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3全裸 : 因縁の宿敵! 株式会社エレクトフル! の巻

このページは「魔装少女マリリン」について書かれた項目です。


魔装少女マリリンとは2015年2月に放送されたTVアニメである。 5人の魔装少女がオーガと呼ばれる怪人と戦う内容で、オーガの体液であるオガ汁を浴びると衣服が溶けるという設定で、毎回全裸になっていたのがBPOに問題視され、あえなく放送を深夜枠へとうつす。 また、苦肉の策としてオガ汁を浴びても溶けない下着、(s)aint clothを身に着けているという後出し設定により、BPOの眼をかいくぐり放送を続けたものの今いち視聴率が伸びず、2クールの予定が1クール打ち切りとなった。 それでも一部のエロゲ原作信者から絶大な人気を得ており、TV未放送分無修正版1話が追加収録されている円盤(BD盤)の売り上げは好調……

「これじゃない! これじゃない!」


 今必要な情報はこれじゃない! なになに…… 少女たちの必殺魔法は2つの言葉を組み合わせたもので、言葉と言葉の間に卑猥なメッセージが隠されている…… うん! どうでもいい! そんなことはどうでもいいからこの状況から助かる術を教えてくれ! じゃないとヤバい! 確実に殺される!


「出来たぞ」

「へ?」

「目玉焼きだ」


 おいおいマジかよ…… 早くね? もう出来たの? まだこっち心の準備できてないんだけど? 今ここで目玉焼きとマソソソ交換したら、確実にヤラれちゃうじゃん! ということは何? 俺の命、イコール目玉焼きってこと? 特売で10個入りの1ケース90円で売ってた卵の内の1個を焼いたコレが? 俺の命は10円の価値も無いの? いやだいやだいやだいやだ! そんなのは絶対に嫌だ! 足掻いてやる! 何がなんでもイチャモンつけてやる! 零細企業を倒産でクビになってからハロワに通い続けて鍛えた俺のメンタリティを舐めるなよ! そうだ! あいつ油ひいてないじゃん!


「ん? 油引いてないよね? あれほど言ったのにコレじゃやり直しだねぇ……」

「ちょうどフライパン上空にさしかかった時、既に油が引いてあるのが見えた」

「え……?」


 うそ? マジで? あの一瞬でそんなとこまで見えてたの? つーか油なんて引いてたっけ…… ああっ そうだ! 引いてた! 思い出したぞ…… フライパンを洗剤で洗いすぎるとテフロン加工がはがれてダメになってしまうから、我が家では油しきっぱなしの中華鍋方式を採用しているんだった!

 いやー よく見てるなー おじさん関心しちゃう! 一瞬で油を引くか引かないかを冷静に分析、判断したわけだ! 実にめざといヤツだ! うん、できるヤツ! なんてできるヤツなんだ! だが俺は仕事ができるヤツは嫌いだ! 

 勘違いするなよ? 仕事のできるヤツが社会人としてやっていけるわけではないんだ。 世の中そんなに良心的じゃない。 仕事のできない奴が仕事のできる奴の足を引っ張る。 そして上司に媚びへつらう。 社会人になれば、そのような処世術をたくさん目の当たりにするんだよ。 俺が貴様に教えてやる! 俺が働いて身に着けた、汚い汚い大人のいびり方ってのを教えてやる! 秘奥義、老害イビリアタックをな!


「んー でも油引いてからって言ったよねぇ? ちゃんと僕の話きいてたぁ?」

「既に引いてるのに、また引いたら油でギトギトになるじゃない」

「そういうことを言ってるんじゃないんだなぁぁ 君は僕の言った手順通りにやらなかったわけだよねぇ!? こっちの指示を無視して勝手な判断をしたわけだよねぇ!? 誰がその判断をしていいって言ったわけぇぇ!!?」

