スレッド4 ヤンキーは結構本気でした。
久しぶりです。生きてました。忙しすぎて続きかけてませんでしたが続きます。
「俺が、お前に恋愛を…教える?」
童貞で恋愛経験もない俺が?
無理じゃね。とは心の声。しかしそんな言葉を口に出せるはずもない。
「そうだ、あのネカマをしていた時のお前の女性の演技。とても素晴らしかった。とても男性が書いてる風には思えなかったからな」
固まっている俺をよそに植野は続けた。
「女の私よりもずっと女心がわかっていると思うんでな」
頼むよ。と両手を合わせて申し訳なさそうに言ってきた。
「か、かわいいな」
ぴきっ
関節が外れる音がした。
「何言ってんだお前ッ!」
見れば手首が少し青くなってしまっている。この一瞬で俺は手首を極められかけたらしい。このままだと俺の手は壊死確定だ。
「女の子はな、そんな風に相手の関節を極めないんだぞ」
慌てて握った手を離し少し心配そうな目で見つめられた。
「わかったよ」
仕方ない。今更恋愛経験なんてないとかそんなこと言えるような状況じゃない。当たり障りない事教えて満足してもらうしかない。
「俺がお前に恋愛を教えてやる」
腰に手を当て後ろに太陽を背負って宣言してみた。きっと植野からすれば俺に後光が差しているように見えているに違いない。覚悟を決めた瞳で植野が訊ねる。
「恋愛ってなんなんだ?」
いきなり核心ッ!!!
「……植野はどう思う?」
数瞬の間の後俺は質問を質問で返すことで自らの防衛に成功。そのまま畳みかけるべく言葉を紡ぐ。
「わからないよな。俺もまだはっきりと言えることではないんだが、恋愛って教えてもらうもんじゃないと思うんだよ。例えばある異性の事を考えると思考がまとまらないとか、何か普通と違うような感情が出てきたり」
俺だってわかんねえよ。だって付き合ったことないし。年齢=彼女いない歴の俺なのだ。どっかの雑誌で見たうろ覚えの情報をそれっぽく言ってみた。植野はカバンから手帳を取り出して必死にメモを取っていた。時折下がってくる髪をかき上げてる姿を目に焼き付けて俺は言葉を続けた。
「そういう相手、いままでいたか?」
植野からもそういう話を聞きだすべく振ってみる。うーーーんと考え込む植野。
しばらくの沈黙のあとおもむろに開いた口から出た言葉は、
「居なかったわ。今まで一人も」
強いて言えば、
「掲示板でネカマのお前に出会った時は少し興奮したかな」
何をおっしゃいますか突然。
「どういう興奮?」
「いや、あの、やっとちゃんとした女の子になれるのかもと思って…」
俺のはやとちりも良いところだ。恥ずかしすぎる。照れ隠しもそこそこに今後について話した。とにもかくにも植野も俺も恋愛を語るにはまだ早いと思った。
「まずは言葉使いだ。ちょっと丁寧に話してみよう。あと相手にお前って言うのは出来るだけ我慢しようぜ」
「それじゃあたしはお前のことなんて呼べば…あッ」
あわてて口をふさいだ植野。適当な呼び捨てで良いぞ。
「俺は植野って呼ぶから」
「わかった。これからよろしくな…し、詩音」
なんと変な頑張りを見せた結果か、下の名前で呼んできた。これは破壊力が高い。一撃で俺のHPを削ってきた。初めての意識的な呼び捨てに耐えられなかったのか、植野は俺を突き飛ばし走り去っていった。とりあえず俺の命日は今日じゃなかったようだ。帰るか。と床に置いていたカバンを手に取り屋上をあとにした。正確にはしようとした。本来鍵がかかっているはずの屋上の鍵を開けたのは植野だ。当然鍵を持っているのは植野。俺は持ってない。閉める術がない。つまり学校に誰かが屋上に侵入したとバレてしまうわけだ。
「…どうしよう」
俺は逃げた。明日は明日の風が吹く。なんとかなるさと言い聞かせ、背中に流れる冷たい汗を気にしないふりをしながら。
ひさびさ開いて続き書きたくなったので書いてみました。前後おかしかったら修正します。