幽霊ッテ不思議ダネ
「ねぇ、昨日のニュースみた?」
「みたみた!幽霊が出たあの事件でしょ?」
「そうそう。あのおんぼろビルにね・・」
女の子たちがきゃーきゃー叫んで盛り上がる。
山も海も川もビルもなんでも周りにあるとある町の中学校では、
今日も幽霊ブームが広がっていた。
「幽霊なんて、いないよ。
だって見たことないもん」
そうポツリと私はつぶやいた。
「そうそう、それでさぁー・・」
「うんうん、それで?」
私のつぶやきは聞こえなかったのか、周りは話を続けていた。
私の言葉なんて、考えなんて聞いてはくれない。
もっと知ってほしいのに。なのに構ってくれない。
周りは毎日毎日飽きずに幽霊の話をしていて
もう私はうんざりしていた。
一体どうしてこんなに広まったのか。
それは、クラスの子が 幽霊を見た という一言から始まった。
「ね、私、昨日お化け見ちゃった
どうしよう!!コッチヘコイって言ってた!!」
顔を蒼白にして、その女の子は話していた。
その子はまじめな子でみんなからも人気のある子だった。
「えー、そんなんいるわけないよ。
みまちがいじゃないの?」
「そうそうーよくあることだよなー」
「なにそれ冗談?つまんないなー、もっと
面白いこといえよ」
最初はみんなそうやって信じなかった。
無論、私も信じない。
でも彼女の蒼白さは、冗談ではないとは思った。
「ねぇねぇ、そのお化けどこでみたの?」
話を進展させるために私は聞いた。
「海だよっ海!ほら、あの近くの・・。
やだ、私、つれていかれちゃう!」
彼女は答えた。
体を震わせて。
「--海か」
私はつぶやいた。
私も毎晩海岸に行く。
親はいつも、夜に仕事ー朝は寝る という夜型生活で
私が夜に外に出てるなどまったく知らない。
海に行っても、私は彼女も幽霊も見たことは一度もなかった。
毎晩行っているのに。同じ場所のはずだが・・。
「あの子が冗談や嘘を言う子じゃないと思うけど」
一人がそう言った。
それがきっかけだったと思う。
「じゃあさ、何人かでいってみない?
その海に。肝試しだよっ今度さ、行こう?」
誰かが言った。
女子だ。その子の友達で勇気ある女の子だった。
「しんじて、くれるの?」
眼を見開いて、泣きそうな表情で彼女は友達に言っていた。
「んー、もし見たらね。
それに、もしいなかったら、いなかったんだってことで忘れられるじゃんっ。
怖い思いしなくていいだから」
ウインクして彼女を勇気づける友達。
その友達の言っていることはもっともだと思った。
見たら信じる。
いなかったら、忘れる。それでいいのだと それで許すと。
私も見たら絶対信じると思う。
いなかったら、幽霊なんていなくて、ただの見間違いに過ぎなかったのだ
と、それで話は終わるのは当然のことだと思った。
「う、うん!今度、案内する!」
そうしてその女の子と友達数人、そして
「おもしろそー、肝試しだって。」
「俺たちも混ぜて!夏はやっぱ肝試しっしょ!」
男子数人を混ぜて、数日後、彼らは行った。
その日その夜、私は彼らと別行動で海に行った。
夜目がきくから、明かりもなしに砂利道を通り、
砂浜に下り立ち、海の岸にたどりつく。
入り江が少し遠くにあった。
暗くて入り口だけが月明かりに照らされて不気味に青白く見える。
「あれ?あの入り江で肝試しっていってたのに・・」
入り江はところどころ穴があって、
懐中電灯の光ぐらいなら見えるはずだと思っていたが
暗くて人がいる気配すらなかった。
まぁ、いっか。
もしかしたら、帰ったのかもしれないし。
しばらく私はざぁーざぁーと、夜の静かな漣を聴いて海を見て
そして帰路に着いた。
私はその日 未知の物 いや、幽霊は見なかったのだった。
***
「あれ?ここどこだ?」
「まさか、迷ったの?」
「いや、んなわけーー、!!」
「え、道が、ない!?きたときはあったのに」
「あ、あ、あ、”うそだ、いやだ、やめて、こないで、こないで・・」
ミーツケタッ、ーーーマタ ア ッ タ ネ。
「ミツケタ、コノマエ、アッタヤツ。
コッチヘコイ」
「きゃあぁ、いやぁあーーーー助けてーーー!!」
「センコク シタハズダヨ、連レテ行クッテ」
「おばけ!?やだっっ、本当にーーー」
「うわああああ!
