護道幸助が異世界に行くまでの経緯
5/25 改訂しました
日本って国はさ、なんでこんなに廃れた村とかがあるわけ?いや、そりゃあ外国だって―特にヨーロッパとか―日本より国土面積広いしそういう村多そうだけど、にしたって「廃村=邪教が流行ってたり呪われてたりするところ」っていうの、異常に多くないですかね。
なんでそんな風に安直な考えをするのかって?
だって、俺が行くところ、どこもかしこも化け物とか幽霊とか邪教徒とかばっかりなんですよ。てか、今来てるところがその廃村なんですよ。
「ハァーッハッハッハ!愚民共よ!我らが神の為、その身を捧ぐ事ができるのを誇りに思うがいい!」
ほら、今もアホみたいに大声上げて邪教徒のおっさんがなんかやってるし。うん、なんか黒いローブの装飾が他のより派手だし、多分アレが教祖サマなんだろう。俺の経験上、あの手の派手そうな奴は大抵カルト集団のトップなんだ。
俺が今いるのは、教祖サマ(仮)―とりあえず仮定ってことで―が高らかに演説してる祭壇がある洞窟の中の、祭壇にやや近い岩陰。滅茶苦茶臭い。アレだ、中学の化学の実験で嗅いだ硫化水素。あの腐った卵みたいな臭いに似てるんだ。それに腐ったチーズを入れたらこんな臭いになるんだろうか。
そして教祖サマ(仮)の後ろに、俺と一緒にこの廃村に来た奴ら三人が磔にされてる。あいつら、キャーキャーと逃げ回ってはぐれたと思ったら、いつの間にか捕まってたらしい。今も磔にされた女―多分同級生の女子だ。あんまり覚えてないけど―の一人が、猿ぐつわを嵌められているのに泣きわめいている。
残り二人の男はといえば、イケメンなほう―あいつは同級生。これは覚えてる―は冷静に事の成り行きを見守ってて、もう一人のチャラそうな奴―なんかケバいギャルと一緒にいた知らない人―は磔を解こうと暴れもがいてる。流石イケメン。これがゲームだったら多分あいつが主人公なんだろうな。
他にも何人もいたハズなんだが…どこか独房か牢屋に閉じ込められているんだろうか。
さて、なんでこんな事に巻き込まれ、俺はこんな岩陰に隠れているのかと言えば、だ。何となく話したほうがいいって俺の第六感辺りが俺に囁いてるから、とりあえず状況の整理がてら思い出すとしよう。
中学を卒業して数日、俺はルンルン気分だった。何せ、「どうせ卒業式の日辺りに何かしら巻き込まれるに違いない」とばかり思い込んでいたから。最後に巻き込まれたのは、大体四ヵ月前。奇跡だった。
ああ、四ヵ月もの間何事も起きないなんて、幸せだ。幸せすぎる。俺の巻き込まれ体質は、中学を卒業して消え去ったんだな!
まぁそう思ってた結果がこれだけどな!
