1.Rest in early summer
天国と地獄。
高校生にとって、七月はそう形容するのにふさわしい月だと思う。
前半には期末テスト。後半には夏休み。負のイベントと正のイベントを兼ね備えた七月は、学生生活を凝縮しているといっても過言ではない。
だがそんな七月も、期末テストさえ乗り切ってしまえば、あとは天国を待つのみ。テストが終わればテスト休みに短縮授業なので、ほぼ夏休みとも言える。
そうテスト休み。テストに心血を注いだ心身を労わるもよし。休みだった部活動に専念するもよし。各々が思い思いの活動に勤しむ期間。
そんなテスト休みのとある日。
俺は休むでもなく、部活動をするでもなく。
遊園地にいた。
「むっはー! テンション上がるねー!」
俺の前を歩く夕月が、両手を上げてひときわテンションの高い声を上げる。楽しげな声は、そこかしこで流れるBGMかき消す勢いだ。
「子どもじゃないんだから、あんまり走り回るなよ」
「いーじゃん、遊園地なんて久しぶりなんだしー」
白いシャツと、リボンのついた赤いキュロットスカートが、彼女の動きに合わせて翻る。ポニーテールもふわふわと、まるでエサを前にした犬の尻尾みたいなはしゃぎっぷりだ。
「次、あれ乗ろうよー!」
「おっ、フリーフォールか。いいチョイスだな星宮」
夕月の隣でうなずくのは、ラフなTシャツとジーンズに身を包んだクラスメイトの昴。こちらも同じくテンション高め。
そんな二人とは正反対に若干引き気味なのが二人。俺と部長だ。
「フリーフォールって、たしか足が宙に浮いて一気に落ちるのよね。私は遠慮しておこうかしら……」
「俺も。ちょっと休憩したい」
部長の言葉に続けて俺は同意する。
かれこれアトラクション三連続。平日で園内が空いているせいで待ち時間がほぼないこともあって、休む暇なく乗り物に身体を揺さぶられている。せっかく人も少なくてのんびりできるんだから、もう少しゆっくり回ってもいいじゃないか。
「えー。とばり先輩も行きましょうよー。てかハルは怖いだけなんじゃないのー?」
「なんだー晴人、そうなのか?」
「違う。純粋に休みたいからだ」
「私たちはかまわないから、二人で行ってきていいのよ?」
部長が提案する。が、夕月はまったく聞く耳を持たないで、
「まーまー、二人とも。とりあえず乗りましょーよ。乗ればきっと楽しいですってー」
「おいこら――」
「あ、ちょ――」
右手で俺の腕を、左手で部長のそれをつかむと、アトラクションの列へと向かってずるずると引っ張っていく。
絶叫系は正直、得意じゃない。部長もそんな顔をしている。けれど、俺たちの要望ばかり通すわけにはいかない。
なにせ、今日の主役は夕月だ。俺と部長は、あくまで見守り役。
俺と部長、それに夕月と昴。この四人で遊園地に来たのは、テスト終了の打ち上げというわけではない。仲の良い友だち同士で遊びに来た、それもまた違う。
全ての発端は、期末テスト前に夕月が部室へとやって来た時に遡る。