マジでやばくないか?!、俺たち本当に・・!!」
「今日ハ、コイツヲ ツレテイク。
次はーー オマエタチダ」
***
次の日
幽霊を見たという女の子は休み と知らされた。
一緒に肝試しにいった子達は、青ざめて震えて、
顔を俯けている。
クラスの雰囲気はそれによってどよめいていた。
「ねぇ、どうなったの?昨日」
その友達はきていたのでそう聞くと
「つれて、かれちゃった」
震えた声で彼女はつぶやいた。
「え?」
「つれてかれちゃったの!
幽霊に、あの子が!!」
「!!」
「どうしよう!私も、私も連れてかれちゃう。
どうしよう・・!どうしようー!」
どうしよう そればかり彼女はつぶやいて
頭を抱えた。
昨日、なにが、あったんだろう?
みんな、震えてる。
みんなおびえてる。
「おれ、夜に出歩くのやめる!
あの幽霊にあったら、絶対につれていかれる!」
「俺も!」
「ボクも!」
「海なんて二度といくもんかっ!」
男子たちも震えて叫んでる。
恐怖が言葉ににじみ出ていた。
「じゃあ、やっぱり、幽霊は・・--」
「い、いたのよっ、あの海に!
入り江に!!もう、やだ、怖いーー!!」
彼女たちはそれ以来、外に出歩かなくなったという。
それから数日も経たずにテレビで幽霊事件が報道された。
朝も昼も夜も、その報道は続く。
「昨日、0時に**小学生の女の子がビルでーー」
「**町の海岸で、夕方六時ごろ津波にあい、何人かの女性がーー」
そんな事件が立て続けにおこって
学校内の話題はいつもそればかりになった。
おびえていた女の子たちや男の子たちは
危ない目にあったにもかかわらず、幽霊の話題で毎日盛り上がっていた。
「なぁなぁ、テレビみた?また海だってさ」
「そうそう!神隠しだなんて、よばれてるぜ?」
「きっと、見たやつしかわかんないんだろうなーー」
他人事のように笑うみんな。
まるで、
自分達が実感したはずの恐怖や出来事を忘れてしまったかのように
ーーーー笑ッテル。
そしてそれから数日後、女の子が学校に復帰した。
「おはよう。」
「ねぇ、テレビ見た?」
「うん、みたみた、幽霊だって。いたらすごいよね」
そう笑ってみんなと話す、連れて行かれたはずの子。
私は確かに数日前に、彼らに聞いた。
連れて行かれたのだと。自分たちも連れて行かれるのだと。
幽霊に合ったことなんて、みんな覚えてないようだった。
私ですら、聞いたのは間違いと思うほど、みんなが変わった。
もし幽霊に会ったことを忘れてるなら
幽霊に対する興味や好奇心を取り戻したはずなのに
変わらないことがひとつある。
「ねぇ、だったら、夜に海とかいってみない?
まだ幽霊見たことないんでしょう?」
「うん、でもいやだよ。だって幽霊に連れて行かれちゃう」
「そうだよねー、夜なんかに出歩いたらそれこそ」
「「連れて行かれる」」
みんなは答えた。
連れて行かれると口をそろえて言うのだ。
“次に会ったら連れて行く”ことを宣言されたことを
覚えている前提で答えているみたいに聞こえる。
会った恐怖とか、会ったこと自体、忘れてるのに、だ!
「そっか、まぁ、そうだよね」
見てみたい。幽霊に。
幽霊にもし彼女たちの記憶を捜査できるとしたら、
少し興味がある。
****
それから、私は、
幽霊を見ることを目的に海へと毎夜通うことにした。
****
スタスタスタ・・スタスタスタ
浜に向かい、岸辺に立つ。
ざぁー・・ざぁーー
波が、岸辺に打ち上げられて、浜を削ったり、浸したり、する。
月が海を照らして深く暗い蒼が静かに波打っていた。
辺りを見回すが
波の音が聞こえるくらい、人の気配はまったくない。
「--・・」
やっぱり、いない。
それから一週間くらい、海に通い続けた。
学校で幽霊話はヒートアップするし、恐怖心もまし、
人がかなりの確立で行方不明になる事件が増えて行く。
「・・そう簡単に会えるわけないか。」
今日も、肩を落としてつぶやいた。
少しほっとする気持ちと、会えずに残念な気持ちが混ざり合う。
「というか、いるわけないんだよ、幽霊なんて」
そうだよそうだよ、いないのに見えるわけがない。
海にくるりと背を向けて、帰ろうと足を動かす・・
ーーーまさに、そ の と き だ っ た 。
トントン
「!」
肩を、たたかれる感触。
さっきまで、だれもいなかったはず!
