 ただ、やはり試験中もなんとなく視線を感じるというか、すごく居心地が悪かった……



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「どうだった? テルミナ」


 私は講義室を出て先に待っていたテルミナに出来を聞いてみる。


「楽勝! お姉様は?」


 自信満々のテルミナ。


「私は、まあまあかなぁ……」


 そんなこんなで筆記試験は終了、次は実技試験である。


 試験を終えた受験生は大きな中庭らしき広いスペースに案内される、ここが実技試験の会場という事だろう。


「あれ……あの人……」


 中庭で待機していると、ふと、見た事のある人物が目に入った。


「どうしましたお姉様?」


「いや、見た事がある人がいるなぁって」


 そう、試験を行う教員と思わしき人達に混じり、この前この学園前で絡んできた金髪ドリルのお嬢様がいたのである。


「……あの人、ここの生徒だったんだ」


 彼女はこの学校の制服を着ていた。この前は私服だったから分からなかったけど、まさかこの学園の人だったとは。


「見て! ミラージュ様よ!!」


 その時、近くにいた女の子が金髪ドリルの方を見てそんな事を言った。


「2年生にして生徒会長、女王雀蜂(クイーンホーネット)様や片羽の妖精(ピクシー)様の再来と言われるほど優秀な方……憧れますわぁ……」


 別の女の子が憧れの視線をむけそう言う、説明ありがとうございます。っていうか今二人ほど知っている名前が……


「あの人、そんな優秀な人だったんだ」


 うぅ、なんかこの前のやり取りで目を付けられてるかもしれないんだよなぁ、大丈夫かな私。


 だが、そんな私の不安をよそに実技試験は始まっていく。


「試験の内容を説明します!」


 と、教員らしき人が説明を始めていく。試験の内容は実にシンプルなものであった。


 まず名前を呼ばれたら、少し高台になっている場所にこれ見よがしに設置されている魔力の結晶に触れ、適性を測る。そうしてその次、10メートルくらい離れた的をどんな魔法でもいいのでます破壊する、というものである。


「それでは最初のもの……」



 そうして試験は始まった。人数も多そうだから時間かかりそうだなぁ……


 手持ち無沙汰で試験の様子を眺める私、名前を呼ばれた女の子はどんどん結晶の適性検査を受け、思い思いの魔法で的を破壊していた。


「うわぁ……! あの娘すごっ!」


 勢いよく放たれる氷の矢だったり、空高くまで駆ける火球だったり……ここって魔法学園だよね? 入学前からそんな凄そうなの使えるのって……



 私はチラリとテルミナの方を見る、彼女は興味なさそうに欠伸していた。


「この()、大物だわ……」


 そうして試験はテンポ良く進んでいく、時間かかりそうだと思ったけどそれ程ではないらしい。


「次は……テルミナートルさん!!」


 テルミナの名前が呼ばれる。寝ぼけ眼を擦りながら結晶の方に向かっていく彼女。わたしは心の中で「頑張れ!」と声援を送る。


「えっと……これに手を当てればいいんですかー?」


 と、気の抜けた声でそんな事を言いながら結晶に手をかざす。すると結晶は綺麗な水色の光を放つ。


「……テルミナートルさん、水属性に適性あり」


 試験官が確認するように呟く。


 この世界において、魔法は地水火風の四大元素(エレメント)からなる属性+αが存在するらしい、テルミナはその中で水属性の適性持ちという事だ。


 そして、的当て試験。彼女は水属性の魔法を使い難なく突破。そうしてテルミナはなんという事も無さそうに私の元に戻ってきた。


「お姉様! 私の勇姿を見ていましたか!! ふふーんこれでまた惚れ直しましたでしょー!」


「はいはい」


 軽く受け流す私、そうして試験は進みいよいよ私の番がやってきた。

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