猿
鬼ヶ島へと向かう途中、山小屋を見つけた一行は、今日はそこで泊まる事にしました。
「ケーン! ももたろう、空から眺めてたら温泉を見つけたぞ。入るカ?」
「温泉? おお、入ります!」
ももたろうは温泉に入った事がありませんでした。
早速準備し、キジの案内の元、温泉へと向かいます。
ちなみに犬はお風呂嫌いなので山小屋でお留守番です。
「おおー……温泉だー!」
「ケーン! ももたろう大喜びだナ」
ももたろうは服を脱ぎ捨て、温泉へと手を付けてお湯加減をみます。
なんとも丁度いい感じです。
しかし、キジは呆然としていました。
「ケーン! ももたろう……お前……女の子だったのか?! お、俺の前で平気で服脱ぐんじゃなイ!」
「え? べ、べつにいいじゃないですか。キジさんに見られても私はべつに……」
そのまま温泉へと入るももたろう。
極楽気分です。思わず歌ってしまいたくなります。
「遥~♪ 彼方の~♪ 焼き牡蠣が~♪ 食べたい~♪」
ももたろう、何歳かは不明ですが渋いですね。
私も食べたいです、焼き牡蠣。
「キー! ホタテも~♪ 食べたい~♪」
その時、ももたろうの歌に誰かが合わせてきました!
突然の事に驚き、警戒するももたろうとキジ。
すると風で湯気が飛ばされ、黒く巨大なシルエットが姿を現しました!
「キー! 牡蠣~♪ ホタテ~♪ サザエ~♪ アボガドは苦手~♪」
「……ご、ゴリラ……」
ももたろうは歌う巨大な影を見て目を疑います。
温泉に入っていたのは……ゴリラさんだったからです!
「ケーン! おい、猿は?! サブタイトルにも猿って書いてあるだロ! 猿を出セ!」
ゴリラはキジの言葉に鼻で笑いながら、ゆっくりと立ち上がりももたろうへと近づいてきます。
「キー! 細かい鳥ウホめ。ゴリラだって猿の仲間ウホ。そして人間もサルウホ。つまり、俺とももたろうちゃんは……結婚できるウホ!」
「ぁ、ごめんなさい、無理です……」
一瞬でフラれるゴリラさん。
ションボリしつつ、温泉へと潜ります。
「ケーン! 男が一回フラれたくらいデ……情けないゴリラだナ」
キジの言葉に、ゴリラは再び立ち上がります!
「キー! 俺は猿だウホ! こうなったらももたろうちゃんに、良い所見せるウホ! というわけで俺も鬼ヶ島へ連れてってくれウホ!」
なんで名前はおろか、目的地まで知ってるんでしょうか。
もしかしてストーカー……
「キー! ち、ちがうウホ! ただコッソリ……ついてきただけ……」
「ケーン! それを世の中じゃストーカーっていうんだゼ。やりすぎるとウザいだけだゼ。男はさり気無い気遣いが出来ればいいんだゼ」
「キー! し、師匠! どこまでも着いていくウホ!」
予想外な戦力を手に入れたももたろう。
今回、ハンバーグは消費していませんね!
さあ、いよいよ鬼ヶ島へ突入です!




