第53話「ふたりの決意」
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エステルとクラウディアが宣戦布告し合った翌日……
シモンは、やはり早めの午前8時前には出勤した。
8時10分……
シモンの出勤を秘書ルームで知ったのであろう。
エステルも通常より少し早く局長室に姿を見せた。
「おはようございます! 局長!」
「お、おはよう。エステル」
エステルは今日の天気同様、晴れやかな笑顔を向けて来る。
さすがに超鈍感なシモンでも気が付いていた。
自宅へ帰っていろいろ考えると、昨日あった事が夢やまぼろしでない事を実感したのだ。
どうやら……
エステルとクラウディア、ふたりの美しき女子達は自分に『好意』を持ってくれていると。
ただ……
会って間もないエステルやクラウディアが、どうして『こんな自分』を好きになってくれたのか、原因はまるで分からなかった。
シモンは生まれてから24年近く、女子には縁のない生活を送って来た。
つまり彼女居ない歴約24年、恋愛の経験値がまったくゼロ、ナッシングである。
王族に近い上級貴族と平民……
全くの身分違いで現実感のないクラウディアはともかく、近しい間柄のエステルに告げるべき言葉がある。
もしも恋愛経験が豊富、否、少しくらいはある男子ならば、エステルに対し、気の利いた言葉でフォローするだろう。
シモンは先日書店で買った恋愛マニュアル本に目を通してみた。
そこには様々な美辞麗句が並んでいた。
だが……さすがにその言葉をそのままエステルへ告げる事など恥ずかしくて不可能だった。
ただ感謝の気持ちを込め、シンプルにこう言うしかない。
「ありがとう、エステル。……俺、頑張るよ」
シモンの「頑張る」にはふたつの意味がある。
王国復興開拓省局長としての責務を果たすべく頑張る。
そして『エステルに相応しい男子』になれるように頑張る。
多くを語る事は出来なかったが、強い決意を込めた言葉だった。
対して、エステルも同じく強い決意を述べてくれた。
「局長……私も頑張ります。クラウディア様に負けないよう、そして公私混同しないよう仕事は倍以上頑張ります」
エステルの言葉で確信した。
やはり夢などではない。
彼女が何故自分を好きになってくれたのか、いろいろ聞きたい気持ちはある。
しかし、まずは目の前の仕事に邁進すべき。
シモンの内なる声がそう言っていた。
「よっし! じゃあ今日も頑張ろう!」
「はいっ!」
こうして新任の局長と専属秘書の新たな1日は始まったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
本日も同じようにエステルがシモンの予定を含めた業務連絡を行う。
「局長、本日のご予定ですが、エレン・デュノア次官補から打合せの要請が来ております。先日局長がご提案した冒険者ギルド提携の件だと仰っております」
「ああ、承知している」
「次官補は午前10時からの打合せを希望されておりますが、OKの返事をお戻し致しますか?」
「OKで構わないが、念の為。午後の予定はどうなっているかな?」
「はい。人事部から局長の部下となる局員候補のリストが届いております。衣食住あらゆる部門のスペシャリスト達です。ほとんどが学者も含めた事務方です」
「そうか、そのリストをチェックする作業だな」
「はい、適任者の精査、候補を選ぶ作業時間にあてたいと思います」
エステルの報告を聞き、シモンはアレクサンドラが語った王国復興開拓省の理念を思い出す。
「宰相マクシミリアン殿下から課せられたウチの任務はね、王国内で難儀する人々をケアし、フォローする事」
「ウチの仕事は、その土地に発生する危険を解消し、暮らしを豊かにする手助けをする事なの。それが人々の生活レベルを向上させる。その結果、ティーグル王国が豊かになり、国力も上がる事となるから」
「シモン君が行った魔物退治だけではなく、未開の土地開拓、宅地化、農地化を始めとして、産業、観光の開発、振興等々、その土地に適応した細やかな施策を実施するのよ」
「その為にシモン君みたいな魔法、探索スキルに優れたプロフェッショナルだけじゃなく、あらゆる分野のプロの力を集結させ、最大限に発揮させるの。それが我が王国復興開拓省創設の意義なのよ」
あらゆる分野のプロの力を集結させ、最大限に発揮させる……
それが王国復興開拓省創設の意義。
現場を統括するシモンの下に優秀な人材が続々と集まり、全員で王国の人々の暮らしを豊かにする為に働く。
シモンは胸が熱くなる。
やりがいを感じると共に、エステルが見ていると思えば、心が歓喜に満ちあふれるのだ。
「成る程。そのリストを基に局長として人選を行い、更に次官と次官補と共に詰め、最終的には長官に了解を得るという事だな」
「はい、局長。その理解で問題ありません。午後はリストを確認しながら、候補の人選作業を行うのが妥当かと」
「了解。他には?」
「はい、先日研修で局長がオーク100体を倒した村の復興策立案依頼と、いくつかの地域の魔物討伐案件の打診が来ております」
「おお、結構あるな」
「はい。でもこれらはほんの序の口です。局長の仕事はまだまだ増えると思われます」
仕事がまだまだ増えると聞いても、シモンは全然臆さない。
「了解! どっちにしても手が足りないな。俺の部下になってくれる局員候補の選定と任命を急がないといけない」
「おっしゃる通りです。目の前の案件をこなす為、次官補を窓口とした冒険者ギルドとの提携も急がなくてはなりません。依頼された案件を対処出来ずに放置する事態が、新設された我が省にとって最もまずいと思いますから」
「だな! ウチの省が上手く機能しないと、全王国民から長官への信頼が揺らぎ、ひいてはマクシミリアン殿下にもご迷惑をかけてしまう」
「はい、度々ですが、おっしゃる通りですね。長官以下、全職員で誰もが認める良績を残さなくてはなりません。それと……」
「それと?」
「局長には及びませんが、私も上級のレベルだと魔法省から認定された高位魔法使いです。属性は水。魔物の討伐も含め、現場には同行させて頂きます。何卒宜しくお願い致します」
「お、おお」
きっぱりと断言したエステルに、シモンは圧倒されてしまったのである。
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