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1話 転生

よろしくお願い致します。

 私は猫が大好きだった、生まれ変わったら絶対猫になる!


「なんて思ってたのに、どうして……どうして……」


 私は頭の耳とお尻の尻尾をサワサワする。


「どうして獣人なのッ〜!!!!!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 私はベールクト、猫科の獣人である。魔法が存在するこの世界"ユリシーズ"、その北部に存在するとある雪国で生まれた。


 私には前世の記憶が存在する。私は自分が転生したという記憶がある。それを思い出したのは10歳の頃だった。


「思い……出した……!」


 ある日、外で遊んでいた私は石に躓き頭を打ってしまう。とても痛かったがその衝撃により前世の記憶を取り戻した。



「私は異世界転生担当科のものです」


 前世の私は不幸な交通事故により死んでしまった、車に轢かれた事までは覚えてる、だが次に目を覚ましたのは不思議な空間であった。


「最近多いんですよね、事故でこちらに来る方」


 目の前にぬらりと現れた係員は淡々と説明を続ける。


「えっと……雨宮(あまみや)あかりさん、16歳、女性、東京都足立区生まれ、間違いないですね?」


 私は頷く、そして係員は淡々と説明を始めた。


ここは死んだものを新たな世界に送り出すための役所。

転生する世界は選べないが何に転生するかは選べる。


 長々と説明を続けていたが、要約するとこんなことを言っていた。


 そして彼は私の希望を聞いてきた。迷わず私は"猫"になりたいと答えた。


「はい……承りました、それでは暫くすると意識を失います、それでは良い来世を!」


 あまりにも適当な対応にイラッとして文句を言おうと思ったが、段々と意識が薄れ始める。



 そして私は"ユリシーズ"に転生した。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ベールクトこと、私の第二の人生は恵まれたものではなかった。


 私が生まれた"ユリシーズ"は二つの大きな大陸からなる世界である。北側の大陸、そのさらに北部に存在する私の故郷、北方ノースガリアは雪と氷に閉ざされた国であり、過酷な環境であった。


 北方ノースガリアには私の様な猫科の獣人が多く存在していた、獣人の国といえば聞こえはいいが、歴史的に見れば私たちの種族はこの地に追いやられ隔離されている状態であった。


「……ごめんねベル、苦労をかけて」


 母の口癖であった。病弱がちで、常に床に伏せていた母親、ちなみにベルというのは私の愛称だ。


「ううん、大丈夫! それよりほら! 今日のご飯!」


 1人娘の私はとにかく生きるのに必死であった、寒冷で作物も育たないこの地で食料と呼べるのは獣だけであった。


 狩を覚えたのは6歳の頃だった、近所のお姉さんにみっちり扱かれて、狩をマスターした私は10歳の頃には村で有数の狩人となっていた。


 そんな生活がずっと続いたあの日、10歳になってから暫く経った頃、私は前世の記憶を取り戻した。


 最初は混乱したし、何かの悪い夢なのかと思ったが時間が経つにつれ徐々に前世の記憶を取り戻していった。



 私は猫が大好きだった、生まれ変わったら絶対猫になる!


「なんて思ってたのに、どうして……どうして……」


 私は頭の耳とお尻の尻尾をサワサワする。


「どうして獣人なのッ〜!!!!!」



 全ての記憶を取り戻した時、私はあの異世界転生担当科の係員への怒りと絶望でいっぱいになった。

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