卒業式の後、俺は他の卒業生の中で付き合いのあった何人かに、「卒業旅行に行かないか」と誘われた。
…思えば、あの時断っておけば良かった。分かってたはずなんだ。こういう記念旅行だとかに行くと、ロクな事にならないって。
普通はさ、「そんなホラー映画みたいな出来事、一生に一度あるかないかだろ。てかありえないだろ」って言われる。そう、オカルトだとか信じてないような人にとっちゃ「ありえない出来事」さ。…けど俺に言わせれば、「ありえないって言葉自体ありえない」。考えても見ろ。この世の中、人間の知ってる事なんて、宇宙から見れば1%にも満たないかもしれないんだぞ。そんで、その残りの99%は、間違いなく人間がこれまで「ありえない」と断じてきたものばっかりだ。そして俺は、その99%の「ありえない」と言われてきた出来事に巻き込まれてきた。だからこそ言える。「ありえない事なんてあるわけがない」。どんな事だって起きても不思議じゃない。それが世界ってもんだろ。
…そう、だから別に、ラブコメなんてこの世に存在なんてしてないなんて、そんな事は考えちゃいない。そんな事に巻き込まれた事がないからって、そんな風には考えない。むしろそっちのほうが現実味がある。じゃあなんでラブコメ的展開に巻き込まれた事がないのとか、そういう事は訊くな。悲しくなる。
閑話休題。
なんでも、ある同級生がミステリーツアーっていうのを見つけたらしく、俺達はそれに参加する事になった。如何にも怪しさ満点だが、旅行会社が絡んでるのにそんなヤバそうなトラブルに巻き込まれるわけがないって、その時は高を括ってたんだよ…。
そしたら案の定、バス内に睡眠ガスを撒かれて眠ってたと思ったら、気付いたらカルト教団の皆様に囲まれて。他の奴らより先に起きた俺はなんとか皆を起こそうとしたけど、これがまたぐっすり寝てるんだわ。
まぁ正直言うと、この手の展開に似た事が大体六回ぐらいあった。眠らされてどうたらこうたらってやつ。こちとら伊達に睡眠薬盛られたりしてないんでね、耐性かなんかできてたんだろうと思う。
しかし起きてそのまま出ていくわけにも行かないから、「まぁどうせすぐに脱出できるだろ」と起こすのを諦め、座席の下に潜り込んで隠れてやり過ごそうって思った。いやぁ、キツかった。何回やっても、狭い所って苦手だ。体は痛いわ窮屈だわで。しかしながら、奴らに立ち向かうという選択も自殺行為モノだ。俺だってバカじゃない。自分の命が一番大事な、どこにでもいる普通の人間だ。
結果的にカルトの連中をやり過ごす事に成功した俺は、途中色々とやらかしつつ、ようやく奴らの祭壇に辿り着いたってわけだ。何をやらかしたのかと訊かれたら、その、まぁ…丁度置いてあったスコップで邪教徒の一人を後ろからこっそりぶん殴ったり、何故か置いてあった手ごろなダイナマイトを仕掛けておいたり、とにかく色々だ。
…なんでああいう奴らはいつ見ても爆弾を常備してんだろうか。
「さぁ…いよいよ我らが神―ヴェーガ=ダラを降臨させる時!」
教祖サマ(仮)がそういうと、洞窟にいた邪教徒連中が一斉に沸く。
しっかしヴェー…なんとか。聞いた事もない名前だな。まぁどうせ勝手に名前付けてるだけだろう。カルト教団が呼び出そうとしてる神様が神様だった試しなんてないんだ。
そんな事を思いながら、鞄に忍ばせておいたマッチと、導火線の付いた玉を取り出す。ダイナマイトはさっき使い切ってしまったが、何故か置いてあったのをそのまま拝借してきた。多分花火か何かだろう。燃えて爆発しそうなら、それでいい。あとは、時が来るのを待つだけだ。
マッチを一本取り出しておき、鼻をつまみながらチャンスをうかがう。
教祖サマ(仮)が振り向く。しめた、今だ!
