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三題噺  作者: どらぽんず
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じゅっこめ:夏休みのハプニング


 ――どうしてこうなった。

 見上げれば、目に染み入るような青さが眩しい晴れ空がある。

 視線を下ろして周囲を見れば、遮るもののない日光を照り返して眩しく光る木々の緑が映える。

 新鮮な空気の中に草木の青臭い――という表現が正しいかは知らないが――特徴的な匂いも感じる。

 周囲は色々な準備に忙しく行き交う人たちでいっぱいだ。

 広い場所できゃっきゃとはしゃぎながら遊んでいる姿もあれば、その脇で今日の寝床になるのだろうテントをせっせと設置している姿もあった。

 かくいう私もその一人だ。今も急かされるままに、じゃがいもやら人参やらの皮むきからなにやらやらされている。

 今日の夕食で食べるカレーの材料を処理しているところだ。

「手が止まってるじゃん。早くしないと夕飯食いっぱぐれるぞー」

 隣に立っている親戚の――従兄弟なのかなんなのか、盆や正月に祖父母の家にいくと見るような縁の人間で、それなりに気のいい兄ちゃんという感じの人物が、自分も作業を続けながら私に向かってそう言った。

 ……来たくて来た訳じゃない。

 そう言いたくて仕方なかったが、実は彼もそうなのかもしれないし、迂闊なことを言う訳にはいかない。なにせ、今日一日か二日を共に過ごすことになるのだ。変な雰囲気を作るような行為は避けなければならない。

「……はぁ」

 溜息を吐いて、止めていた手を動かして作業を再開した。

 なんでこんな炎天下の中、私はキャンプなんかをしに来ているのだろうか。

 いや、なぜかは判りきっているか。大人が無理やり連れてきたからだ。

 思い返せば大した話でもない。

 夏休みに入って日々を怠惰に過ごしていて、今日も今日とてそう過ごそうとしていたときのことだ。

 リビングでのんびりテレビを見ていると、突然チャイムの音が鳴った。

 うちの両親は割と付き合いの多い人間で、平日休日を問わず客人が来ることが多かった。今回もそうだろうと思い、仕方なく自室に引っ込もうとしたのだ。

 応接間とやらがある家ならリビングでいつまでもだらだらできたのだろうが、一般家庭にそんなものはない。客を招く場所はリビングだ。そして、大人の付き合いに子どもが関わるのは大抵の場合煙たがられる。

 そして、やれやれと思いながら自室に引っ込もうとしていた途上でのことだ。突然両親が着替えを強要してきて、嫌がる私を車に詰め込み発進してから約二時間後、この場所に到着したというわけだった。

 どうやら夏休みの過ごし方を見かねた両親が、強制的に生活リズムを正させようと画策した結果らしい。ついでに盆の集まりも済ませてしまおうとか考えていたようで、キャンプ場には見た事のある顔ぶれが何人も集まっていた。

 そういえば以前にもこんなことがあった気がするなーと、あれは何年前だっただろうかと遠い目で考えながら作業を進めていると、

「こういうところに無理やり連れて来られるって、嫌だよなぁ」

 横合いからそんな言葉がかけられた。

 こちらを気遣っての言葉だろうか。何の意図でそんな言葉をかけてきたのかわからず曖昧に頷きを返した後で、無言で通すのもなんだなと思ったから、先ほどの言葉を適当に否定しておくことにした。

「まぁいつものことですし、いいですけどね。それなりに楽しめる部分もありますから。

 ただひとつ、残念なことがあるとすれば、今日見る筈だったドラマが見れなくなったことくらいですよ。平日の夕方にやってるドラマの再放送、見てたやつ、今日が解決編だったんですよねぇ」

 結末は見たことがあるから知っているけれど、折角見続けたのだから、どうせならちゃんと見たかったものだ。そう思って溜息を追加すると、

「あ、もしかしてあれ? ――ってやつ?」

 彼の口から見ていたドラマの名前が出てきて驚いた。

 驚きのまま、勢いで視線を彼に向けると、少し嬉しそうに笑っていた。そして、

「君も見てたんだ。実は俺も見てたんだよね。んで、同じように楽しみにしてたんだけど、こうして連れて来られちゃってさぁ。まさか同士が居るとは思わなかったよ」

 笑った声でそう言うので、私も釣られて笑ってしまった。

 妙な偶然もあるものだ。

 そう思ったら、お互いの口が軽くなったようで。

 その後、夕食の準備から夜寝るまでの間に、ドラマの話をとっかかりにお互いの趣味の話で盛り上がった。

 別れ際にはメアドやボイチャのアカウントを教えあい、キャンプから帰った後もそこそこに交流を続けている。

 人の縁とはどこから生まれるかわからないものだ。

 もっとも、わざわざ自分からそういう機会を持とうとは思わないけれど。面倒くさいし、色々。

 だって。

「ひー痛いぃい」

 日焼け止めもまともに持たされないままキャンプに行ったせいで、シャワーがすごい沁みるんだもんなぁ!

 こういう、肉体的な被害が出ちゃうから外に出るのは嫌なんだよ!

「はーあ」

 やっぱり家に引き篭もってるのが一番だ――そうでなくても、せめて自分のタイミングでこういうことはやらせて欲しい、とそう思いながら自室に引っ込んだ。


今回使用したお題は以下の三つ。

1)カレー

2)応接室

3)解決編

※三題噺お題ジェネレータより。


流石に推理物を書く技量はなかったです……。

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