オディと大きな木 第一話 少女の好きなおとぎ話
剣と剣 槍と槍 盾と盾 血と血が交える戦乱の中。
各地で、人知の及ばぬ怪奇な現象を目の当たりにすると耳にながれる。
何年か前、近所の仲良しだったお姉ちゃんから聞いたお話。
赤い夕暮れで金の太陽が沈む日、森の住民達はお祭りをします。火を生やして、豪華な食事に愉快な踊りをして。子供から大人までみんなたのしそうです。
しかし、輪に入らない子が一人いました。その子はお祭りが嫌いでした。
他の子供たちからは変わった奴だと「オディ」とわばれのけ者にされていました。その子の親も優しくなかったそうです。
ある日オディは、住まいに嫌気がさし、森から出ていこうとしました。
どこまでもどこまでも走り、森をぬけようと進みますが、森は広くちっとも景色が変わりません。
諦めて戻ろうとしたときにはもう手遅れでした。
あたりは暗く、沈む太陽も暗く黒く見えました。
でも、オディは不思議と悲しくはありませんでした。おうちにいてもお父さんが痛くするからです。
しばらく歩くとそこには大きな大きな、見上げても
見きれないほどの木がありました。
大きな木がオディに話しかけました。
「こんな夜にどうしたんだい。ここは君みたいな子供が一人で来る場所ではない。狼や熊、もしかしたらトロルだってくるかもしれない。さあ帰るんだ。」
オディはいいました。
「あんなとこもう帰りたくないよ。仲間はずれにされるし、お父さんからはなぐられる。熊なんてかわいいもんさ。」
オディは大きな木に自分の暮らしをすべていいました。
大きな木は戸惑い考えました。
しばらくして言いました。
「私は君のような人を何人も見てきた。私のところに何人もきた。君は知らないのだろうけれど、私は願いを叶えさせてやれる木なのだ。どうだい。こらしめたいとおもわないかい。しかえししたいとおもわないかい。」
オディはすぐに頷きました。
その日の夜明けにオディは大きな木の前で起きました。オディはびっくりしました。
自分を殴り続けていたひと、それをみて笑っていたひと、みんなが大きな木の枝に絡まっていました。
お姉ちゃんの名前はアンナ。アンナお姉ちゃんはこのお話が好きだった。
アンナお姉ちゃんは変わった人だった。どこか無邪気な、こどもみたいな、他の男の子よりも、不思議な人だった。
よく森を探検した。物語の大きな木があると信じて。けど私は見つけられなかった。
「大きな木を見つけたの。私もう行くわ。」
ある日の夜、アンナ姉ちゃんは私にそう言って、二度と目の前に姿をみせなくなった。






