心に火を灯す存在
とりあえず、散歩といっても、ここは俺の生まれたところから少し離れているので、知っている場所があまりない。
だから、小学校の様子を見るついでに、小学校の周りをぐるっとすることにした。
俺が学校に到着すると、チャイムが鳴った。
すると、『あぁ、懐かしいなぁ…』っと俺の想い出が疼く。
俺の小学校と何も変わらない風景…。
それが俺の心を癒した。
いや、癒すはずだった。
チャイムが鳴ったことで、一斉に運動場に出てくる子供達…。
その中の1人の子供が、俺の目にふと留まったのである。
その瞬間、俺の中での癒しの場が、そいつを目にした途端、憎悪の燃え滾る場となった。
実際、さとるという名のガキは、俺の復讐には無関係だった。
しかし、俺に火を灯すには、十分すぎる存在だった。
ニコニコと俺の生き様をあざ笑うかのような笑顔。
そんなことを思えば思うほど、俺の中の憎悪の炎は大きくなっていった。
『あぁ、奴を殺したい…』
その思いは、休み時間中止まらなかった。
ガキが俺の前から立ち去って、少しずつ、少しずつ俺の心が落ち着いた。
そして、俺はあることに気付いた。
『ダメだ…』『小学校の周りの散歩は…』
だから、散歩コースを、小学校の周りから民家の間へと変えた。
古びたパン屋。寂れた町並み。
俺はコンビニで買ったコーヒーを啜りながら、昔の雰囲気を堪能した。