第141話「結団式」
数日後……
シモンの『仮採用』提案は受け入れられた。
レナ、リュシー経由でアレクサンドラに上申され、OKを取り……
改めてシモンの方から丁寧な言い方で、人事部を説得したのである。
不思議な事にシモンの提案を受け入れたのは、絶対に難色を示すと思われた一番の難物エルノー人事副部長の方であった。
シモンの思いを汲み、深謀遠慮を見抜き、自らケーリオ人事部長を説得したのだ。
こうなると決定は早い。
シモンの見立てによる『250名』が、すぐ仮採用された。
250名の内訳は……
ギルド所属の冒険者が100名で、うちシーフが20名、戦士武闘家が30名、魔法使い30名、治癒士20名。
隊所属の騎士が70名でうち、魔法騎士は30名。
創世神教会所属の治癒士が40名。
そして一般の志願者からは、様々な職種が40名。
これでトータル250名。
更にシモンは熟考の上、250名の中から密かに『クランメンバー候補』の12名を選んだ。
ここから最終的に本メンバー6名が選ばれる。
但し、内々のメンバーである。
この時点で発表はしないし、研修へ入ってから後、変更もあり得る。
という事で、更に1週間後、結団式が行われた。
場所は模擬線が行われたティーグル王国闘技場。
当然ながら、アレクサンドラ長官、リュシー次官、レナ次官補も出席している。
仮採用者に対し、まずアレクサンドラが簡単に挨拶。
リュシー次官、レナ次官補も。
続いてシモンが登場。
ここで初めてシモンの意図が明かされた。
そして、本採用になる上での覚悟も……
「支援開発戦略局、局長シモン・アーシュです。皆さん、おめでとうございます! 俺は皆さんが難関を突破した事に敬意を払いたい。しかし、気を抜いてはいけません。何故ならばここからが本番なのです。皆さんはまだ仮採用の身分です。本採用になるには、ここから最後の難関を突破してください」
「………………」
闘技場に集結した仮採用者達は、真剣な表情且つ無言でシモンの話を聞いていた。
「まずお伝えしておきます。我が王国復興開拓省、特に当支援開発戦略局はけして派手ではない。困窮した王国民を救う、しかし一朝一夕にはいかない、地道に実績を積み上げる根気の要る仕事です」
「………………」
「支援開発戦略局の局員には、専門外の事も時には求められます。そしてチームワークが最も大事です。皆さんの協調性を重視します。はっきり言って身分や誇りにこだわり過ぎる方には不向きな職場だと思います」
後方でシモンの話を聞きながら、ジュリエッタは苦笑した。
過去の記憶……『黒歴史』が脳裏にめぐったのだ。
騎士という身分と誇りに囚われ、こだわっていた己は愚かだったと改めて思う。
つらつら考えるジュリエッタ。
一方、シモンの話は続いている。
「皆さんの一番気にされる契約に関して、簡単にご説明致します。皆さんの多くは既に仕事を持っていらっしゃる方が多いと思います。冒険者ギルド所属とか、王都騎士隊所属とか……」
「………………」
「例えば、冒険者ギルド所属とか、騎士隊所属であれば当、支援開発戦略局に、既に在籍している局員と同じく『出向』という形を取って貰います。以外の方も現勤務先と当省人事部の方で調整致します。フリーの方は、当省と契約という形を取って頂きます。契約形態や期間に関しては、改めてご相談ください」
「………………」
「今回は、これまで支援開発戦略局が取り組んできた王都近郊の小村支援、そして魔物討伐において、皆さんに同行して頂き、実務に取り組んでも頂きます」
「………………」
「今回も様々な仕事があります。先ほど申したように専門外の仕事もあるでしょう」
「………………」
「そして皆さんの仕事に取り組む姿勢を俺以下の局員、人事部で拝見させて頂きます。真摯に労を惜しまず取り組むことを願います」
「………………」
「その上で、皆さんの採用に関し、可否を判断。本採用を決定致します。ちなみに、仮採用中も、王国復興開拓省の規定に従い、皆さんの給与と手当等はお支払い致します」
「………………」
「皆さんにまずは、3週間の研修を受けて頂きます。いろいろお調べになり、ある程度の知識はお持ちだと思いますが、改めて王国復興開拓省、そして支援開発戦略局について講義を行いますので、しっかりと学んで頂きます」
「………………」
「そして今回の出張に関しての概要を把握して頂きます。今この場から皆さんの評価は既に始まっているとお考え認識ください」
「………………」
「3週間の研修中は、先日皆さんが模擬戦闘をして頂いたゴーレムとも実戦訓練をして頂きます。今度は防戦一方ではなく、こちらからも攻撃します。治癒士の方は不慮の怪我や事故の際は、速やかに対応してください。その際の対応も評価に含まれます」
「………………」
「この研修中に、クランメンバーを始め、班分けも致します。但し決定ではなく、後で変更もありますのでご了承を」
「………………」
「ご質問等があれば、人事部までお願いします。御返答はお時間がかかる場合もありますし、支援開発戦略局は直接お答えする事が出来ませんのであしからず。……以上です。何卒宜しくお願い致します」
シモンは話を終えると、深く一礼した。
そして居並ぶ仮採用者へ柔らかく微笑む。
とてつもない力を秘めるシモンの物静かな様子に……
却って圧倒され、闘技場は、静まりかえっていたのである。
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