すかさず、マッチに火を点けようとするが、これがまた思ったように点かない。全く、授業でやる回数よりも点けてるってのに、なんでこういう時は火が点かないんだ。
そうこうしている内にチラッと見てみると、教祖サマ(仮)がナイフらしき刃物を手に、磔にされた女に近づいている。女も悲鳴を上げたいんだろうが、モゴモゴとしか喋れていない。女は涙を流し、流石のイケメンもたまらず叫ぼうとするが、こっちも猿ぐつわを嵌められている。
あ、チャラ男は気絶してら。
そうやって観察してると、やっとマッチに火が点いた。あとはこれを導火線に点けて、投げるだけ。
そのまま振りかぶり、狙いを定める。狙いは―信者の群れの真っ只中だ。
そのまま思い切って投げると、少しばかり肩を痛めてしまった。だが、痛がってる場合ではない。
いきなり何か投げつけられたもんだから、連中もビックリして、何事かとワラワラと集まりだす。
いきなり信者達が騒がしくなったものだから、たまらずそれを咎める教祖サマ(仮)。
と、突然小気味よい破裂音と共に、煙と火花が飛び散る。更に騒々しくなる信者達。何人かは煙を直接吸い込んで咳き込んでいる。
これぐらい混乱を招けば、あとは叫ぶだけでいい。
「逃げろーッ!奴らが攻め込んできたぞーッ!」
奴らって誰だよって言われても、俺にも分からん。だが新興宗教だのカルト集団なんて、敵を作ってナンボのもんだ。警察の事と思うかもしれないし、敵対しているカルトの事だと思うかもしれない。ようは心当たりがあるかどうかだ。
そして予想通り、連中は慌てふためいて外に出ていく。同じような黒い奴らがどっと外に殺到して数秒後、今度は外から派手な爆発音。それに続いて、連続して爆発音が響き渡り、この洞窟にも熱風が押し寄せる。タイミングバッチリだ。逆に不安になりそうなぐらい順調と言ってもいい。あとは教祖サマ(仮)をどうにかするだけだ。
再び鞄の中をまさぐり、ここぞという時の為に持ってきておいた十徳ナイフを握り締める。武器としては心許ないが、まぁ突き刺せば痛いだろう、うん。それに相手は人間なのだから、隙を見つけて足払いを掛けて下に叩き落とすか、最低急所を狙えばいい。
そして、ぐぬぬと唸る教祖サマ(仮)が再び磔にされた三人の方をむいた瞬間、岩陰から飛び出す。幸いにもまだ爆発音や信者の騒ぐ声がするから、足音に気付かれる事もない。
狙うは、脚。祭壇へと続く階段を一気に駆け上がり、奴の脚に飛びつく。そうすれば、奴の体が勝手に傾いて、下に真っ逆さまって寸法だ。
だが、駆け上がったのが不味かった。まさか階段を踏み外すとは。
「オゴォ!」
飛び出したのは、翼竜の物真似よろしくの酷い悲鳴だ。いや、悲鳴なのかこれは。下手すればもっと別の何かが飛び出してたかも…想像するだけで嫌になる。
そして、そんな情けない俺に、狼狽してた教祖サマ(仮)も流石に気付いたらしい。クソッタレめ。オマケにナイフもどっかに行っちまった。
「ほほぅ。さては貴様の仕業だな…?」
「そーですねー」
訊かれたので律儀に即答してやる。バレたからって慌てない。いちいち慌ててちゃ、ホラーな状況じゃ生きていけないからな。にしても鼻がいてぇ…丁度階段の角にぶつけちまったよ…。
「覚悟しな。すぐにテメーを恐怖のどん底に叩き落としてやっからな」
ついでに野郎を指さし、自信たっぷりにホームラン予告。勿論そんな事できる自信なぞない。所謂ハッタリってやつだ。
…まぁ、鼻が痛すぎて顔を上げられないから、何ともマヌケな事になってるが。
「ククッ、抜かしおる。貴様のような小童如きに何ができようか」
ああ、もう。その台詞聞いたの何度目かね!どうしてこういうカルトの連中は長とか関係なしに人を見下しまくるんだ。あいつら、相手が誰だろうと見下すけど、今みたいに「貴様のような」ってつけられるとそりゃムカッときますって、ええ。
