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第39話「思いがけぬ再会②」

いつもご愛読頂きありがとうございます。


※当作品は皆様のご愛読と応援をモチベーションとして執筆しております。

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 驚き慌てふためく侍女とは対照的に……

 学生らしき貴族令嬢は、「ポカン」としていた。

 あの時は、気を失ったままだったから、シモンの事を知らないのだ。


 このまま、ふたりを完全無視するわけにもいかないので、


「あ、ども!」


 シモンは柔らかく微笑み、軽く手を挙げた。


 貴族令嬢は、ぱっと見、金髪碧眼(きんぱつへきがん)の可愛い女子である。

 しかし、下々の者など一切無視する! というように高慢そうなツンとした眼差しが、彼女の魅力を半減していた……

 などと、余計な事をシモンは絶対に言わない。

 この場合に限って、沈黙は……金であるのだから。


 貴族令嬢はシモンを見た。

 更にリゼットへ、訝(いぶか)し気(げ)な視線を投げかける。

 頬を「ぷくっ」とリスのようにふくらませた後、叫ぶ。


「ねぇ、リゼット! どういう事ぉ? 一体何? この状況をちゃんと説明しなさいよぉっ!」


 貴族令嬢が再び呼んだ名前から、侍女の名はやはりリゼットだと認識出来た。

 事の成り行きを見守るシモンは、帰るわけにもいかず、脱力、

 「ふう」と軽く息を吐いた。


 リゼットは、主《あるじ》から状況説明を求められ、声を振り絞って叫ぶ。

 再び、シモンの事を「びしっ」と指さした。


「お嬢様! この方なのですっ! この方が、5人の悪漢どもから私達を救ってくれたのですよっ!」


 貴族令嬢は、ジト目になって、シモンを見つめた。

 恩人というよりも「犯人の一味ではないか?」というような疑惑の眼差しだ。


「はあ? この人がぁ? うっそぉ!?」


「いえ、お嬢様、嘘ではありません! 間違いありませんよ! この方おひとりで、私達を助けてくださいましたっ!」


「ええ~? ホントかしら?」


「はい、私はこの方のお顔をはっきりと記憶しておりますっ! 本当の本当ですよっ!」


「ふ~ん、そう。でも、コイツ全然強そうに見えないけど。奴らは5人も居たじゃない。どういうふうにやっつけたの? 具体的に説明してよっ!」


 主が持った疑問に対し、リゼットがすかさず答える。


「どういう風に? 具体的にと仰られても、私には、はっきりと分かりません」


「はあ? はっきりと分からない? リゼット、どういう事? 全くいみふだわっ!」


「はい! そうです! 思い出しました! 魔法ですよ、魔法! 魔法使いのこの方が、奴らを軽く注意し、ひとにらみしたら、5人全員が、悲鳴をあげて逃げてしまいましたから」


 いや、正確に言えば、本当は魔法ではなく、スキル。

 特殊な『戦慄のスキル』を使ったのだが、訂正したり説明が面倒。

 

 なので、シモンはあえて口をはさまなかった。


「はあ? 軽く注意してひとにらみ? 5人全員が逃げた? コイツ戦ったりはしなかったの?」


「ええ、お嬢様! まさに奴らは、蛇(へび)ににらまれた蛙(かえる)の如(ごと)く怖がってました。もしくはネズミの猫に会う、でしたものっ!」


「そうなの? 猫の前のネズミねぇ……」


「はいっ! そしてっ! この方が私達にお使いになったあの治癒魔法(ちゆまほう)! 奇跡としか言いようがありませんっ!」


 首を傾げる貴族令嬢とは対照的に、リゼットは「うっとり」してシモンを見た。

 目が潤(うる)んでいて、まさに『夢見る乙女の眼差し』だ。

 

 可憐なリゼットから熱い眼差しで見られて、シモンは少しどぎまぎするが……

 よくよく考えてみれば相手は10歳近くも年下、だんだん冷静になる。

 

 それに、この場でこれ以上やりとりするのは目立ち過ぎる。

 騎士や警備員が集結し、好奇の眼差しで、注目していた。

 その数、10名以上。

 ヤバすぎる。


 まずい! と思ったシモンは、長居は無用、とっとと帰る事にした。


「あ、あの~、という事で俺、そろそろ行っていいかな?」


 場を去ろうとする、シモンの言葉尻をチェックしたのは、貴族令嬢である。


「はあ? 俺? 何という下品な物言いですか!」


「じゃあ、自分」


「駄目です! 自分でもいけません! わたくし、としっかり言い直しなさい」


 貴族令嬢の追及は執拗(しつよう)であり、厳しかった。

 

 気を失っていたから、分からなかったが、この子はこういう性格だったのか……

 

 シモンは苦笑し、首を横へ振った。


「いやいや……俺、上司から俺で構わないって言われたよ」


「まあ、性懲りもなくまた、俺って言う!」


「うん! 自分の一人称俺で、上司からOK貰ってる。という事で、もう行くから。ばいばい」


「ま、待ちなさいっ!」


「いや、待たないよ」


 貴族令嬢の引き留めをシモンは華麗にスルー。

 

 だが、貴族令嬢とリゼット&護衛の女子騎士はくっついて来る。

 ここでリゼットが素早く離れ、巡回していた王宮警護の男子騎士へ、駆け寄った。

 何か話していた。

 どうやら、『シモンの素性』を尋ねたらしかった。

 

 リゼットはすぐ戻り、貴族令嬢へシモンの素性を告げたようだ。

 

 大きく頷いた貴族令嬢が「ずいっ」と前に出た。

 先ほどの侍女同様、シモンを「びしっ!」と指さす。


「貴方、王国の幹部職員なのっ!」


「ああ、今日からね、そうなった」


「今日からそうなった? 何よ、それ?」


 シモンの答えを聞き、貴族令嬢は「はあ?」という顔をした。


「うん、まあ、そういう事で。じゃあ、今度こそバイバイ」


 シモンは、貴族令嬢を引き離しにかかる。

 こうなると、本能的に貴族令嬢は追いすがる。

 

「お待ちなさいっ! こら待て! このままじゃ私の気持ちが収まらないわよっ!」


 シモンを追う前に、貴族令嬢はちらと振り返り、リゼットへ指示を出す。


「リゼット! 間違いなくコイツなのねっ!」


「は、はいっ! 間違いありません! お嬢様! その方へ、絶対にお礼を申し上げてくださいねっ! いいですかっ! ていねいに、ですよっ!!」


「わ、分かってるわよっ!」


 そんな主従の会話を背に受け……

 シモンは帰宅すべく王宮の正門へ向かい、歩き出していたのである。

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