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第71話「ラクルテル公爵家のお招き①」

 翌日土曜日の朝、午前10時20分、王国復興開拓省庁舎1階ロビーに集合。

 アレクサンドラ、シモン、エステルの3名は、馬車に乗り込み、ラクルテル公爵邸へ出発した。


 やがて馬車は貴族街区へ入り、そこからしばし走り、ラクルテル公爵邸前へ到着した。


 まずはエステルが、そしてシモンが降り、最後にアレクサンドラが降りた。

 アレクサンドラが合図すると、馬車は走り去った。

 午後を少し過ぎた時間にまた迎えに来てくれるという。

 今日は一昨日、昨日同様、ランチを兼ねたお礼の会なのだ。


 シモンは改めてラクラテル公爵邸を見回した。

 ティーグル王国でも指折りの上級貴族の屋敷らしく広大だ。

 

 ここが王都内とは思えないぐらいであり、まるで王立の公園並みである。

 

 正面に見えるのが主屋(しゅおく)らしい。

 まるで庁舎なみ、4階建ての巨大な建築物だ。

 

 その主屋の前には、使用人らしき者達が数十人一列に並んで出迎えをスタンバイしていた。

 その中にはクラウディアと侍女のリゼットが居た。

 ふたりともダッシュし、一目散にシモンへ向け、駆け寄って来る。


 クラウディアはシモンの正面に、そしてリゼットはクラウディアの背後に控えた。


 更にずいっと二歩、三歩と近付き、あからさまにエステルを見て「にやっ」と笑った。

 「これから『恋の戦い』が始まる!」と告げるかの如く。


 そしてシモンに向き直り叫ぶ。


「シモン様! ようこそ我がラクルテル公爵家へいらっしゃいましたっ!」


 そして、クラウディアは誰にはばかることなく大胆な行動に出た。

 何と何と!

 シモンへ迫ると強引に腕を組み、ぐいぐい引っ張り歩き出したのだ。

 同じく満面の笑みを浮かべたリゼットが続く。 


「な!?」

「あらら」


 クラウディアの大胆な行動に息をのむエステル。

 苦笑するアレクサンドラ。


 当のシモンは驚き戸惑う。


「おいおいおい! クラウディア様」


 愛するシモン?に名を呼ばれ、クラウディアは元気良く言葉を戻す。


「何でしょうっ!」


「こ、これ」


「はい?」


「い、い、いきなり何をっ!」


「あら、腕を組むのは恋人同士なら当然、愛の行為ですわっ!」


「愛の行為?」


「はいっ! 愛する恋人同士ならば、誰でもやる事ですわっ!」


「恋人同士なら誰でもって……」


(わたくし)、お父様の言いつけで、ここしばらくは、シモン様にお会いできませんでしたからっ!」


「そ、そうなの? お父様の言いつけ?」


「はいっ! 私が無理やり王国復興開拓省の庁舎へ押しかけては、シモン様のお仕事の邪魔になると、厳しく言われていたものですからっ!」


 確かに……

 しばらくクラウディアの姿を見かけていなかった。

 王宮には自由に出入り可能なはずのに。

 

 それは、父アンドリュー・ラクルテル公爵の厳命であったのだ。

 

「愛しいシモン様にお会い出来ない間、クラウディアは頑張っておりましたっ!」


「が、頑張っていたの?」


「はいっ! 魔法とお勉強は勿論! 家事にお稽古事と、様々な花嫁修業に(いそ)しんでおりましたわっ!」


「さ、様々な、は、花嫁修業!?」


「はいっ! 来るべきお嫁入りに備え、着々と準備していますのっ!」


「お、お嫁入り!?」


「はいっ! わたくしと、白馬の王子様、シモン様との出会いは運命! いえっ! 宿命ですからっ!」


 クラウディアの青く美しい瞳には、どこかのヒロインのように、キラキラした星がたくさん(またた)いていた。


「……あの、クラウディア様」


「何でしょうっ!」


「貴女が以前言っていた通り、やっぱり身分の差って、凄く大きいと思うんですけど……」


「確かに大きいですわ」


「貴女は上級貴族の子女、俺は卑しい平民の男ですよ。住む世界が全然違うのは、厳しいと思います」


「そうかもしれませんねっ!」


「おお、分かって頂いたようですね。貴女と俺は、育って来た環境と価値観が全く違う。俺の事は忘れて、もっと素敵な相手を見つけた方がベストだと思いますけど」


 切々と説くシモン。

 しかし……クラウディアは、


「さあ、シモン様! 宿命の邂逅(かいこう)を果たした私達を、お父様とお母様がお待ちかねですよ。早くっ! 早く行きましょう!」


 と、言いにっこり笑った。


 シモンは唖然(あぜん)とする。


 うっわ! 全然人の話を聞いてね~、っていうか、

 お約束の『華麗にスルー』の決めゼリフも聞こえん!


 シモンとクラウディアの後ろには……

 アレクサンドラとエステルが歩いていた。


 苦笑し、「肩をすくめる」アレクサンドラはふりむき、やや後方を歩くエステルに話しかける。


「エステル、クラウディアったら、あんなにはしゃいで、可愛いもんじゃない」


「……………………」


「クラウディアはまだまだ子供よ。でも、エステル。貴女は大人の女性でしょ。あんなベタベタは華麗にスルーしなさい」


「……………………」


「やきもきせず、余裕を持って、ど~んと構え、堂々としていなさいな」


「……………………」


「それに、ここはラクラテル公爵邸。クラウディアのホームグラウンドよ。対して貴女はアウェー。まさに敵地。敵地では敵地の戦い方があるわ」


「……………………」


「とりあえず、公爵ご夫妻に会って話をしましょ。話はそれからよ」


「……………………」


 しかし、エステルは無言のままである。

 そして、「ごごごごごごごご!」と怖ろしい地鳴りがぴったりくるような表情で「肩を怒らせ」歩いていたのである。

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