スレッド 1 待ち合わせ場所に居たのはヤンキーでした。
はじめまして。初の連載であります。駄文ではありますが楽しく書いています。コメントなんて頂ければ嬉しいです。
突然だが。俺は今ネカマをしているッ!
マンガやアニメであればどーんと爆発の効果音でも派手に流すところだろうが今はそれどころじゃない。
―何故かって?それは簡単な話。
掲示板で知り合った自称四十五歳独身の男性、吉田権左衛門(仮名)と会うためだ。と言っても会うのは俺じゃなく俺がネカマするために作ったキャラクター北川優子(ロリ顔Fカップ148センチ大学生19歳)だ。我ながらどうしてこんなことになったのか待ち合わせの時間まで少しあるから思い出してみる。
「面白い掲示板見つけたぜww」
部活の先輩がその掲示板を教えてくれたのが1ヶ月ほど前だったろうか。都道府県毎に分けられたその掲示板は最近出来たばかりで規制も緩くちょっとアダルトな会話も楽しめるサイトだった。その日は先輩と一緒に釣った女の人とやらしい話をしてとても楽しかったのを覚えている。そこから何を間違ったらネカマになってしまったのか……そうだ。何も知らなかった俺が本名の詩音でコテハン(固定ハンドルネーム)を登録したところ何故か女と間違われて男がたくさん寄ってきたからだった……。その不思議な現象に妙な興奮を覚えてしまい、つい男性だと言えないまま会話してしまっていた。流石にそのスレでは途中でボロが出てしまったがネカマが止められなくなったのはその時のようだ。今日は先輩に言われて釣った人を写メってくるミッションだったのだが・・・
「来ないな……騙されたか」
正午を知らせる鐘が鳴った。回想シーンの間に待ち合わせの時刻は数分ほど過ぎていたが自称四十五歳は現れない。待ち合わせの場所に指定していたワン公前に目をやるが女性や若い男性こそいるもののお目当ての人はいないようだ。
そこで俺は掲示板経由で手に入れた権左衛門のメアドににメールを送る事にした。
「今どこに居ますか?ずっと待ってますよ♡」っと
ご丁寧に♡まで付けて送信。ピロリと携帯が震え即座に返信が来たようだ。いったいどんなタイピングをすればこのスピードで返信出来るのだろうか・・・
「もう座って待ってるよ!早く来て♡」
なんだと?自称四十五歳がもう座って待ってるだと?俺は目を擦りワン公前のベンチに目をやるが女性しか座っていない。
「いやまさか、そんなことは」
少しの不安を感じながらも再び権左衛門にメールを打つ。
「今すぐ行くので立ってて貰えますか♡」
ベンチに座っていた女が立ち上がった。あたりを見回しキョロキョロしている。
―どうする。女じゃないか……え?自称四十五歳男性だったよな?
このまま帰るのももったいないし。
「顔くらい拝ませてもらおうかな」
木陰から出て少し身なり整えベンチに向かって歩き出す。相変わらず女はあたりを見回し人を探している。俺でない誰か……だろうが。
さりげなく近くまで歩いていきメールを送って見ることにする。その距離わずか5メートル。
「着きました、手を振って貰えますか♡」
ブンブン
「やっぱりかよおおおおおおおッ」
突然叫んだ俺に街ゆく人から白い視線が突き刺さるが気にしていられない。まさかあんなことやこんなことした自称四十五歳が女性でしかも……
「めちゃくそ可愛いんやけどッ!!えええええ!」
ちらりと黒く輝く美しい髪の間から見えた目はとても澄んでおり道行く男性の視線を集めていた。おっといけない方言が出てしまった。
「貴女があの、自称四十五歳の吉田権左衛門さん?」
恐る恐る声を掛けてみれば肩ビクリと震わせこちらを見て。
「お、お前が自称19歳の優子さんだったのか?」
少し怯えた目で恐る恐る話しかけてきた。あ、はい。
見とれて思わず生返事してしまった。
「嘘つき・・・」
いや、そうだけども
「お互い様ではないでしょうか?」
「!」
不機嫌そうな顔でのたまう美人。そんな顔さえも映える彼女は周りを気にするようにあたりを見回して不安そうな目付き。今にも変態です!と叫ばれてもおかしくない。お互い様と言えばそれ迄だがこういう場合男性は負けることが確実だ。
「こ、ここじゃなんですし、
ちょっとそのへんに!」
どうですか?と誘えば不機嫌な顔を崩さないままこくりと頷き俺のあとを着いてきた。
それは傍目から見れば恥ずかしがりの彼女を連れた彼氏に見えなくもないわけで。
―視線が痛すぎる
道行く人の殺気をバリバリに受けながら俺は近くの小洒落た喫茶店に入る。
「は、初めまして。俺は大友詩音と言います」
掲示板で知り合ったとはいえお互い身分を(性別まで)偽っていたため自己紹介をすることに。
「私は、植野櫻子よ。17歳だけど・・・ってなにニヤけてんのよ」
頬を染めながら名乗り再び不機嫌な顔に戻り三白眼で俺を睨んできた。
あ、口調キツめの人だこの人。顔に似合わないな。
ん?うえの・・・さくらこ?
