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青い悪女  作者: たんぽぽ
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子兎

「あ、もしもし、岩本さんですか?こんばんは片山です。例の件なんですけどいい子2人捕まりそうです。えぇ、未成年じゃないです。20歳ちょうど。大学2年生かな?なんかお金がほしいらしいんです。1人はまぁ、受けは良さそうですね。もう1人はちょっと地味かな。でもマニアとかに受けそうですね。」


私は久しぶりに岩本さんにいい報告ができたことに喜びを隠せなかった。


「はい、わかりました。明日2人を連れていけるようにします。では。」


私は電話をきると、誰もいなくなったテーブルを鼻歌を歌いながら雑巾で拭いていく。


岩本さんは先輩で、昼は大手企業に勤める妻子もちの幸せなエリートマンだ。しかし夜はウリの斡旋業幹部をやっている。私がバーをやっていられるのもこの人のおかげだ。一流大学に通っていた私は就職活動で初めて人生の挫折を体験した。受けた会社はすべて不採用。いっそのこと企業を立ち上げようとも思ったが、お金を金融から借りる度胸もなく、ただ残酷な時間がさっていくのを身に感じていただけだった。

そんなとき大学のサークルの先輩だった岩本さんが手を差し伸べてくれた。憧れのバー経営の話だった。もちろんバーにくる女性の中からいい子をウリにまわすよう言われている。それが岩本さんの第一の狙いなのもわかってる。それについて利用されていると人は言うが、それでも私は手を差し伸べてくれた岩本さんを尊敬していた。



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「こんにちは。昼にくると、やっぱ雰囲気変わるんですねぇ。」


大学の講義の休み時間だという美香子と綾奈がやってきた。二人とも昨日の夜に増して昼に見ると大学生感があった。


「こんにちは。CLOSEってかかってたから入りにくかったでしょ。よく来てくれたね。今日は昨日言ってた仕事についての話なんだけど。」


美香子が期待にあふれた瞳でこっちを見る。綾奈はまだ少し疑っているようだ。


「本当にそれって怪しい仕事とかじゃないんですか。あまりにも待遇いいし。怪しい仕事なら私ちょっと無理かも。」


綾奈がぐいぐいとせめてくる。しかし私はこの手の対応に慣れていた。


「怪しい仕事?そんなの大学生に進めないよ。ただ、最初は、バーで働いてもらうんだけどね、一応バーも夜の仕事だから時給いいんだよ。まぁ、この仕事実は人気で、君たち二人以外にも働きたい子いるし、その子たちでもいいんだけどね…。でも、やっぱ、バーで働いてもらうにはそれなりにかわいい子がいいわけ。で、お金に美香子ちゃん困ってるみたいだし。」


少し綾奈の顔がほころぶのが見えた。この手のきゃぴきゃぴした女子は遠回しに自分のことを褒められるのを喜ぶ。また、ほかにも働きたい人がいるということをいうことで、この仕事に貴重感を覚えることが多いのだ。


「美香子ちゃんはどうする?やる?やらない?」


美香子はこちらをじっと見つめた。


「やりたいです。お願いします。」


お辞儀をし、こちらにもう一度目線を向ける。あまりにも美香子のほうはすんなりと話が進んだ。ここで私は少し違和感を覚えた。昨日会ったばかりのバーの店長をここまであっさりと信じてついてこようとするとは。たいていの女の子は一度疑うのだ。

私の気持ちを察したように綾奈は答えた。


「美香子田舎から出てきてるから警戒心うすすぎてちょっとびっくり。都会は怖いんだよう。本当もっと警戒心もちなよ。あ、私お手洗い借りていいですか?」


綾奈はいつも美香子を馬鹿にしたように話す。きっと見下しているのだろう。


「トイレはそっちの奥。その壁を右に行ってすぐだから。」


「はぁい。」


典型的なきゃぴきゃぴ女子だ。とりあえず美香子が田舎出の青臭い少女だということが分かりこの違和感に合点がついた。


そして私は次の仕事へ移る。美香子の目を盗みながら、綾奈がトイレから出てくるのを見計らっていた。

自然を装い私はトイレのほうに向かう。するとちょうど綾奈がでてきた。私は少し姿勢を崩し綾奈の耳元でささやいた。


「実をいうとね、美香子ちゃんより綾奈ちゃんのほうがほしかったんだ。綾奈ちゃんかわいいし…。これは美香子ちゃんには秘密ね。」


まんざらでもない綾奈のようすをみて、私はすぐにバーカウンターへ戻った。

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