日記11
もしかしたらあれが集落かも。
さっき、木に登って、まわりを見た。どこもここも木が生い茂ってて、地面は木の根ででこぼこ。これじゃ馬車は通れない。馬でも難儀するだろうな。
ここから東のほうに、屋根が見えた。ぽつぽつと。あれが集落じゃないかな。だとしたら、わたし達、助かったってこと?
メイノエは警戒してる。彼女も木に登って集落らしきものを見たんだ。あんまりにも建物が少なすぎないかって。でも、人数の少ない、小さな集落だって、御者さんはいってたし、田舎にはあれくらいの集落は幾らでもある。
でもいやな感じなんだって。
メイノエは怯えてる。昨日まで解らなかった。彼女あんまりしっかりしてるから、こわくないんだと思ってた。違う。凄く怯えてる。それに疲れてる。
時間が足りないって度々いうの。間に合わないような気がするって。
昨夜もなにかの気配がしたみたいね。メイノエが書いたところ、読んだ。
気配なんて解らない。
魔物かな。なら、逃げたほうがいい。魔物と戦っているところにおいはぎが来たら、わたし達は今度こそおしまいだもの。
川で手足を洗った。顔も。水を飲んだ。
彼女参ってる。
凄く顔色が悪くて、少しだけ眠っていい? って訊きながら寝ちゃったの。わたしが怪我をしたから、心配してたんだ。メイノエの治癒魔法と薬で治ってるのに。それなのに彼女無理して、わたしが寝られるように自分は起きてた。
でも授業でならったもんね。怪我そのものを治しても、血が沢山流れてたら死んでしまうんだって。
メイノエごめん。わたしが怪我なんてするから。迷惑だよね。逃げる時もわたしを助けてくれた。メイノエひとりなら迷わず集落へ行けたかもしれないのに。わたしって足手まといだ。
メイノエと喧嘩した。
黙って、集落っぽいところへ行こうとしたの。
彼女ぐっすり眠ってなくて、起こしちゃった。彼女らしくない言葉で怒ってた。メイノエの名誉の為にくわしくは書かない。怒らせたわたしが悪いの。
メイノエと喧嘩なんてしたことない。仲直りの方法も解らない。彼女気分が悪そうで、もう少しだけ休みたいって。でも休んだら間に合わないかなっていってた。なににだろう。
ティノーヴァと喧嘩した時は、なにもいわなくてももとに戻るんだけどな。
ティノーヴァって、わたしの弟。義理だけど。でもほんとの弟だよ。わたしと同じでそそっかしいし、勘違いが多いし、すぐに行動に移しちゃうし、そっくりだっていわれてきた。ちっちゃい時から一緒の弟。
ダエメクの世話がいやになった時期も一緒だったな。
おしつけて、わたしだけ出てって、ごめんねティノーヴァ。でもどうしても、勉強したかったの。わたしみたいにはやり病で苦しむひとがこれ以上出ないように。
ちょっとだけ歌った。メイノエの為に。「おいはぎの男」よ。メイノエ笑ってくれた。わたし達のところに来たおいはぎも、こんなまぬけな男だったらよかったのにねって話した。笑いが停まらなかった。仲直りできたよ。彼女が寛大だから。
まっくら。
〈いつもの燭台〉は役に立つ。これどうして持ってきてたんだろう。おいはぎを殴ろうとでも考えてたのかな、わたし。
メイノエにいった。やっぱり、集落らしいものが気になるって。
彼女頷いて、用を足してくる、その後行こうって。まっさおだった。
メイノエがもどらない。動かないで待っていてっていわれたけどどうしよう。
あしあとみつけた 集落へ行ったんだ。ひとりで。どうして。
わたしが行こうっていったからきけんじゃないかたしかめに?
よかった。メイノエ、




