第一話 退屈な日常
まだ異世界には飛びません。多分、次話ぐらいからです。
あぁ、何でこの世界は何もかもが退屈なのだろうか。
毎日変化の無い平和な学生生活を送っている私、影森真奈は毎日同じ事を心の中でそう思い、いつものように学校で先生の退屈な授業を受けている。
この国は変化っというものを嫌っているから、事件やテロ等を起こす事以外はまったく何も無い、他の国が羨み、昔の偉人達が求めていた平和っという状態が常にかれこれ百年以上は続いている。
これは良い事なのだろう、戦争が無いし、人がまるでゴミのように死ぬわけでも無い。
でも、退屈だ。
「おーい、真奈ー! 一緒にお昼ご飯食べよ!」
「……」
「真奈ー?」
「ん? あ、恵美? どうしたの?」
「真奈、いつもボーっとしてるけど大丈夫? もう授業は終わったよ?」
「あぁそう、ごめんなさいね。成績優秀で容姿端麗な生徒会長様はいつも考え事が多いのよ、まったく嫌になっちゃうわ」
私は心配してくれている親友の恵美にそんな軽口を叩いて、彼女の反応を伺う。
すると、やはりというか予想通りというか、少し呆れた感じで私を突っ込んでくれた。
「それを自分で言う? 普通なら他の子が妬みを込めて言う台詞でしょ」
「そうよねー、まあ、冗談だから許して」
「…… あながち冗談じゃないけどね…… あなた可愛いし」
「私は普通よ」
「あなたが普通ならこのクラスの全員が生ごみ以下だと言いたいのかおのれは」
どんだけこの子は被害妄想大きいのよ。
大体、私はただただ生まれた時から今現在まで同じ事しかやっていない本当に普通な女だ。あ、でも一つだけ他の人とは違う普通じゃないのがあったか、割とどうでもいいけど生徒会長って奴ね。
生徒会長になったら少しだけ変化っというものがあるのかな? っと思って立候補してみたんだけど、結局、何も変わらなかった事にがっかりしたのだけれど。
「真奈は本当に恵まれてると思うよ」
「なかなか良い洒落ね、恵美」
「シャレじゃなぁぁぁい!」
「ちなみにどこら辺が恵まれていると思うのかしら?」
「まずは常に平均点98をキープするそのイカれた頭脳! それと、誰もが羨むし男が寄って来そうなその素晴らしい美貌! 黒髪ロングにまるで黒曜石のように輝く凛とした猫の様に細い赤黒い瞳! まるで学校のブラウスがコスプレのように思える程のモデル体型で、女なら誰もが羨む化粧をしなくても美しい真水のような透明感のある白い肌! これで恵まれていないっと言ったら私はこの手で神を殺す!」
恵美のどこか芝居がかった答えに、私は苦笑せざる負えなかった。
「あ! 鼻で笑った! 全く自覚の無い主人公はこれだから嫌なのよ」
「ごめんなさい、だけどあなたの説明で自分が普通じゃないっというのは分かったから。さて、お昼でも行きましょう? じゃないと貴重な休みが終わってしまうわ」
「あー! そうだった! ほら、立って立って! 走って食堂へ行くよ!」
「走るのは校則違反だから駄目」
私は恵美に急かされつつ、彼女と二人で食堂へ向かい、お昼を食べる。
今日の食堂のメニューは、私の好物なざる蕎麦だった。
午後の授業も終わり、掃除と終礼も滞りなく終わった放課後。
私は帰宅する準備を始めている時、隣の席の子達が何やら噂話をしているみたいで、少し鞄に教科書等をしまう作業を止めてから盗み聞きする事にした。
褒められた行為じゃないが、私は他人の話を聞くのが趣味だ。退屈な自分の日常とは違い、たまに彼女達は滑稽な話をする事があるから。それの延長線でニュースも好き。だって、国の動きや事件が分かるから。
「この学校の近くの商店街でさぁ、最近変な失踪事件が多いらしいんだよね。知ってる?」
「いいや?」
「何でも、すっかり寂れてシャッター通りになったあそこを一人で帰ると、消えてしまうんだって。何も痕跡を残さずに」
「え? マジで? あははは、冗談っしょ」
「冗談だったら良いんだけどねー」
ふぅん……?
