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14/60

14 もっと知りたいな

 パンジーは自身の居室で、あらかじめ書き出していた原作情報と自身のメモを見比べていた。


(やっぱり、おかしい)


 原作においては存在しなかった設定が、今の世界では多数出現している。大部分は些末なもので、ゲームや設定資料集において描写しきれなかっただけ、という可能性もある。

 しかし、あの山火事が原作でも存在したならば、物語の舞台はこの国なのだから規模的にプレイ時点においても影響を残しているはず。でもそのような描写はなかったし、資料集の国土遠景でも焼けて年数の経過していないハゲ山は無かったと思う。

 記憶にある国土遠景と手元にあるこの国の地図を見比べてみると、()()()()他の山に隠れて見えない角度にその山があったようだ。


「……不自然過ぎる」


 不自然と言えばバレットちゃんの境遇もそう。

 各地を転々としているという設定、炎の魔力を恐れられているという設定はあったけど、薄く光る体という設定は無かった。また、使用する魔法の種類に金属魔術と油魔術が増えていた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()な重要設定が発生している。


「未発見の隠しルート。続編。アペンド。ファンディスク。リメイク。没設定。二次創作。何かしらの理由で設定が追加された……?」


 そうだとすると、この先も原作設定にはない出来事にも対処しなければならない。

 情報が不足する事、情報が食い違う事、どちらも大きな懸念要素となりうる。


「……ま、これ以上考えても分からないわ☆ローズに伝えるだけにしとこ〜っと☆」


 パンジーはメモを仕舞うと、この矛盾に気付くきっかけとなった自勢力の戦力をまとめたメモを見た。

 バレットちゃんの使用魔術が増えていて違和感を感じたのだ。


 わたし☆ タピオカ/陽魔術/風魔術/木魔術/重量操作/肉体強化/マナ潤滑化/その他汎用魔法一通り

 ローズ ベクトル操作/月魔術/氷魔術/水魔術

 ウォルナット 肉体超硬化/肉体強化/雷魔術/汎用防御魔術

 バレット 自己再生/炎魔術/金属魔術/油魔術


「こうして見ると、ローズの事もまだ全然知らないなあ……」


 ここに書き出してあるのは私が知っている魔術技能だけ。

 実力的に考えれば、使える魔術はもっと多いはず。


「もっと知りたいな、ローズのこと……」


 そう呟くとパンジーは頬杖を突いた。

 十秒後、どこぞのネットスラングのような自身の発言が恥ずかしくなり赤面して机に突っ伏した。



 ★★★★★★★★★★★



「ローズさん、盗賊達はどうなったんですか?」

「ああ、それなら。窃盗行為だけ報告して放火は伏せましたので、一定期間の投獄だけで済むかと」


 彼等を庇って死んだあの罪人に免じて、死罪や断足等の可能性がある放火罪は避けた。

 そう告げるとバレットさんは安堵した。


「……良かった」

「お優しいんですね」


 屋敷での彼女自身の処遇にしても、食客(しょっかく)として迎え入れてもいいというパンジー様の提案に対し、それでは自分が納得出来ないから侍女の一員として加わらせてくださいとバレットさんは断固譲らなかった。

 本当に出来た人間だ。


「……私は優しくないので、見つけ次第全員殺そうと思っていたんですけど。私よりもお嬢様とバレットさんの方が優しかったみたいですね」

「そ、そうなんですか……」

「……」

「……」


 気不味い。画面の中ではなく同じ世界に生きている彼女は、あまり性格の良い人間ではない私にとって眩し過ぎる人間だった。なので拗ねて嫌味を言ったら、思ったより刺々しくなってしまった。

 しばらく沈黙が続いた。


「……ぉ……」

「何か聞こえません?」


 ……誰かを呼ぶ声?


「……ぉず……」


 近づいて来る。


「ロ〜〜〜〜〜ズ〜〜〜〜〜!!!!!ぶべらっ!!!」


 外から猛スピードで飛んできたパンジー様が窓に思いっ切り激突した。


「「は????????????????」」


 パンジー様は手足を広げた間抜けな格好でズリ落ちていった。いやこれ何???


「……あっ、ここ2階ですよ!?」

「……ヤバッ!」


 慌てて窓を開け1階の屋根の上からパンジー様を回収した。

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