鬼ヶ島2
いよいよ鬼ヶ島の最深部へと踏み込む一行。
広場には、若い女の子達が集められていました!
そして全員が武装しています。
「……貴方がももたろうね。悪いけど……貴方を倒さないと、私達が酷い目に会わされるの! だからお願い! 大人しく……」
予想外な展開に、ももたろう達は後ずさりします。
なんと鬼達は卑劣にも、女達を利用してももたろうを倒そうとしているのです!
「ちょ、ちょっと待ってください! 私は貴方達を助けにきました! 鬼はどこに居るのですか!」
ももたろうは女達の説得を試みます!
しかし女達は引きません。ジリジリとももたろうへと近づいてきます。
「貴方に敵う筈が無いわ……さあ、このまま帰るか大人しく私達に倒されるか……選びなさい!」
「わん! なんと情けない女達なり。己の命可愛さに、ももたろうの勇気を踏みにじるか」
犬の言葉に、女達はガチ切れします。
「黙ってろワンコロ! こんな子供に何が出来るのよ! 大人しく帰りなさい!」
しかしももたろうは帰るわけには行きません。
というか、帰りの船に乗りたくありません。船酔い辛いから。
「私は……ここで帰るわけには行きません! もっと大きな……揺れの小さな船を手に入れるまでは!」
ももたろうは勢いよく抜刀します!
それに驚いて女達は一瞬引きますが、状況は変わりません。
ももたろうは女達を斬る事は出来ないのです。だからと言って帰るわけにもいきません。
「ケーン! おい、女ども! ここにいるももたろうも女の子だ! 鬼にこう伝えろ! とびきり可愛い女の子が来たってな!」
キジの言葉に、ももたろうは耳を疑いますが、それは作戦だと理解すると髪を結っていた紐と解き、鎧の類いを脱ぎ捨てます。
「そうです、私は女です。だから……鬼に会わせてください! 私一人で構いません!」
女達は戸惑いました。
しかし、リーダー格の女性は更に声を張りあげます。
「そんな事出来る訳ないでしょ! 女の子なら余計に鬼なんかに会わせられるワケ……」
その時!
女達の後方の大きな扉が開きました!
そして中から巨大な鬼が姿を現します!
「オーン! 我は鬼なり。ふむ、確かに可愛い女の子なり! よかろう! 入るがいい! 我ら鬼全員で歓迎しようぞ!」
ももたろうは服の中に小刀を隠し持っていました。
それを見つからないように、鬼の言葉に頷きながら一人で大きな扉へと入っていきます。
残された動物達と女達は呆然としていました。
「ば、バカ! バカ! なんでアンタ達、あの子を連れてきたのよ! 鬼に敵う筈ないでしょ?!」
「わん! だ、ダイジョブ、だ、ワン。も、ももたろう、ああみえて……けっこう強い……? し?」
動揺しまくる犬。
それはキジとゴリラも同様でした。ダジャレではありません。
「間違いなく殺されるわ……あぁ、もう……何で素直に帰らないのよ!」
「ケーン! たぶん小舟に乗りたくないからだナ……」
その時!
鬼達の咆哮が中から響いてきました!
「ウオオオオオォ!」
「ガァァァアア!」
「ギョオオオオ!」
その声に怯える女達と動物達。
明らかに鬼達は怒っています。きっと、ももたろうが抵抗したのでしょう。
「キー! お、鬼……ってあんなにデカかったんだな……ももたろうなんて簡単に踏みつぶされてしまうんじゃ……」
鬼はガン〇ムくらいありました。
太刀打ちできる筈がありません。
ももたろうはまだ、可愛い女の子なのですから。
「わん! 何を弱気になってる。ももたろうがそんな簡単に……」
「わんころ……あんたは分かって無いのよ……どうして鬼達が女を集めるのか……」
リーダー格の女は語り始めます。
鬼達の目的を。
「鬼達は女の生命エネルギーを吸って強くなるのよ。あのももたろうって子が……どれだけ強かろうと、生命エネルギーを吸われたら元も子も無いわ。生命エネルギーは生命そのもの。私達も、生命エネルギーを吸われないまいと必死に……」
「ケーン! 生命エネルギーって単語、流行ってるのか? アンタの中デ」
その時、再び鬼達の咆哮が!
「あぁああぁぁ!」
「うおおおお!」
「もおおおお!」
再び聞こえる叫び声に、女達は怯えます。
三匹の動物達も怯えます。ガクブルです。
「もうダメだわ……きっと、ミンチにされて……ハンバーグにされてしまうんだわ!」
「わん! それだけは勘弁して頂きたい」
犬はももたろうから貰ったハンバーグを思い出します。
それはキジも同様ですが、ゴリラは貰ってないので得に何も思いませんでした。
「……静かになった?」
全員が生唾を飲みこみつつ、大きな扉を見つめます。
すると……小さな影が扉から出てきました。
出てきたのはももたろうです! 無事だったんですね!
「わん! ももたろう! 大丈夫か?! 何があったんだ?」
ももたろうは何処か不機嫌でした。
そのまま犬を無視して、女のリーダーの所へと歩み寄るももたろう。
「あ、貴方……無事だったのね……!」
「はい……鬼達から全て聞きました。貴方が本当の”鬼”だったんですね」
突然の言葉に、女達も動物も驚きます。
リーダー格の女は、苦笑いしつつ後ずさります。
「な、何言って……」
「おかしいと思ってました。私を本当に帰したいなら、平八郎が居る所で待ち伏せする筈です。なのに貴方達は最深部に居た」
「ケーン! ももたろう、平五郎だゾ」
ももたろうは少し頬を赤らめます。
しかしそれどころではありません。
「だ、だから何よ! ここ居たのは外に出られないからで……」
「貴方は鬼達に指示されて、と言いましたよね。外には平五郎が居るのに、鬼達はわざわざここで貴方達に待ち伏せしろと言うでしょうか」
リーダー格の女は足元をフラつかせながら倒れます。
「つまり、鬼達に指示されたのではなく、今回の事は全て貴方の指示だったんです。そう、全ては……ハンバーグが食べたいがために!」
一同は「(。´・ω・)ん?」と首を傾げます。
どういうこと?
ももたろうは、腰に装備したお弁当箱を開けてハンバーグを見せます。
「これが全ての元凶です。鬼達は、私が島に入った時点でハンバーグの存在に気が付いた。それを貴方に報告し、支持を仰いだ」
「わん! ちょっと待てももたろうよ。鬼達にその女が指示を仰いだって……その女は何者なんだ?」
ももたろうは床に落ちていた日本刀を拾い上げると、リーダー格の女の喉元へと突きつけます。
「この女は……いえ、こいつは女じゃない! そうでしょう! 先代桃太郎! かつて犬、キジ、猿と共に、この鬼ヶ島へとやってきた男!」
次回こそ! 激闘の最終回です!