私は二人の会話を聞き、失踪事件が多い商店街に興味を持った。
明日ちょっと試してみても良いかもしれないと思い、教科書を鞄に全て収納してから私は学校を出る。
今日試さなかった理由は、私には今日、やる事があったからだった。
それからしばらくして。
私は自分の家に着いた。私の家は小さなボロ家で、壁やら床に小さな穴みたいなのが幾つもあるうえ、襖や壁は汚れまくっている。トイレは今時ボットン式だ。どうだ、凄いだろわははー。
私は自分の部屋へ直行するや制服を脱いで、汚れても良いような服に着替える。
それから、前日買っておいた新しいスコップを携え、外に出る。
外を出て十分ぐらい。
近くの草が生えに生えまくった整備されていないうえ、遊具などが無い公園に私はやってきた。
そして、古びたボロ寺の方へ足を進めて、そこに隠していたあるものを取り出す。
それは、黒いゴミ袋だ。
中に入っているのは生ゴミ。そう、血生臭く、どこか腐敗が進んでいるのか酸っぱい臭いをかもし出している。生ゴミ。
私は臭いで顔をしかめつつもそれを放置されてあるボロの台車の上に乗せる。
鼻歌を歌いながら私は茂みの方へ台車を押しながら進み、人気のない場所へ着くと、手に持ったスコップで穴を掘る。
数時間かけて、すっかり周りが暗くなる頃に私はようやく穴を掘り終えた。
久しぶりに重労働をしたせいで、筋肉が悲鳴を上げ、身体中から汗がにじみ出る。
しかし、これで私はあの黒いゴミ袋の存在とおさらば出来る。
私は自分の掘った穴に、外だからか分からないが若干中が蠢いてるような感じの不潔な袋を投げ込んだのだった。
「じゃあね、お父さん」
私は生ゴミになる前の人物の呼称をぽつりと呟き、それから家路に着く。
それから家に入った私はリビングの方へ歩いた。
すると、夕方には居なかった妹が帰ってきており、私の為なのだろう夕飯を作ってくれていたらしく、テーブルの上には料理が並んでいた。
「あ、あの…… お帰りなさい…… お姉ちゃん……」
「ただいま、真理」
「あの…… あれ…… は?」
「ちゃんと処理したわよ、あなたが何も心配する事ないわ」
「お姉ちゃん…… ごめんなさい、ごめんなさい…… 私、私の為に……」
真理は私を見るなり心のダムが決壊するかの如く、わんわん泣き出した。
私はそんな妹に近づき彼女の身体を抱きしめる。
「大丈夫、何も心配いらないわ。あなたは必ず私が守るから」
「うぅぅぅ…… お姉ちゃ…… 警察に…… わたし…… どうすれば」
「警察? ふふ、大丈夫よ。警察が来てもお姉ちゃんは捕まったりなんかしないわ」
「ど…… どうして?」
「だって、お姉ちゃんがお父さんにやったように警察官をやっつけるからよ♪」
私は妹を元気付かせる為に、いつもよりも少し高いテンションでそう明るく言う。
だけど、妹は真っ青な顔で私を見る。
「だ、だめ…… 関係ない人を殺さないで……」
「何で? お父さんは悪者だったのだから、そんな悪者を捕まえないで、私達を捕まえようとする悪者はもうれっきとした関係者だし、同じように制裁してあげないと。だから安心してお姉ちゃんに任せなさい」
「……」
真理は無言で立ち上がる。
そして、何故か彼女はどこか悲哀のある笑顔で私にお礼を言った。
「お姉ちゃん、今までわたしの面倒を見てくれて…… 守ってくれてありがとうね…… だけど、もういいから。お姉ちゃんは殺人鬼なんかにならないで…… これはわたしの一生に一度のお願い」
「え?」
「さようなら」
真理は私に別れの言葉を言うと、私に背を向けて今さっき調理に使っていた包丁を取る。
「真理…… あなた、なにやって……」
私が彼女の奇行に戸惑っているのも束の間、自分の首に包丁をぐっと当てて、勢いよく真横に引くのだった。
一週間に一回更新をめざし、前作と同じように完結を目指します!