「もしかして雀坂学園の?」
「おう」
「マジか・・・」
同級生でした。ハイ。マスクの下に牙を持ち気に入らない奴を粛清してるなんて冗談半分で噂される有名なヤンキーでした。学校の情報に疎い俺でも1年生の初日にセクハラしてきた教頭にハイキックかまして謹慎になったのは知っている。対する俺は特に目立つ訳でもない幽霊部員だ。たまに部活に行っても倉庫で先輩と喋ってるだけだ。向こうがこちらを認識してなくても無理もない話だ。知名度で言えばそれこそ月とすっぽんと言うものだ。あるいはそれ以下か。
「どうした?」
いきなり高校名出されてキョトンとしてこちらを覗き込んでくる。どうする俺。言うべきか?
「いや、なんでもない。ちょっと考え事してたんだ」はい、チキりました。
「そういえば、お前はどうしてあんなことを?」
あんなこと?それは俺が誕生したことですか?
首をかしげて人生を振り返っていると
「素性を偽っていたことだバカ」
あ、それね。
「それしかないだろう」
まぁそうですけど。かくかくしかじか・・・
経緯を話しているうちに死にたくなってきた。
なんだろうこの恥辱。
「とまぁ俺はこんなわけなんだが、君の方はどうなんだ?」偽ってたのは俺だけじゃない
「くっ・・・私は学校でよくわからんが避けられてしまっていてな」
えぇ、知ってますよ。
「中学時代の女の友達も別の高校に進学してしまって友達がいなくてな」
顔を赤らめながらも驚きの悩みを告白してきた。
「私が普通に誘ってみたんだが悲鳴をあげて逃げられたんだ。だから仕方なく掲示板のお世話になったわけだ」
動機がか、可愛いんですが・・・
「俺でよければ、話くらい聞くぞ?どうせこれっきりだろ」
わからないけど。同級生だし
「そうか!ありがたい!」
さっきまでの暗い顔が一転してひまわりのような笑みを浮かべ・・・
6時間後
「でな!その相手がよ・・・」
スイッチの入ったヤンキーの話を聞き続け時計の短針は180度ほど動いただろうか。辺りはすっかり暗くなっていた。カラスがゴミを探して飛んでいる。
「今日はありがとな!詩音」
「お、おう。こちらこそ」
今日一番の笑みを見せ手を振って駅へと入っていく彼女。
「あーなんかよくわからんが楽しかったw」
家路について気づいた。明日以降学校で彼女が俺を認識した日が俺の命日になると。
「どうしよう・・・」
地獄ルート開始です。
初めまして。鯖寿司と申します。
スレッド1 待ち合わせ場所に居たのははヤンキーでした。いかがでしたか?
第1話ということでキャラクターは2人だけです。2話以降友達やらなんやら増やしていく予定です。
一応校正したつもりですがここがおかしいとかお気軽にご指摘ください!
書き直します。
読んでくれた貴方に驚きと笑いを。
鯖寿司でした。