[中学1年生編] 第1章 『いつも通りの。①』
空が一点の曇りもなく澄み渡る中、桜の舞うある日。
おろしたてで まだ少し大きい制服を身に纏い
南 亜心は この春から通う中学校の門をくぐった。
少し緊張しているのか、手と足が同時に出てしまっているが本人は気づいていない。
「あこーー!!同じクラスだったよー!」
どこにいるか気づけないほど遠くで叫んでいるのは、
亜心の幼稚園からの親友 土屋美蕾だ。
嬉しそうに美蕾のもとへ駆け寄った。
「ほんとに!?みらいが一緒なら安心だな~」
「でも担任の先生 怖そうだった笑」
「えっ、一気に不安になったじゃん」
「まあまあ、クラス表見ようよ笑」
クラス発表の紙を見ながらいつも通りの他愛もない
会話を交わしていると、
亜心はよく知っている顔がいる事に気づいた。
無意識に、声を掛けていた。
「西山!クラス離れたね~残念!!」
「...へぇ、よかったな。 んじゃ」
会話噛み合ってないんですけど、という亜心の叫び声も
届かず、スタスタと行ってしまった。
西山直幸は、亜心の小学校からの友人だ。
といっても会ったらたまに話す程度で特別
仲がいいという訳でもないが。
一言で言うと真面目で無口でたまに不思議な、秀才である。
小学校の頃のようないつも通りのやりとりをして、
入学式が始まった。
亜心が式の間食べ物のことばかり考えていた事は
誰にも内緒である。
式が終わり、教室で学活の時間が開始された。
今日は男女1名ずつの学級委員長を投票で決めるようだ。
クラスメイトをまだよく知らないのに、とクラス中がザワついている。もっともだ。
だがそんな生徒をよそに着々と進んでいく集計。
男子は亜心とは違う小学校出身の森下という人らしい。
いかにも という感じで納得する。
そして、亜心の名前が呼ばれた。
亜心は思わず立ち上がりほぼ放心状態で、
理解するのに時間がかかっている様子だ。
(南亜心って私?名前が呼ばれたって事は私学級委員?みんなの前でしゃべったりするの?)
席を立ったまま延々と考え、頭がぐるぐるしている。
人見知りの亜心は、ずっと皆から視線を集めていることがちょっとだけ怖くなってきたようだ。
まさか選ばれるなんて思っていなかったし、こんな自分がやっていける自信がない と焦って主張するが、担任は
「選ばれたのだから責任をもって全うしろ」
の一点張りだ。
(えええ.....私には重荷過ぎる...プレッシャーが...)
こうして亜心の中学校生活初日は、嬉しさと不安に終わった。
___②に続く!
はじめまして、鈴木いずみと申します。
登場人物の心情を丁寧に書いていきたいので
長くなりますが、どうぞお付き合い下さい。