オディと大きな木 第二話 豹変
詳しくそのおとぎ話を知りたいと、私はいろいろな年寄りを始め、村の隅から聞いてまわった。小さな村であるためまわりきるのは大して苦労はしない。
だが、年長から年少に至って、誰もその話は聞いたことがないのだという。アンナのご両親すらしらないと言った。
アンナの口からおとぎ話の途中と結末を秘密にされたまま去っていったので、なおさら私は彼女がわからない。
私たちの生活は大きく変わった。
私たち子供達は皆大人達の言いなりだった。大半の子供は家に入れば、叱咤、暴行、罵倒と、いつ死んでもおかしくない扱いを受ける。私もそのうちの一人だ。外で家のために死ぬほど働けば、家では親の鬱憤晴らしの人形にされる。辛く、悲しく、それでいても優しくしてくれる母親の愛情はどこかあたたかい。きっと父の横暴さも愛なんだと思いたく感覚が麻痺する。
「なにをひとりで深刻そうに」
隣で私と同じ作業、洗濯をしている少女、ラインが私の視界に入った。
「別に。ちょっと昔のことを」
そう、今にとって過去は過去でしかない。
「昔昔昔昔。あなたいつもそう思い直してるようだけどそんなになにか気がかりなことでも?」
「うん。とっても気になることがあってね。なんでここにいるんだろうって。」
「なにをいまさら。素敵じゃない。どんなに視線を変えても、どんなにあるいても、どんな悪さをしても、なにをやっても怒られない、ぶたれない、蹴られない、この上なしの天国よ。ジュンもそうおもってたんでしょう。」
よくまあ次々と満たせた欲をべらべらとはなせる。
けど実際喜んだのは私も同じだった。
そう、この村に大人達はいない。
いや、正確に言うと大人達がいなくなるのだ。