なのに!!なんで!?
「ボクヲ、サガシニキタノ?」
ゆっくりと振り返ってみれば、そこには、にやっと笑う
ヒト が 距離を置いて佇んでいた。
「!!」
砂浜に立つ私から、手を伸ばして肩をたたくことなんて不可能な位置に
そのヒトは佇んでいる。
海にうかび、月明かりに透ける姿。ふよふよと浮かぶ姿は見えるのに、
実体である 肉体は ナイ。
さらっとした黒髪に黒い瞳、少し自分より年上の男の子のような気がしないでもないのに、
笑う顔は、どこかヒトと違う。地獄を未来の先に予告させるような・・。
そんな エガオ。
「あ、あ、なたっ はーーー」
息が詰まってうまくしゃべれない。声が震えた。
確かにこの、ヒトは、私にーーー
「ボク?」
そのヒトは、自分を指差して首をかしげる。
「ボクハ、君ノ探シテタモノ ダヨ?」
「え」
私はその言葉に驚愕した。
じゃあ、やっぱり、このヒトはーーー
幽霊!?
「ソウ、皆ニソウ呼バレテル。」
「っ」
「デモ 君ハ、最初二、ボクヲーーー」
彼はうなずいた。少しかげりのある瞳で。
そこに私はぐっと惹きつけられる。
「“ヒト”」
その言葉を口ずさむ彼の瞳に光が一瞬宿った。
「ダト、思ッテクレタヨネ?」
ふわっとした優しい笑顔が、私に向けられた。
さっきとは違う 人間らしい笑顔で問いかけられる。
再び惹きつけられた。目が放せない、その笑顔から。
「っ!」
確かに、私は思った。
ヒトがたたずんでいると。
それが分かってるということは、
彼は、人間の心を読める
ってこと??
「ソウダヨ。読メル。ナントナク分カル。」
彼はうなずいた。確信を持って。
ナントナク なんてあいまいな表現は似合わないほどに。
「!」
でも、それは
私の気持ちも考えも全部・・知られちゃうということ。
少し、それはこわかった。
話しにくいというか、発言する必要すら無駄なことなんじゃないかって。
「ウソダヨ」
「え?」
彼は笑った。
その言葉と笑顔に私は一瞬呆けた顔になる。
どう、いうこと?さっき、読めるっていったじゃないっ
「ボクニ、心ハ読メナイ。
君ノ表情カラ、分カッタダケ」
「!」
肩をすくめて言う彼に私はびくっと肩を震わせた。
!それはそれで、やりにくい。
私はそれほど表に出やすいということだ。
だが、それと同時に 自分を分かってくれてる ということでもあって
少し認めてもらえた気がしてうれしかった。
それでも慣れないことで怖いことでもあった。
「ソンナニ 怯エナイデ。
デモ、君ハ、ボクヲ探シテタンデショ?」
「そ、う。
私は、貴方を探していた。」
少し気遣いを見せる彼に私はまっすぐにそういった。
不思議と勇気が出てくる。
本来の目的を冷静に思い出すことができた。
そ う 、探 し て た 。
女の子ばかり連れて行く貴方を。
見たことない、幽霊を。
幽霊がいるかどうかの真実を探しに。
「ナンデ、探シニ来テクレタノ?
ボクハ、皆カラ、恐レラレル存在ナノニ」
再び瞳がかげる。
そのさびしげな表情にどうしても私は目をそらせなかった。
怖いはずなのに。信じていなかった存在を目の当たりにして。
女の子ばかりを連れ去るこの存在が。
そんな悪党が寂しそうな表情をする。
「私は、幽霊なんていることを信じてなかった。
だって見たことがなかったから。そうでしょう?
