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プロローグ

――都内某所。


 薄暗い部屋を照らす明かりはパソコンのモニターのみ。 PC本体のファンがカラカラと忙しく音を立てているアパートの一室で、小太りの男が汗を垂らしながら人形を見つめている。


「ハァハァ…… やっと会えたねマリリンたん」


 人形の名前はマリリン。 ピンク色の髪でポニーテールをしてる美少女フィギュアだ。 ピンク色のドレスに、黒いレースが可愛らしさとセクシーさを同居させている。 大きな胸を強調するように上体をそらしたポージングで、天を指している魔法の杖の先端はハートの形をしている。 細部まで丁寧に作られているこのフィギュアは、『魔装少女マリリン』シリーズの主人公だ。


「げげ、限定20体の激レアひん…… ごご、5時間も君のために並んだんだよぉぉぉ」


 男は手汗をベトベトつけながらマリリンのスカートをまくり上げた。 その直後、ウッヒョォォ! という歓喜の声を上げ、男はニタニタと笑みを浮かべた。


「しょしょ、職人技! 超絶技巧ヤバすぎだよぉ マリリンたん! もぉボク我慢できないよぉぉ」


 男は服を脱ぎ棄て、全裸となりパソコンへと向かった。 彼はキーボードを軽快に打ち鳴らすと、『魔装少女マリリン』のアニメをモニター上に映し出した。 そして手足の動きをアニメと同期させ、オープニング曲の『駆け出せ☆マリリンマラソン』を口ずさみながら、手に持った美少女フィギュアを見つめた。 そしてフェードアウトしていく曲の終わりに合わせ、自らの口もとへと少女を近づけていく。 男が舌を這わせようとベロを突出した。 狙いは少女の大きな胸だ。 特殊な合成樹皮で作られた柔らかな胸の感触。 本物よりも本物、とネット上でオタクたちが言っていた情報が本物であるかを確かめるために? いや、単純に自らの欲望を満たすためだ。 男は淫らな妄想で湿らせた舌を少女へと延ばす。 だが、舌先に伝わってきた感触は柔らかな少女の胸ではなく、激痛であった。


「ぎぃあぁぁぁっ」


 男は部屋の隅まで後退し、口元から溢れ出る鮮血に青ざめる。 次に男が視点を向けた先にあったのは、激痛とともに投げ捨てたと思われる美少女フィギュアの鋭い眼光だった。


「キモチ悪りぃんだよ、オマエ」


 人形がしゃべったぁぁ!? そう心の中で男は叫んだ。 実際に声にも出して叫んだのだが、舌が上手く回らないために寄声にしかならなかった。 少女が手に持っている魔法の杖からは、男のものと思われる鮮血がしたたっている。 先端がハートの形をしたデザインが今となっては、心臓を突き刺して掲げている槍のように見える。


「オマエ、覚悟はできてるんだろうな?」


 冷酷な微笑を浮かべた少女の言葉を最後に、部屋は声にならない男の叫び声で満たされるのだった――



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