3話
久々の投稿です。
「あ? んだてめぇは? どこ中だごらぁ~!?」
目の前の怪物から殺気がこもった言葉が私に叩きつけられる。
(み、みつかった!? 何故、私は悠長にあの化け物を眺めていたのだ!? あぁ、なんで私は直ぐにでも逃げなかったのだろうか……)
竜が自分の行動の愚かさに上空の雲一つない青空を遠い目で眺め、現実逃避をしているが目の前の存在の言葉で強制的に現実に引き戻される。
「おぃ? そこのトカゲ、てめぇだよ! 聞いてんのか!?」
先程の獣を爆散させたであろう力が化け物の右腕に集まってきている。ここで行動を起こさねば、あの獣と同じ命運を辿るであろうと竜は考え、思考をフル回転させながら行動を起こした。
滑空状態から地面に勢いよく降りるが、はたから見れば墜落したかの様にしか見えない着陸である。降り立ったその姿はまるで干物のように地に体と翼を広げており、竜の威厳など何処にも存在しない姿をキョウの前に晒していた。
『ま、待って下され! 私は貴方様と争う気など全く御座いませぬ! だからどうかその身に宿した恐ろしい力をお鎮め下さいませ!』
※※※※※
(……え? こいつ今喋ったよな? なんか頭の中にいきなり声がしたってことは念話みたいなもんか? つかそんな目で見るなよ…まるで俺が苛めてるみたいじゃないか)
怒りに任せて目の前の竜を威圧していたが、まさか喋るとは全く思っていなかったキョウは自分を侮蔑の目で見たイノシシの怒りが燻っていたのだが、予想外の出来事に困惑してその怒りは露と消えてしまっていた。
目の前の竜はその大きな体をピクピク震えさせながら土下座のような姿勢で「命だけは助けてください」といった風で脅えまくっている。
「おい、敵意や害意がないのはわかったから顔を上げてくれ、まるで俺がお前を苛めているみたいじゃねぇか……」
先程まで殺気を叩きつけながら恫喝していた者の台詞とは思えぬ様な言いざまである。もし第三者がこの場にいれば、「いや、苛めてたじゃん!」と声を張り上げているであろう。
『あ、ありがとうございます!」
竜はがばっと頭を上げて、返事をおこない「助かった~」とほっとしている様子を見てキョウの頭の中ではまさかゲームの中で最強種である竜をここまで脅えさせてしまった事に罪悪感が芽生えていた。
「あ~…なんかすまんな、八つ当たりみたいな事して……でもお前仮にも竜だろ? そこまで脅えることないと思うんだがな~…」
『いえ、失礼ながら貴方様の力は私では測りきれない程強大なものです。私は竜の中でも中位辺りの種族ですが、もし私より上位の竜がここにいたとしても即逃走するか私と同じような行動を取ると思われます』
(おいおい、竜にここまでよいしょされるってどんだけヤバいんだよ、俺。ゲームじゃ俺より強いプレイヤーなんて腐る程いたぞ)
クラフターである自分はゲームの中では戦闘などモンスターを狩って素材を手に入れる為の手段であって目的ではない。素材を得る為に戦闘するのであって、素材が他の手段で手に入るのであれば戦闘などしたくはないのだ。
ギルドの倉庫や市場で素材の在庫を潤沢にしている時など、ギルドの全員がホームに引きこもってクラフト三昧をしている程である。
「ま、まぁ言いたいことはいろいろとあるが、少し聞きたいことがあるんだがいいか?」
『はい、私のお答え出来る事であれば何なりと』
「まずは…ここは雪山だったはずだ、だが目の前には森林が広がっている。これはどういう事かお前にはわかるか? 後、お前は氷雪竜であってるよな?」
『それに関しましては……残念ながら、私も先程長い眠りより目覚めたばかりですのでどうやって雪山が森林になったのかまでは分かりかねます……ただ推測なのですが、恐らくは私と言う存在が眠りに付いた為ではないかと愚行いたします。それと私はその種族で間違いありません』
成程、恐らくこの場所の頂点であるこいつが封印? されたことで支配がなくなり気候が変わったって所かね? 難しく考えてもわからんし、他の事を聞いて情報を集めた方がいいな。
「ふむ、お前の話は理解した。まだいろいろと聞きたい事はあるが、先に聞いておかなければならない事がある」
『はぁ……なんで御座いましょうか?』
竜は次に来る質問にとても嫌な予感がした。したが、ここで逃げ出したのでは目の前の男がまた殺気をまき散らしてきそうなので、大人しく聞くしか選択肢はなかった。
「お前これから俺と一緒に来るか、ここでまた永眠するか、好きな方を選んでくれ」
『…………………………え?』
ちょこちょこ書きながらディビジョンやってました。