見えないものなんて信じれない。」
そういいながら私は信じるしかないと思っていた。
不思議だ、あんなに私は信じたくなかったのに。
「・・ボクヲ君ハ見テイルカラ、信ジテクレルヨネ」
悲しそうな表情で彼は言う。
孤独を思わせる視線が私の中に入り込んだ。
「うん、信じる。」
信じるよ。
だって見えている。あなたはしっかり見えている。
だから、そんな顔しないで。
「アリガトウ、ウレシイ。
ナンダロウネ、ココロガアッタカイ」
顔を赤くして彼は言った。
悲しげな表情は消え去って、私を見る視線はほかほかしてる。
「私も、あったかい。
なんだか、私もうれしい。ねぇ、貴方の名前は?」
私が信じるといってうれしいと返してくれたヒト。
私もうれしかった。自分を認めて、喜ぶヒトがいたことが。
でもそれは不安定なものだった。
すぐに消えてしまいそうな軽いもので。
だから、教えて。貴方の名前。
貴方の存在が私の中でしっかりしたものになるために。
「ボク?ボクノ名ハ、陽軌。」
「陽軌・・」
陽軌、陽軌・・口の中で何度も口ずさむ、彼の確たる証拠。
なんだか、ココロにずっしりときた。でもしっくりしていて。
ずっと、中に棲みついていたものみたいに。身近で傍に在って。
「ソウダヨ。
ヤット、言エタ。コノ世ノ、ミレンニ対シテ。」
「?」
なんのことだろう?
すぐに、私が考える暇もなく、
「ネェ、君ノ、名前ヲ教エテ?」
「私?私は凪月っていうの」
「凪月・・」
ドクンッ!!
「!」
ぼそっと反復されて彼から紡がれた自分の名前に
心臓がわしづかみされた。
体が熱くなる。
素直にうれしいと感じてしまった。
よばれたことに。クラスの人に名前すら呼ばれなかった私の名前。
彼を、陽軌を、身近に 近く感じた。
幸せ。すごく幸せ。こういうのをきっと
未練も何も残ってない ということなんだと思った。
「凪月、アリガトウ、ボクニ名前ヲ教エテクレテ」
「!」
彼の幸福そうな笑顔を見た瞬間、
天にも昇るような、そんな感覚がした。
不思議だよ、陽軌。もう私は貴方の虜。
あなたに名前を呼ばれるだけで心も体も舞い上がる。
私こそ、ありがとう だよ 陽軌。
ピカーーー・・・
透明な彼を通して、夜が明けた。
「あ」
あぁ、いやだな、かえらなきゃいけない。
もう分かれるなんて。
「ン?ドウシタノ?」
あっとつぶやいた私に不思議そうに彼は聞いてきた。
また、貴方に会いたい。
「夜が明けちゃった。帰らないと。
でもね、また会いたいの、陽軌に。また私がここにきたら、会える?」
「---ソッカ、マダ ジカク シテナイカ、名前貰ッタノニ」
「え?」
ぼそっとつぶやかれた言葉は、
なにを意味するかまだ私には分からなかった。
「イヤ、ナンデモナイ。
マタ ゼッタイニ、アイニキテ、凪月。ココデ“マッテル”カラ」
「ほんとに!?ありがとう!陽軌!!
また来るね!!」
夜の逢引を許されるどころか絶対に来てといわれた。
そして 待っている と いってくれた。
それがうれしくて 幸せで そのことに興奮しながら
私は帰った。
****
その日の学校。
「今日はテレビでみなかったなー事件」
「そうそう、みなかったー」
「だけどまだ見つかってないんだよね、神隠しされた人たち」
「うん、まだみたい。どこに隠されたか気になるよねー」
「ねー^」
「私、海でみたよ、幽霊」
「んでさー、今までいなくなった人たちの人数しってる?」
「さぁ?でもたくさんいるでしょ。」
学校は幽霊の話題でまだ盛り上がってた。
テンションは低くなりつつあるのに、無視された私はうんざりしてなかった。
聞かれてないならいいや。
そんな気にもなっていた。
それならそれで、二人きりで彼に会える。
自慢したかったけど、二人きりってのもまた独占できていいなと思っていた。
「---・・・」
もし、神隠しの仕業が陽軌なら
昨日ずっと私といたからやっていなかったことになる。
それは
事件が起きなかった理由を知ってることを意味する。
優越感が心を満たした。
****
それからまた彼に会いに行って話しを聞いた。
「ねぇ、陽軌だよね?神隠ししてるのは?」
「ソウダヨ。デモネ、モウソノ必要ガナクナッタカラ
モウシナイ」
「そっか。なんで必要がなくなったか聞いてもいい?」
