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第98話「とんでもない宿題」

 シモンとエステルは、収監所にて捕縛した山賊、接収物を司法省長官バジュレ伯爵に引き渡し、帰路についている。


 疲れているだろうと、そして安全の為……

 シモンはエステルに、帰宅用の馬車を手配しようとしたが……

 エステルは丁寧に固辞。

 シモンに自宅まで送って欲しいとせがんだ。


 しばし考えた後、シモンはOKする。

 にっこり笑ったエステルは、キレイな白い手を差し出した。

 

 シモンも経験値を積み、さすがに慣れた。

 そ~っと手をつなぐ。

 エステルはシモンの手を「きゅっ」と握って来る。


 ついシモンはエステルが愛おしくなり……

 彼女を守るようにして、ゆっくり歩く。

 

 ふたりは貴族街区の一画、彼女の自宅へ向かう。


「局長」


「ん?」


「……バジュレ伯爵、局長の腕輪から出した山賊どもに驚かれて、5分以上固まっていましたね」


「ああ、だな。……でも話が上手くまとまって良かった。伯爵が司法省から、山賊退治の報奨金が出るとおっしゃっていたから、ウチの予算に回せるな」


「ええ、アレクサンドラ長官には次官補経由で、受け取りの可否、使い道、もろもろ確認しますね」


「ああ、頼むよ」


「局長、あの人たち……全員極刑になるんでしょうか?」


 エステルの言うあの人達とは、当然山賊どもの事だ。

 シモンは小さく頷く。


「ああ、殺人、人身売買、強盗……王国中で悪事の限りを尽くしたからな。でも奴らの行く末がどうなるのかは、俺達が考える事じゃない」


「そう……ですね」


「奴らにも言い分はあるかもしれない。でも皆、他人に迷惑をかけないという基本ルールを守りながら必死に生きているんだ。罪もない人を殺したり、奴隷に売る事が許されるわけがないんだ」


「分かりました……局長のおっしゃる通りですね」


 しばしの沈黙がふたりを満たす。

 再び口を開いたのは、やはりエステルである。


「ところで局長……明々後日(しあさって)の土曜日、ご予定はいかがでしょうか?」


 エステルは秘書である。

 シモンの仕事のスケジュールを管理している。

 なので、つい、シモンは問う。


「え? 何か仕事があるの?」


「いえいえ、完全に休暇ですから、お仕事は一切ありません。……あの、いきなりですが、私とデートしませんか?」


 女子からデートを誘われた事など、シモンの人生役24年間で一度もない。

 このような場合、彼の反応はもはや『お約束』である。


「えええ、えええ~っっっ!!??」


「うふふ、驚き過ぎですし、お声が大きいですよ、局長ったら。それでデートするのはOKですか?」


「あ、ご、ごめん。と、当然OKだよ。エステルから誘って貰えるなんて俺、嬉しいよ」


「ありがとうございます! 私もすごくすごく嬉しいですっ! この前風車亭へ行きましたが、あの時はあくまで仕事の一環、今回は完全にプライベートですから」


 積極的に誘うエステルに、シモンは圧倒されてしまう。


「そ、そうか……」


「うふふふ、ちなみにっ! もうひとり、ご参加しますからっ」


「え? もうひとりご参加って、まさか……あ!」


 驚くシモンに対し、エステルはきっぱりと言い切る。


「はいっ! 以前お伝えした通り……私はフェアに戦いたいので、クラウディア様もデートにご参加しますよ」


「ええっと……」


 シモンは口籠った。

 そんなシモンを見て、エステルは悪戯っぽく笑う。


「すでにクラウディア様とは話がついております」


「は、話がついている?」


「はいっ! 土曜日ですから、ロジエ魔法学院はお休みです。ご安心を」


「むむ……ご安心をって……」


「と、いう事でっ! 明々後日(しあさって)の土曜日朝、午前10時、局長のご自宅まで、ラクルテル公爵家の専用馬車で私とクラウディア様がお迎えにあがりま~す!」


「そ、そうなんだ」


「はい、つきましてはっ! どこに行って何をするのか、お任せ致しますから、素敵なデートプランを局長にお考えいただきたく……何卒宜しくお願い致しますっ!」


「うわ!? お、俺が考えるのっ!? す、素敵な!? デ、デートプランをぉ!?」


「はいっ! 私もクラウディア様もとても楽しみにしていますからっ! では失礼致しますっ!」


 いつの間にか……

 シモンはエステルの自宅前に居た。

 

 彼女の自宅は城壁の2階建て、高級アパートメントであった。

 ちらと聞けば、独身女子専用のアパートメントだという。


 正門の入り口には、元女子騎士と思える、たくましい女子の守衛が立っていた。


 エステルは深々とお辞儀をすると、


「では局長! また土曜日にお会いしましょう! 楽しみにしていますねっ!」


 にっこり笑って、身をひるがえし、自宅の中に入ってしまったのである。

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