そりゃまぁ、俺は主役ってタチじゃ断じてありませんがね。むしろ名無しのモブとか背景に映ってるエキストラがお似合いだと自覚してる。いつだって事態を収拾するのはイケメンだとか美少女だとかそういう奴らで、俺はただ自由気ままに色々うろついてたり色々やってるだけだし。今みたいに正面から黒幕と対峙、なんて一、二度あったぐらいだし、それだってたまたま居合わせただけとかそんな感じだった。
それに俺に何か取り柄あるかって訊かれたら、ただ「ビビりにくい」ってぐらいだし。むしろホラー映画とかゲームとかの方が怖いぐらい。…ああいうのって、音楽あるから怖いだけなのかな。今度ミュートでホラー映画見てみよう。
「間もなく我らが神―ヴェーガ=ダラが降臨する!たかが愚民の一人、しかも貴様のような輩に、神の降臨を阻止できようか!」
「知ってた?そういう台詞吐いてた奴ら、皆失敗してるんだってさ」
これはマジだ。ウワッハッハって大笑いしたり、クッソドシリアスにキチガイめいた野望をほざいた奴らは大体失敗する。大雑把に言うと、悪役と言うだけでもれなく失敗する。たまに成功しそうになるのもいたけど、何故かは知らんが結局失敗する。ああ、バール的なアレ投げたら偶然解決したパターンもあったな。
まぁとにかく、この世に悪が栄えた試し無しっていうのは本当の事らしい。どうせこいつらの野望とやらも潰える…ハズだ。
「フン、他の教団がどうかは知った事ではない。我々に祝福があれば、それでよいのだ。それに!」
ああ、いってぇ。ようやく顔を階段から引っぺがせた。
そうやって鼻を摩りながら教祖サマ(仮)のほうを見ると、だ。ありゃなんだ。鈍色の…球?変な模様が付いてる。如何にもオカルトの品ですよって感じの。
「ククク、これこそは、ヴェーガ=ダラの偉大なる御力の一端を発揮する神具!その力、特と見るがいい!」
そう言うと、何やらぶつくさと呟きだす。ああ、呪文唱えてんのね。いるいる、そうやってなんか呪文唱えて攻撃してくる奴。でも、悲しいかな。この手の奴って、大体自滅するのがオチなのよね。さぁて、今回はどうなる事やら…。
「ムゥーーーーン…セイッ!ハァッ!」
あ、なんか怪しい霊媒師みたいに力込めだした。しかも良く見たら、球が真っ二つに割れて…中からなんか見えてる。黒い蛇?がなんか何匹もうねってるように見える。
で、そこまで観察してて、今更思うわけだ。
あれ、もしかしなくても今のって滅茶苦茶隙だらけだったんじゃね?
「あちゃー、やらかしたわこれ…」
やっちゃった、やっちゃったよホント。いつもならほっといてもどうにかなるからって余裕ぶっこいてたけど、まさかマジで成功しそうとは。これ呪文呟いてる間にどうにでもできたじゃねぇか。何やってんだよ俺。別にゲームのイベントじゃあるまいし。どうしよう。マジで成功してたら、俺もいよいよお終いじゃない?
嗚呼、今まで育ててくれてありがとう、お父さん。心の中で告白してもアレなんだけど、実はお父さんの煙草をこっそり捨ててたの俺です。だって煙臭いし、健康に悪いし。あとお母さん。お父さんにも内緒のヘソクリの隠し場所知っててこっそりいくらかお金抜き取ってました。何円かとは言わないけど。あとそれで、さっきまで持ってた十徳ナイフとか、あと色々便利グッズ買いました。仕方ないよな、いつだって命懸けだし。
「フフフ…どうだ、恐ろしいか?恐ろしいだろう!これこそがヴェーガ=ダラの力よ!」
ええと、あと懺悔する事あったかな…実はちゃっかりお釣りネコババしてた…なんか違うな。他には…
…って、ん?いつまでたっても、痛みも何も襲ってこないんだけど?
