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 さすがに結成したてのバンドだけあって、演奏は荒々しくはあった。だが横に並んで座り込んで、4猿の演奏を聞き込む三人は、穏やかな顔つきをしている。ステージ裏では絹髪塚が楽しそうに四人を見つめており、新メンバーの沢茄の歌声が、練習のしすぎのせいだろうかやや掠れていたが、綺麗でそして力強く、多目的ホールに響いている。

 希奈はドラムを叩き、

 依衣那はギターを弾き、

 美南はベースを持って、

 沢茄はマイクを握っている。

 彼女たちの演奏はつたないながらも、繰返しを終えた三人へと音の洪水を絶やさない。流れるリズムがようやく繰返しを終えた三人の心を癒し、身体に安らぎをもたらす。サタンがいなくなって暗雲も消えた校舎、その多目的ホールに光が何本も射し込まれて、わずかな間、明るく輝いたかと思うと、夕焼けの茜色となって染まる。

 演奏はまだつづいている。

 音の洪水はまだ止んでいない。

 彼女たちの汗がステージ上に飛んで、楽しそうに飛び跳ねている絹髪塚の汗もなぜか飛んでいた。

 演奏を聞きながら、座ってソレを耳にしている三人は、随分と久しぶりのような感覚で、三人での会話をしている。

 記憶をしっかりと取り戻してからの三人での会話は、本当に久しぶりのことで、記憶を取り戻した上で思い返せば、今まで何回も同じ会話をして、同じ行動をしていたわけだったが、菜霧が生きていて、三人が横に並んで座っている今は、同じ会話は繰り返されない。

 ただ談笑している。

 ふつうに会話し、ときおり笑い、ステージ上の四人を眺めたり。

 事件が終わったとはいえ、穏やかな気持ちで全て満たされたというわけでもなく、たとえば運命の主に対する釈然としない気分、こうしている今も少しは、記憶を取り戻した三人には残っていた。菜霧にいたっては、百回以上も死んできたわけで、彼女自身は殺された時には毎回記憶を持ってはいなかったわけだが、記憶を取り戻してみれば、自分が百回ほど殺されたことも思い出すことにはなったはず。

 雪也はそのことを気にしていたが、菜霧の横顔からはそのことについてどう感じているのかは読み取れない。

 そうか、もう終わったんだよな、とその表情を見ていたら雪也は釈然としていなかった気持ちも、おさまってきた。

 運命の主の声はもう聞こえない。

 火の玉怪物ももういない。サタンも。

 白髪の男も、外に広がっていた荒野も。

 繰返しは終わって、今はただこうして演奏の流れる多目的ホールで、雪也は菜霧の生きている横顔を見れるし、陽一もソレは同じだ。菜霧も、生きているから雪也と陽一が隣にいたし、演奏を耳にすることが出来ていて、気分は穏やかになりつつある。

「だいぶ遅くなってしまったけど」

「死に飽きてたよ」

「それはごめん」

 事件は終わって、金色の槍も、銀色の刃物ももうない。三人は知らぬことではあるが、松長 十字朗の身体と可愛らしい歩行ロボットと棒は、屋上で横たわるようになった。田中 由美も、黒魔術の部屋で生きたまま、眠っている。

 そういったことは知らぬまま、三人は穏やかな表情のまま、

 演奏を終えた四人へと、ありがとう、と声を掛ける。

 ただ今は、事件が終わったことを喜びとして胸に携え、地面から、立ち上がる。

 拍手を送った。          



                        























おわり

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