1話
やっと本編スタートです。
「・・・え?」
俺は今、理解不能な光景を目の当たりにしている、俺は確かに雪山の洞窟にクラフト素材を求めてその洞窟に入ったはずだ。
それなのになぜ……目の前に【森林】が広がっているんだ!?
今まで洞窟内に居た事もあり、太陽の光が目に突き刺さる。
ゲームならば洞窟から出てきたとしても自動で視界が調整されるはずなのにである。
この時、キョウは目の前の景色に混乱していたため、そんな単純な事にも
気づけないでいる状態であった。
(落ち着け俺、冷静になるんだ……こういう時は素数を数得るんだうん!無理、
わけわからん)
パッチでも当てたのか?いやでも雪山が森林に変わるなんて流石にあの運営
でもやるわけがない。
それにさっきから気になっていたがまさか……
「……これは、草の匂いか?」
確かに味覚や嗅覚を実感出来るシステムはこのゲームに実装されている。
だが、それは料理や薬品といった小規模なデータ量だからこそ可能だったはずだ。
間違ってもフィールドのような只でさえ多いデータに匂いを実装するとなると莫大なデータ量になる、そんな事をすればワールドの容量がパンクしてしまう。
(マジでどうなってんだ?確かにこりゃ草の匂いだ、間違いないそれに……)
そっと足元を見降ろして大地を踏みしめて体重をかけ、そこから足をどかした。
そこにはしっかりとした足跡が残っている、ここまでは良いのだが……
「足跡が消える気配がねぇな……それに感触がリアル過ぎる」
考えられるとすれば、いくつか候補があるな……
①ゲーム中にアップデートが有り、運営の超技術で現在に至る。
②先程の未鑑定アイテムの影響で別のワールドに飛ばされた。
③俺はゲーム中に死んでしまい今見ている景色は夢の様なもの。
④異世界転移!やったねキョウちゃん!
(①はデータ量や技術的な面でありえんな、②も匂いや感触の件があるのでない、③はありそうだが匂いや感触がリアルに実感出来るのでない……と思いたい、じゃあ④か? ラノベみたいに? それこそ有りえないだろ常考)
「う~ん、とりあえず運営に連絡取れるか試してみっかね」
そう言うと手を空中で横に振りメニュー画面を表示させようとするが……
「……でねぇ、いよいよ④の可能性が高まってきたな、洒落にならんぞこれ」
耳に付けているギルドに転移出来るイヤリングを使ってみても発動しない。
アイテム関連を取り出せないかも確かめようとした時、頭の中で警告音が鳴ったような気がして辺りを見渡していると一匹のイノシシ?のような生物が現れた。
何故?が付いているかと言うと……
「……でけぇ、イノシシにしか見えんがこれどっかで見た事あるな~
どこだっけ?…………ッ!○ッコ○ヌシ様だ!!」
目の前の巨大な白いイノシシはキョウを舐めるように見つめているそれはまるで主婦が食材を吟味しているような目で。
「ッッ!?」
その時初めて気が付いた、こいつは俺を「喰う」つもりだと直感で理解出来た。
理解したからこそ急いでその場を離れようとしたが全てが遅かった。
「ギャオオオオオオオォォォォォオッォォォンッ!!」
咆哮が響き、その音と恐怖で体が硬直してしまい動けないで居るとそれは目の前まで迫っていた、そう目の前まで。
「・・・・・あ」
俺は迫ってきた白い塊にそのまま跳ね飛ばされた。
※※※※※
その日はごくごく平凡な気候であり、特に変わったことなどない本当に平凡な日だった。
にも関わらず私は目覚めた、最強と呼ばれる竜種に生まれ、霊峰と呼ばれる天険の地にて最強の存在として君臨し続けていた。
私にとって、私以外の生物など取るに足りない存在でしかなく、腹が減ればその辺の獣どもを腹いっぱい食べれたし、眠くなれば寝る。
ごく稀に愚かにも私に挑んでくる矮小な人族もいたが羽虫を潰すように攻撃を加えたらあっさりと死んでいった、何故よわき種族が私に挑むのかが理解出来なかった……
しばらくしてまたしても人族が私の前に姿を現した、愚かな事を……なぜ人族は短い生しか持たないのに死に急ぐのか、理解出来ぬが挑んできたので是非もない。
(か弱き種族よ、せめてもの情けに安らかに逝くがいい)
だが、その日は今までの様にはいかなかった、以前ここで倒れていった者達とは明らかに違う
存在である、尻尾で薙ぎ払ってもブレスで攻撃を加えても目の前の人族はなかなか倒れない。
さらには向こうの攻撃が硬き鱗に守られた私の体に着々とダメージを与えてくるのである。
だが、大勢いた人族たちも次第に倒れ始めるもの達が増えていく、初めてだった……本能で逃げなければ死ぬと頭の中で警鐘を鳴らすことなど今までにない経験だ。
だが私は最強の存在だ、矮小な人族に背を向けることなど有ってはならない、この者達を倒して私は最強として君臨し続けるのだと……
激闘の末、私の前に立っている人族は三人だった、私もかなりの深手を負っているがこの者達を殺すことくらいは造作もないだろうと思っていた、だが人族の一人が杖を天に掲げて何かを詠唱しはじめた。
(ッッ!? あれは止めなければ不味い!)
私は全力を持って詠唱をしている者に襲い掛かるが残りの人族がそれを阻止しにくる。
目の前の者達を忌々しく思うが認めよう、この者達は『強い』だが退くわけにはいかぬ、何としてもこの者達を倒し、生き残ってやる!
しかし、突撃するもその全ての攻撃を阻止され、詠唱が完了される。
竜の回りには光り輝く文字がドーム状に広がり、竜を包み込むように展開されていく。
そして魔法が発動され、宙に輝く文字たちがより激しく光り輝き、弾けた。
そして竜は永き眠りにつき、支配者がいなくなった山は徐々に緑を取り戻していった。
※※※※※
(私はあの時、あの者達に敗れ眠りについた……だが何故眠りから覚めたのだ?)
竜は考える、魔法の効果が切れたのか、それとも魔法をかけた術者が死んだのか、はたまた魔法を発動させた魔導具が壊れたのか……理由はわからない、だが周りの景色を見渡せばそのどれもが有りえると言う考えに至った。
(余程の月日が流れたようだな、あの天険の地がこうも緑で覆われようとは……)
感慨にふけっていると耳元で怒鳴られたような凄まじい咆哮が耳に入ってきた。
竜は飛ぶ、その咆哮の主の正体を確かめようと……
そして竜は見た、白く大きな獣と地に倒れふしたエルフの姿を…………
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