「作ったんだからいいだろ。 早くマソソソ返しなさいよ!」

「かぁー これッだから最近の若い奴はダメなんだよなぁぁ

人の話を聞けっつうんだよ! いいから僕がやり直せと言ったらやり直せばいいの! わかる? わかったら早く持ち場に戻れボケェぇぇ」

「…………」

「なんだ無視か? ハァ…… 上司や先輩に逆らうとか昔じゃ考えられないよ君ぃ? ん?」

「……わかったよ」

「よろしい! それとな、目玉焼きは少し水を入れて蓋をし、蒸す感じで作るとフワフワになるからそう作るように! あと半熟で頼むぞ!」

「……チッ」


 マリリンは舌打ちすると、また冷蔵庫へと駆け出していく。 見たか! 俺の経験と知識を詰め込んだイビリ術! いるんだよなぁ こういう上司! ずる賢くて狸みたいな中年太りしててさ。 で、そういう奴に限って仕事ができない! というか仕事をしようとしない! 「文句言うやつほど何もしない」って言葉があるけど、まさにそれ! 理に適ってんだよな、この言葉! だって文句言って他人に押し付けてれば、結果的に自分は何もしなくていいじゃん。 若い部下は別に指示を無視したわけじゃなく、上司の指示が足りないから困ってる。 それなのに、こういう奴は自分が仕事出来る人間だという勘違いを起こしているから、それを認めたくない。 そして八つ当たりする! 仕事のできる上司というのはムダなところで怒らないし、全員の作業効率を良くする工夫をしたり、フォロー上手だったりする。 まったく! 無駄に先輩風吹かせなくていいから、少しは仕事の手本になってくれよってね! 少しは社会勉強になったかな? 恐いぞー 金銭の絡んだイジメはハンパないぞー 思い知ったか! さっさと目玉焼きを作り直せ! アーハハッハ!

 と、悦に浸っている場合ではなかった。 早くこの危機から脱しなければ…… そうだ! とりあえず辰巳に電話しよう! アイツ呼んで二人がかりならなんとかなるかもしれん。 俺はスマホを操作し、辰巳にコールした。


プルルッ プルルッ

「…………」

プルルッ プルルッ

「……出ねえ」

プルルッ プルルッ

「…………」

プルルッ プルルッ

「……早く出ろ~」

プルルッ プルルッ

「…………」

プルルッ プルルッ

「…………」

プルッ ガチャ

「あ、もしもし辰巳? あのさぁ」

「……お前いま何時だと思ってる?」

「いやいや、何時とかどうでもいいよ。 今、俺さぁ…」

「2時半! 深夜の2時半なのね! そして明日も仕事! わかる!?」

「あー… それは悪かったよ。 でも俺いま大変なの! 助けて欲しいの!」

「うるせぇなぁ…… なんなんだよ」


 うるさいと言いながらも辰巳は聞く姿勢になっている。 なんだかんだ言っても俺のこと好きだな! 可愛い奴め! 辰巳が来れば百人力だ! 俺は今の自分が置かれている状況を辰巳に説明した。


「キモオタからメールがきてさぁ 8万円で美少女フィギュア全裸に改造してくれって頼まれたわけぇ でさぁ、フィギュア届いたじゃん? 手に持ったじゃん? 彼女とお話ししたじゃん? したら流れで? 彼女、俺を殺すとか言い出してぇ? マジやべぇ! で、今は俺の為に目玉焼き作ってる」

「あぁ!?」

「なになにもう一回説明する? あのさぁ…」

「いやいい。 もうわかった。 つまり、オマエは無職で美少女フィギュア片手に話し掛ける頭のオカシイ変態だってことだろ」

「はぁッ? バッ… ちち、違げーよ! そんなんじゃねぇよ!

ギャル男風の説明が伝わりにくかったのか!? 短時間で説明するのに、省略して話したがる若者たちの言葉づかいをマジリスペクトして使っただけだぞ! 国会中に議事録を作る書記係が略字を使って速筆するのと同じ感じだぞ!?」

「もうかけて来るなよ。 じゃあな」

「待て! もう一度説明させてくれ! お前と美少女フィギュア全裸にしないと大変なことになるんだ!」

「付き合ってられるか! ガチャッ」


切られた。 盛大に切られた。 何だか電話以外のものも切れたような気がする。 でも今はそんなことを気にかけている場合ではない。 とりあえず落ち着けオレ! 冷静になれ! とにかく、もう一度スマホで検索してみようじゃないか。 さっきは『魔装少女マリリン』としか検索ワードに入れなかった。 次は『マリリン』、『フィギュア』、『殺される』で検索してみよう。

 俺は三つのワードを打ち込み、検索をかけた。 すると一番上に「マリリン訴訟問題」というネット記事を見つけた。 記事によると、マリリンはAI搭載の学習型フィギュアで、変態行為に及ぼうとすると前立腺を破壊する攻撃をして来ると書いてあった。 制作したのはロボット開発で有名な日本エレクトフルと美少女製作所……


「日本エレクトフルだと!?」


 その名前を見た瞬間、俺の中に怒りがこみ上がってくる。 俺は2度もこの会社に殺されるというのか? 1度目は社会的、経済的な死を。 2度目はまさに今、マリリンによってもたらされる肉体的な死だ。

 俺は昔、巣鴨サンプルという零細企業で働いていた。 食品サンプルを作る小さな会社だった。 当時、この記事にある美少女製作所と同じように巣鴨サンプルは日本エレクトフルと業務提携をした。

 そしてそれが原因で倒産したのだ。 許せない…… 1度だけでなく2度までも俺の人生を奪うというのか。 俺は忘れていないぞ。 あの憎き『お野菜バイブ事件』のことを――


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