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第118話「理解と想像力」

 王国復興開拓省庁舎3階、支援開発戦略局オフィス。

 シモンとエステルが到着し、挨拶。


 まずはシモンが本日の予定を告げ、エステルが補足する。

 午前中は、特産品の選定、開発会議。午後は魔物討伐に関しての作戦会議。

 本日も朝から会議、午後もずっと会議だ。

 普通ならば「うんざり」するところである。


 しかし、先日小村へ赴いたように支援開発戦略局は出張する時は徹底して屋外作業。

 そのメリハリの良さが、局員達を納得させ、モチベーションもアップさせている。

 じっくり論議し、策を尽くし、施策を行う。


 対して、十分な報酬と人々の笑顔が漏れなく付いて来る。

 やる気が出ないわけがない。

 そして、その支援開発戦略局をけん引するのは頼もしいボス、シモン・アーシュ局長なのだから。


 早速会議が始まった。

 場所は3階の支援開発戦略局オフィス内の打合せブース、会議内容は予定通り、

 王国の特産品の選定、開発である。


 最初の議題は小村の特産品開発だ。


 その前にシモンから発表があった。


「全員聞いてくれ。人事案件は、長官に至るまで3名全てに承認された。前回と同じ陣容で小村へ赴く事が出来るのと、ペリーヌが提案した商業ギルドの新スタッフも加わり、各作業はより円滑になるぞ」


 シモンの通達は、エステルの言葉をそのまま引用したもの。

 だが局長シモンと秘書エステルは表裏一体。

 なんの問題もナッシングだ。


 陣容が整い、強化され、当然局員達のモチベーションは更に上がる。


「おお、やった!」

「心強い!」

「さあ! バリバリやるぞ!」

「頑張ろう!」

「ウチは仕事が早い! 気合が入る!」


「と、いう事で出向の受け入れは、なるはやで随時。当事者は、人事部との調整を頼む。エステルと相談し、上手くやってくれ」


 シモンは言うと、更に話を続ける。


「さあ本題へ入るぞ。小村の特産品開発だが、バルテレミーが提案した果実開発の企画書はとても良く出来ている。有力な候補として前向きに検討したい。昨日中に全員へ配布してあるが、意見のある者は居るか?」


 シモンの問いかけに対し、挙手をしたのは、意外にも局内で武闘派としてならす、騎士のジュリエッタだ。


「素人考えかもしれないが……病虫害と獣害の対策、輸送、販売の手配も考え、盛り込んだ方がよりベストになると、私は思う」


 ここでシモンがすかさずフォロー。


「俺も農業はほとんど素人だが、ジュリエッタの意見には大いに賛成だ。各自専門外でもどんどん忌憚のない意見を述べてくれ。担当者はどのような意見でも寛容に受け止め、真摯に対応して欲しい」


 各員を見まわし、シモンは更に言う。


「小村の施策は今後の案件のプロトタイプとなるから万全を尽くしたい」


 局員達は、シモンの話に同意し……

 全員大きく頷くと、活発に議論を行ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 午前の会議が終わった。

 テーマがテーマ。

 なので、いくつか良いアイディアやプランは出たが、最終的にはまとまらない。

 とりあえず持ち越しとなった。


 ……昼時となったので、全員一緒にランチへ入る。


 シモンのおごりではないが、昨日同様ひとつのテーブルで全員が仲良くランチを楽しんだ。


 ランチが終わった後……

 良い雰囲気の中で、午後の会議へとつ、にゅう、である。


「じゃあ、魔物討伐の会議に入る。メンバーは俺、エステル、ジュリエッタにジョゼフ。それ以外の局員は引き続き、施策の続行だ。先方でどのような施策をするか検討するように」


「「「「「「「はいっ!」」」」」」」


「警護役は、ジョゼフの希望で出向が決まった農民出身の冒険者達にやって貰う。バルテレミーと農作業との兼ね合いを相談しつつ、段取りを組んでくれ」


「了解です!」

「分かりました!」


 小村の支援を行いながら、他の案件も処理して行く。

 既に多くの依頼が来ている。

 つまり同時進行……これからもそうなるだろう。


「まずは小村から最も近いオーガ100体の案件から行くか……ペリーヌ、オーガの皮はオーク同様、高額で売却出来るな」


「はい! 局長が仕留めたオークは、ウチも儲けさせて頂きました。オーガの皮はオークの5倍の価値はありますよ」


「よし! では今回も購入の手配をしておいて貰おう。できる限り急所にピンポイントでダメージを加え、損傷なく倒すから。それとエステル」


「はい!」


「当該地の領主が、一般の動物同様、オーガの狩猟権云々を言って来ると困る。無償で倒すのなら、放棄するよう契約の確認及び必要があれば、修正をして欲しい」


「おおむね了解しましたが、局長」


「おう!」


「たぶん、ないとは思いますが、もしも討伐依頼を出している領主が、狩猟権放棄を拒んだら?」


「そんなん当然、討伐を断る。俺達は便利屋じゃねぇ。何もしないで倒したオーガを横から強奪し、いいとこどりをしようなどおこがましい。寝言は寝てから言えだ!」


 シモンはエステルにそう言うと、余裕で笑った。


 そんなやりとりはあったが……

 引き続き、オーガ100体討伐に関しての作戦会議は行われた。


 はっきり言って、この会議は討伐に参加するシモン、エステル、ジョゼフ、ジュリエッタ以外には直接は関わりのない会議である。


 この時間を、各自が与えられた課題クリアに使う方が望ましい。


 しかし支援開発戦略局の、局員間の連帯を図る為、シモンは全員に参加して貰っているのだ。


 自分たちが己の仕事をしている際、外敵と戦う者は実際に何を行うのか、理解しておいて欲しいという趣旨だ。


 理解し合うために、自分に置き換え、とことん想像力を働かせる。

 シモン達の打合せを聞く事で、自分が戦場へ出るイメージを持って欲しい。


 「戦わない自分には関係ない」と、思考停止をして欲しくないというのが、シモンの切なる願いなのである。


 それゆえ、4名で組んだクランの役割分担とか具体的な作戦まで伝える必要はないと考えてもいる。


 いつ、どこで、誰が、何を、行うのか……

 そこまで話し合って、シモンは一旦会議の散会を告げた。


 「討伐に参加する4名以外は、自分の作業に戻って構わない」と。

 「但し質疑応答は受け付ける」とも告げる。


 シモンの方針を理解した戦闘に不参加の3名は……

 いくつかの質問をした後、自分達の席に戻り、己に課せられた仕事を再開したのである。

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