20.Next client ?
翌日。帰り道で偶然夕月と一緒になった。
「いやー、昨日の告白はすごかったねー」
自販機からガコン、と出てきたジュースを拾い上げながら、夕月は言う。
「なんでお前が知ってるんだ?」
「いやだってあの場所、グラウンドから丸見えだもん。昨日たまたま居残り練習してたから、ぜーんぶ見ちゃった」
なるほど。
「あーあ、私もあんな風にきゅんとくる告白されてみたかったなー」
「なんで過去形なんだよ。お前なら告白してくるやつとかいるだろ」
贔屓目に見てもモテるとは思う。言ったら調子に乗るから言わないけど。
「……」
「……夕月?」
「えっ、なに?」
「大丈夫か?」
ジュースを開けもせずに、ぼーっとラベルを見つめているなんて珍しい。いや、それ以上に彼女の表情が、今まで見たことないような苦しく、切なく、そして恋しそうにしていて、それがやけに気になった。
「あっ、うん。大丈夫、大丈夫」
本当に大丈夫だろうか。ちょっと心配になっていると、
「ねえ」
小さくつぶやくように言いながら、一歩二歩、俺から距離を取る。そしてくるりと回ってみせ、こちらを向いた、だけど夕日のせいで、その表情はわからない。
「夕月?」
いつもと違う雰囲気に戸惑っていると。彼女はこう言った。
「私が諦めたいことあるって言ったら、ハルは聞いてくれる?」