スレッド3 懇願してきたのはヤンキーでした。
数年ぶりの連載再開です。ハンターハンターかよ。あとがきにいろいろ書いてるんで暇だったら見て下さい。
午後の授業二時間分を虚ろなまま過ごし教師にはどうしたどうしたと心配され
「日本の明日について考えてました」
なんてどこぞの西郷みたいな事を口走りドン引きされながらも頭の中では件の彼女のことで一杯だった。
死ぬのかな。死ぬんだろうな、俺
休み時間を利用して購買で買った便箋に遺書を簡単にしたためてみた。忙しく海外を飛び回って家に居ない両親あてではなく仲の良い弟に宛ててだ。
俺の死んだあと、PCは何も見ずに速やかに物理破壊してくれ。
集めていたグッズは全て(R18なものも含めて)売り払ってくれ。
金は全てお前にやるから。後生だ。
こんなもんでいいだろう。死ぬ覚悟はできてないがそろそろ放課後だ。バックレてもいいが明日から不登校一直線コースは避けたい。
はぁぁぁぁ
いやでも大きなため息が出る。机に突っ伏したまま顔が上がらない
「どうしたん?」
竜王が声を掛けてきた。
「どうもこうもないぜ。今から玉砕覚悟のバンザイアタックを仕掛けにいくんだ」
あながち間違ってもいない気がする。
「何言ってんだお前、自殺でもするんか?悩みならこの僕が聞いてあげようじゃないか」
ピキッ
「昼のヤンキーにシメられるんだよ、助けてくれよ」
がばっと顔を上げるとそこにはもう誰もいなかった
野郎逃げやがった…
HAHAHA、面倒ごとは勘弁だね
なんて心の声が聞こえてくる気がする。幻聴かもしれない。小学生時代から幼馴染なあいつの考えは手に取る様にわかる。しかし向こうも俺のことがわかっているかと言われるとそうではなさそうだ。頭はいいがそういう所が抜けている。あふれるため息を隠すこともせず俺は屋上へと向かった。普段の学校生活で赴くことのない鍵がかかっているはずの空間。なぜか鍵は開いていてあまり力の強くない俺の力でもすっと開いた。整備がきちんと行き届いているようだ。そんなことはどうでもいい。あたりを見回すが植野は見当たらない。
「う、うえの…サン?」
恐る恐る呼んでみる。大声でも出して誰かの目を引いてしまってはたまらない。教師から説教を食らうのだけは避けたい。
「…っちだ」
彼女の声が聞こえたような気がした。だが蚊の鳴くような小さな声で、上手く聞き取ることが出来なかった。
「ん?植野…さんか?」
ぐい、と掴まれた腕の先には名前を呼んだ彼女の姿。
少し赤らめた顔、太陽に照らされて輝く黒髪
「美しいなぁ」あ、心の声漏れちゃった。
「な、お前何言ってんだッ」
うろたえる彼女の顔の顔はたぶんサーモグラフィで見たらきっと真っ赤なことだろう。
「ご、ごめん」失礼なことは言っていないがいきなり褒められたらびっくりするだろう。素直に謝っておくが吉だ。ここでは一度選択肢を間違うすなわち死だ。一回たりとも間違えてもならないのだ。でも間違わなくても死なのかもしれない。
「い、いや。こちらこそ…ありが…とう」
ここは落ち着いて。
「それで俺はどんな殺され方をするんだ?」
「はァ?」
地雷を踏みぬいたかも知れない。
「別にとって食うわけじゃないわよ。なんの為にアンタを呼んだと思ってるのよ」
お互い前回会った時とは少し立場が違うせいか、口調がイマイチぎこちない。だがとりあえず今日が命日にならずに済みそうで良かった。先ほど吐いた数多くのため息たちが祝福してくれている気がする。しかしそれでも疑問は残る。
「どうして俺を呼んだんだ?」
うん、俺って一人称の方が植野と話す時にはしっくりくる。
「掲示板のことよ」
俺が使っていた掲示板はフレンド機能というものがあり、お互いにいつログインしたかわかるようになっていた。
「昨日別れてからログインしてなかったじゃない」
「そういえばそうだな」
昨日帰ってからは放心状態というか掲示板に入れる心境ではなかった。日課のエロ動画漁りも自粛したほどだった。それにしてもあんな出会い方をしたのにあの後掲示板に当然のようにログインしたのか…
「お前すごいな…」
「?」
いえ、なんでもありません。
「まぁ俺は別に元気だよ。死んだりしたわけじゃない」
死は覚悟してましたけど。
「心配はありがとな、用事はそれだけか?」
それじゃ、と階段へと続く扉の方へ歩き出した
「ま、ちょっと待ちなさいよ!」
まだ話は…という声を背中で聞きながらドアノブに手を掛けたその時
「うわっ」
両肩を掴まれ強く後ろに引かれた。恐らく植野が俺を掴んだのだろう。力の加減が出来なかったのは焦っていたせいか。そのまま俺の足は床を離れ…
ジャーマンスープレックスッッッ‼
いやおかしいおかしい!てか痛い!
何故か俺は植野からジャーマンスープレックスを掛けられていた。固い床に頭蓋をしかと打ち付けてしまい身動きも取れない。
「はっ…すまん」
慌ててホールドを解く植野。危うく事故で死ぬところだった。死因ジャーマンスープレックスなんて書けるわけがない。頭にできたコブをさすりながら植野を見る。
やってしまった、と顔に書いてあるように見える。故意ではないようだ。無意識にスープレックス掛ける女を他には知らないが。
「いや、まあ生きてるから大丈夫だ…」
それで話ってのは?と固まっている植野を促す。
「掲示板でのことを周りにばらさないで欲しいんだ」
なんだそんなことか。きょとんとしていると彼女は話を続けた。
「掲示板のことを知られていない今でさえ友達も彼氏もできないというのにあんな掲示板のことを知られたら終わりよ。死ぬしかないわ」
「安心してくれよ、俺からバラすことは絶対しないから」
心中されたりしたらたまらないしなんていう心の声を抑えながら答える。
「ありがとう!やっぱり詩音はいいやつだな」
手を握られてしまった。嬉しいけどちょっと痛い。でも嬉しい。
「詩音は恋愛経験豊富なんだろう?」
なにいってんだ?童貞なめんなよ?
「いy」
「私に恋愛を教えてくれないか?」
俺に…それ頼む……?
お待たせしました。二年以上ぶりに続きを書きました。遅くなってすみません。私昨年からVtuber(Vsinger)として活動を始めました。このサイトのことは完全に忘れておりました。たまたまネット小説を朗読したり紹介したりしているVtuberさんと通話しているときにこのサイトの存在を思い出しまして当時使っていたメアドを思い出して入れてみたところなんとこの小説を発見しました。しかも評価がついて感想までついているではありませんか。
これは続きを書くしかない。そう思い再び筆を執りました。まぁPCワードで書いてますが。
そんな感じでまたちまちま書いていきます。ブックマークをくれた約9人の皆さん。今もアクティブなのかわかりませんがありがとうございました。あなた方のおかげでもう一度書こうという気持ちになれました。読んでくださる皆様にマリアナ海溝より深い感謝を込めて。
2021年3月3日 ばってら改め詩川天楽