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第153話「故郷へ!①」

ラクルテル公爵家邸で婚約の内祝いの食事会を行った翌日朝早く、

シモンはエステルとクラウディアを連れ、王都から故郷へと旅立った。


元々、近いうちに帰郷しようと考えていたシモンであったが……次から次へと仕事が舞い込み、まとまった休暇が取れなかった。


今回はアレクサンドラ・ブランジェ伯爵の忠告と心遣いもあり、

婚約を許したラクルテル公爵夫妻も愛娘ふたりをシモンの母へお披露目する事を快諾してくれた。

なるはやで、母を王都に連れて来て親孝行するようにとも言う。

ラクルテル公爵夫妻は、シモンの生い立ちを知り、苦労した母に心から同情したのである。


さてさて!

シモンが旅をするのは婚約した女子ふたりのみではない。


ラクルテル公爵夫妻から、『今後の事』もあるとして……

身の回りの担当として侍女のリゼットが、

護衛担当として、騎士のジュリエッタ、アンヌの姉妹も同行したのである。

ちなみにジュリエッタは、『支援戦略局の局員』でもあるから、特別出張扱いとした。


さてさて!

出発寸前にシモンは、『魔法鳩便』で帰省する旨を母あてに『手紙』で送った。

妻となるべき女子をふたりと供の者も3人、都合自分を入れ、6人で向かうと。

自分達が到着するより全然早く、『手紙』は母の下へ届くはずだ。


帰省の移動手段だが……

王国復興開拓省専用馬車は帰してしまったし、王都外へ出す時は、いろいろと煩雑な手続きが必要との事。

そこでシモンは、勧められるまま、ラクルテル公爵家の専用馬車を借用した。


屋根付きの馬車が1台、騎馬は1騎。

馬車にシモン、エステル、クラウディア、リゼットが乗り込み、

御者役はジュリエッタが快く引き受けた。


あの誇り高きプライドの塊だったジュリエッタが見事に変貌していた。

彼女は誇りをかけて騎士を全うするより、人間としての器にほれ込んだシモンについて行くと決めていた。

公私ともども、シモンに貢献出来る事を人生における歓びと感じていたのだ。


そして騎馬は、先頭をアンヌが固め、帰りは姉とジュリエッタと御者役を交代する事となっている。

アンヌもシモンに魅かれ始めていたから、今回の任命は渡りに船と思っている。

そして姉とともに王国民の為に働ければと決意している。


先述したが……シモンの生まれ育った故郷は、王都グラン・シャリオからは、

遥かに北であり、馬車で約1週間ほどかかるのだ。


安全第一を考え、シモンは魔獣ケルベロスを先行させていた。

万が一敵が出現したら、灰色狼風の姿で威嚇し、追い払ってくれるはずだ。


さてさて!

