6.Next attraction, next pair
ゾンビみたいな足取りで七海先生が去っていってから数分後。夕月と昴が戻ってきた。
「いやー楽しかったー」
お腹いっぱい満足、といった表情の夕月。それがジェットコースターを満喫したことによるのか、昴と二人きりだったからなのかまでは読み取れない。ともあれ、部長の作戦はうまくいっているようだ。
「よう晴人、体力は復活したか?」
「まあな」
「じゃあじゃあ次は――」
「次はあれなんてどうかしら?」
提案しようとする夕月に、部長が声を重ねた。そして少し遠くを指さす。
白い人差し指が向くのは――楽しげな雰囲気など微塵も感じさせない、おどろおどろしい外観の建物。ジェットコースターとはまた違った悲鳴が聞こえてきそうな、人を怖がらせることに特化した施設。
「……お化け屋敷、ですか?」
瞬間、夕月の顔が引きつるのがわかった。こいつが怖いものが得意じゃないことは、俺が一番よく知っている。
「いいですね。あれなら乗り物酔いもしなさそうですし」
だけど、俺は部長の提案に乗る。別に夕月に嫌がらせしたいとかではない。これも部長と事前に立てておいた、作戦のひとつだ。思い出づくりのためには、楽しいアトラクションだけじゃなくて、怖い体験も共有しておくのがよいだろう、という。
「べ、べつにあれは今日行かなくてもいいんじゃない? あはは」
「なんだよ星宮。もしかして怖いのかー?」
「ち、違うし!」
慌てて否定する夕月。
「せっかくだから、二人一組に分かれるか」
「ちょ、私まだ行くなんて」
ふふふ、さっき無理やりフリーフォールに引きずっていった仕返しだ。
「そうね。じゃあ私は晴人くんと行くから――」
「あ、それじゃあ」
予定どおり、夕月と昴がペアになるよう誘導しようとした部長の言葉が、思いもよらない方向からの――昴の声で遮られた。もちろん俺と部長の作戦なんて知る由もない彼は、右手を突き出してこう提案してきた。
「今度はじゃんけんでペア決めないか?」