17.Milky way
依頼人への結果報告を行う場所は、決まって部室。けれど、今日は違った。
「悪いな。こんなとこまで来てもらって」
放課後の遅めの時間。俺と部長、そして高座が向かっているのは、学校敷地の隅――桜の木の下。三度訪れることとなった場所。
「それはいいんだけど……この先に何かあるの?」
「ま、着いてからのお楽しみってことで」
どうやら、天川先輩がいつもの場所でスケッチをしていることを高座は知らないらしい。
「それ、私も楽しみにしていいのかしら?」
後ろを歩く部長が、小声で訊いてくる。
「……いいですよ。それはそうと、ありがとうございます、俺に任せてくれて」
「気にしなくていいわ。晴人くんがどうやって諦めさせるのか、私も気になるところだから」
部長には、今回の結果報告を俺に一任してくれとだけ言ってある。
「言っておきますけど」
部長はきっと、俺が高座にきれいさっぱり諦めさせるのを期待しているのだろう。だけど。
「俺はただ諦めるだけの結末なんて、させませんから」
「……そう」
ほどなくして俺たちは草むらを抜ける。桜の木が一本だけ立つその場所に。空も、地面も、木の葉も、辺りのものすべてがまるで自分の色を忘れたみたいにオレンジ一色。今まで来た時とは全く異なる姿を見せていた。
「こんなところ、あったんだ」
目を丸くする高座。俺の隣に立った部長も、静かにこの景色を眺めている。
「高座。結果報告の前に、会ってほしい人がいるんだ。そのために、ここに来てもらった」
「宵山君……?」
眉を寄せた部長が俺の方を向こうとしたその途中、その動きは停止した。
桜の木の下。俺たちの方に向かって伸びる大きな影の中を見て。
そこに佇む、もう一人の美術部員の姿に。