「ウン イイヨ、凪月。
ボクハネ、サガシモノ ヲシテイタンダ」
「探し物?」
「ウン。デモミツケタ。ダカラシナイ。」
「女の子ばっかり集めてなにを探してたの?」
「エトネ、ソレハ、
ボクノ“欲シイモノ”ヲ クレルヒト」
「欲しいもの?」
「ソウ。イチバン、ボクガホシカッタモノ。
ボクハ元ハ“人間”ダッタカラ」
「!」
彼が漢字を・・いや 意味を成して言った言葉に
いつも私は惹きつけられる。きっと 心がこもってるからだ。
「デモ、シンジャッテ。ミレン残シタママデ。
ソノミレンガ、ナクナッタカラ、モウイインダ」
彼は話してくれた。
大切だった人は海で自殺しようとしたのを助けて代わりに死んじゃったこと。
最後まで信じてもらえず、名前も知らず 死んでしまって。
未練が残ってたけど、もう心残りはないってことを。
「え、じゃあ・・もうあの世にいっちゃうの?」
いやだ 寂しい。お願い おいていかないで
「ウウン マダ、イカナイ。
ミツケタケド モラッタケド、気付イテ モラエテナイカラ
気付イテ モラッタラ、イッショニイクノ」
「そっか・・早く気づいて欲しいんだね 陽軌は」
「ウン ボクガツタエタラ、ダメダカラ」
「凪月、サッキ ボクノ欲シイモノ キイテヨネ。」
「うん、きいた。教えてくれるの?」
「ウウン、オシエナイ。
キミガ気付イタラ、正解 ダッテイッテアゲル。
早ク キヅイテ、ミツケテ」
「うん、絶対みつけるよ。」
「ボクトノ会話 思イ出セバ ワカルヨ」
「わかった。気付いてみせるね」
私は笑っていった。
***
それから、数日がたった。
まだ私は答えをみつけてない。
「ねぇ、三時間目ってなんだっけ?」
「えーと、ちょっとまってよ・・」
「国語だよ」
話す子達に私は言った。
しかし、
「んーなんだっけ?」
「えっと、ここまででかかってるんだけどなー」
私の声は聞こえなかったのか そう会話を続けていた。
「・・私の言葉、聞こえてないの?」
私は一人孤独に感じた。
前は気にならなかった。無視されることも気付かれないことも。
でも、このごろは違和感を感じる。
大声で言っても気付かれない。聞こえていないのだ。
私のことをまるでいないように接してる。
なんで・・・ みんな、どうして。
辛かった 悔しかった。最初は皆を恨んだ。
なにがなんだかわからなくて。
***そして翌日
私の席の前まで行くと、そこには、花が添えてあった。
「え?なにこれ・・?」
まるで死んだ人のために添えてあるお花・・
「おい、きいたか?」
「うんきいたきいた」
私の席を指差して、男子たちがなにやらはなしはじめた。
え、なに、どういうこと・・?
「こいつ、幽霊につれてかれたんだろ?」
「そうそう、行方不明だったけど死んだってさ」
「え?・・しん、だ?」
私が?うそ。だって、私、ここに立ってるよ?
私の呟きはやはり聞こえないようで。
「やっぱりかー。連れてかれると思ったよ」
「そうそう、こいつのおかげで事件がなくなったらしいし」
「じゃあ、こいつを探してたのかな?幽霊は」
「そうかもね」
「こいつも寂しがりだったしなー。
幽霊も寂しかったんじゃないの?」
「!!」
陽軌!
そうか、陽軌は寂しかったんだ。
陽軌がほしかったもの。それが今知ることができた。
信じる気持ち。
孤独を紛らわしてくれるものが彼は欲しかったんだ。
彼は言ってた。最後まで信じてもらえなかったと 大切な人に。
だったら、絶対アイニキテ マッテル というのもうなずける。
「!」
行こう陽軌のもとへ!
気付いたこと教えなきゃ!私が死んでることも、彼の欲しいものも。
***
「陽軌!」
「凪月、学校ハ?」
「もう、私は死んでるんでしょう?
だったら、行く必要なんかない」
「ヤット、キヅイテクレタ。
ホシイモノ モ キヅイタ?」
「うん、わかったよ、“私” でしょ?」
「エ」
「自分を信じてくれる人 それがほしかったんでしょう?」
「凪月・・正解、ダヨ。イチバンノ宝物」
「もう私も未練はないの。連れてって陽軌。
一緒に」
「アリガトウ 大好キダヨ凪月。イコウ、イッショニ」
「うん!」
彼が私に手を伸ばし、その手をとる。
不思議だよ、殺されたのに、むしろうれしいなんて。
後に 二人があるべき場所に戻ったのは言うまでもない。