「…あのー、それ、ちゃんと成功してるんです?」
「成功してるに決まっておるであろう!さぁ、恐怖せよ!」
…なんか変だぞ。教祖…もうオッサンでいいや。あのオッサン、すごいドヤ顔であの半分に割れた球をこっちに差し出してるけど、なんかビームとかエクトプラズム的なアレとかが飛び出したりするんじゃないの?黒い蛇がうねってるだけにしか見えないのって、俺の空目?強いて最初と違いを挙げるなら、さっきより一杯蛇が出てきてるって事ぐらいなんだけど。
「…なんも起きないんだけど。神具とやらって機械みたいに故障すんの?」
「な、何ィ!?貴様、何故恐怖しない!?こんなにもおぞましき物を見て!」
「それ、おたくらの神様敬ってんの?貶してんの?」
マジでどっちなんだっての。あれか、シリキなんちゃらみたいに恐怖し敬えっていうやつか。うっは、おっかねぇ。
「そ、そんな、バカな…貴様…一体…」
お、急にオッサンの顔が青ざめた。「予想外です」って顔にハッキリクッキリ書いてやがるぜ。
…あれ、なんか黒い蛇が更に増え―
「ウギャアアア嗚呼アアAAAAA―――――!!!!!」
うわ、蛇がオッサンに纏わりついて球の中に飲み込んじまった。どうなってんだあの球。
オッサンが飲み込まれた跡には、何事も無かったかのような静けさが広がり、そしてあの球が火に照らされて鈍く光ってる。
「ふーむ…もしかして、ビビった奴を真っ先に狙う、とか?」
なんだその矛盾。「恐れ、敬え」っていうのが奴らの教えだとして、今した俺の推測が正しかったら、自分から餌になるようなもんじゃねぇか。あ、いや。連中にとってはそれが『救い』って事なのか?
「やっぱ分からんねー、ああいう奴らの考える事は」
そう呟きながらも、俺はある事を考えていた。奴らにも、こんなカルトにのめり込まざるを得ない、『理由』があったのだろう、と。そして、奴らをそんな風に変えたのは、一体何なのだろう、と。
…ひょっとすると、彼らは現代社会が生み出した『歪み』の象徴であり、現代社会の犠牲者だったのではなかろうか。
なーんて、小説の独白みたいな事考えてみたり。もしかして今までの経験全部まとめたら本一冊できるかも。夢は大ベストセラー作家!
「なんて冗談考えてる場合じゃなかった。さぁて、早いとこあいつら助け―」
と、そこで磔にされているであろう三人のほうを見れば、アラ不思議、だーれもいない。そこにあるのは、でっかい十字架が三つだけ。あ、良く見たら真ん中の十字架の下に俺の十徳ナイフが。ラッキー。
「あいつらいつの間に、つかどうやって脱出したんだよ…」
なんやかんや言って、俺いなくてもあいつらだけでどうにでもなったんじゃないのこれ。
十徳ナイフを拾い上げつつ、そんな事を考えてると、不意に目の端で何かがキラリ、と光った。…はて、光り物なんて、あの球以外になんかあったっけ…。
その光る何かが見えた方をみると、あの鈍色の球の近くに、手鏡のようなものが落ちていた。恐らくその鏡面に火の光が反射したんだろう。にしても妙だな。
「鏡?こんなもんさっきまで…」
そう、さっきオッサンが球の中に吸い込まれた直後には、こんなものは落ちていなかったのだ。
とりあえずその鏡を拾ってみる。手に収まる程度の大きさで、非常にコンパクト。コンパクトだけど、デザインちょっと奇抜すぎないか?スクラップ置き場から金属製のガラクタ掻き集めて作ったハンドメイド手鏡って感じだ。
裏返してみても、特に変わったところはない。
「あのオッサンが落としたのか?てことはこれ、ドロップアイテム?いつから俺の人生RPGになったのさ…ん?」
そこまで観察してると、鏡がまた光り出した。…鏡って、ひとりでに光ったりするもんじゃないよな?しかも、なんか変な色に光ってるし。
「おんやぁ?これはどうも嫌な予感がッ」
突然鏡面から迸りだす光に、思わず鏡を持ってない方の手で庇うと、指の先から掃除機で吸い上げられるような感覚が。加えて、体全体が、どういうわけか激しく振動する。それに、意識そのもの、が、まるで、ローラー、で引き、伸ばされ、てる―よ、う――な――――
次の瞬間、俺は宙に放り出されるような感覚に襲われた。