馬車の車内はシモンの母とシモンの故郷の話で持ち切りである。

シモン以外は全員が、王都生まれの王都育ちなのである。


エステルが言う。

ちなみにエステルは婚約してからもシモンを局長と呼んでいた。

いずれクラウディアのように名前で呼びに違いないが。


「局長の故郷プリンキピウムって、王国でも北の方だし、冬は結構寒いですよね」


「ああ、寒いな。雪も結構降るし、いっぱい積もるよ」


「シモン様、プリンキピウムって、お店は結構あるのですか?」


「いや、普通の町に比べれば小さいし、だいぶ田舎さ。生活に必要な種類の店が10軒ほどしかないんだ」


「それ、局長、全て個人商店ですよね?」


「ああ、エステル。全部完璧に個人商店さ。会社とか商会なんて皆無だよ」


「シモン様のご実家のお屋敷って、どのような感じですか?」


「いやいや、クラウディア。俺の実家はお屋敷なんかじゃないって。プリンキピウムのご領主様から町へ託されて、町長さんが運営管理する小さくて古い平屋の町営住宅だ」


「局長のお母様って、女手ひとつで局長をお育てになったのですよね?」


「ああ、そうだ。父親が蒸発してからは、農作業、飲食店の給仕、商店の手伝い、清掃員、ベビーシッター等々、何でもやってがむしゃらに働いて、俺を養ってくれたよ」


「す、凄いです」


エステルが感嘆すれば、今度はクラウディアが、


「お母様、今は何をしていらっしゃるのですか? シモン様が毎月、金貨を200枚(200万円)、仕送りされているとお聞きしましたが」


「ああ、これまで懸命に育てて貰った恩返しをしたい! だから、契約した時に金貨1,000枚(1,000万円)、月に金貨を200枚送っているよ」


「シモン様、偉いです♡」


「いやいや、これだけ給料を貰えれば当たり前だって! エステルは俺の給与を把握しているだろうけど、俺は金貨100枚あれば余裕で暮らせて、貯金もしっかり出来る。残業代も結構あるし、住宅手当も別途貰っているからね」


「でも、お母様は、それだけ仕送りをされても、まだ働いていらっしゃるって」


「ああ、元気なうちは、まだまだ働くって言い、俺が無事に就職したから、張り切って、働いているよ」


「成る程、本当に勤勉なお母様ですね!」


「ああ、働き者だな。俺が稼いで仕送りするからもうリタイアしろと言っても聞かないし、王都で一緒に暮らそうと誘ったけれど、生まれ育った土地が好きだからと言って、俺が勧めても、その度に断られたよ」


「そうなんですか? 今回は王都へのお引越し、OKして頂けるかしら?」

 

「どうかなあ……全力を尽くすけどね」


「ところで局長は、私達ふたりの事を、お母様へどこまで話してらっしゃいますか?」


「ええ、シモン様、それ、すっごく気になりますわ」


「ああ、申し訳ないけれど、婚約が確定してから詳しく話そうと思っていたから、どこの誰というように詳しくは告げていない」


「そうですか」

「では、お母様にとっては結構サプライズですわね」


「ああ、だが結婚を考えている女子が居て、相手がふたりとまでは伝えてある」


「女子ふたりと結婚すると、お母様へお伝えして……どうでした、反応は?」


「ああ、結構びっくりはしていた。経済面に関しては、私への仕送り分を減らせば暮らしていけるだろうと言っていた」


「そうですか」

「まあ、私達も働くから大丈夫ですよ」


「まあな。けど母は、夫ひとりに妻がふたりで、夫婦関係に折り合いがつくか、経済面よりそっちを心配していたよ」


「うふっ、それは全然大丈夫ですものね! 私達は3人で絶対仲良くやっていけますよ」


ここで不安を告げたのは、クラウディアである。

甘やかされて育った『究極のお嬢様』であるがゆえ……

世間の荒波にもまれ、苦労して来たシモンの母とどう接して良いのかすこしだけ怖くなったようだ。


「私、シモン様のお母様と上手くやっていけるかしら?」


「大丈夫さ。今のクラウディアなら」


「え? シモン様、今のクラウディアならって?」


「ああ、今のクラウディアは『素敵な大人の女子』になっているからな」


「素敵な大人の女子、わお! 私は成長しているって事ですか、シモン様」


「ああ、優しくなったし、とても思慮深くもなっているよ」


と、シモンが言えば、エステルも負けじとばかりに、


「ねえ、局長、私はどうですか?」


「エステルも充分に優しく、思慮深いさ。それにこの前一緒に戦って、素晴らしい魔法使いだとも認識した」


「うふふ、嬉しいです!」


そんなシモンとエステルのやりとりを聞き、

クラウディアは、


「私も、魔法大学へ行って、いっぱい勉強し、エステル姉みたいにほめて貰えるよう頑張りますわ!」


そう言うと、胸を張り


「シモン様、この前のテストで私、トップになりました。ロジエ魔法学院で学年首席にまでなったのですよ」


そう言い、笑顔を見せた。


「学年首席? 凄いじゃないか!」

「私も学年首席には、なった事がないわ!」


ここで、侍女リゼットが(あるじ)をフォロー。


「シモン様と運命的に巡り合って恋をされてから、お嬢様はずっと、ひたむきに頑張っておられます」


対してクラウディアは、


「当り前ですわ。私、シモン様の為なら、エステル姉に勝るとも劣らない最高の女子を目指してみせます」


と、決意を熱く語ったのである。

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