2人のおにぃちゃん
警察が無力だからかはわからないけれど、とりあえず私は警察に捕まらずに今を生きている。
そして、そんな私が次に殺そうとしている標的は●●高校の川中ほたるさん。
4週間前に近所で出会い、助けてもらった。
っというよりも、助けるように仕向けさせたという方が正しいのだけれども・・・。
私は今、受話器と電話帳を手に取って電話をかけている。
そして、向こうが電話に出る音がしたので私は声を発した。
「もしもしぃぃ?」 っと―――。
そして、それに付け加えてもう一言。
「おねぇちゃんは元気にしているぅ?」 っと―――。
なぜそのように声を発したかというと、ほたるさんは慧さんという彼氏の家にいて、私はその慧さん家に電話をかけたからだ。
私はいつでもちゃんとおねぇちゃんの居場所を把握している。
私から逃げることなんて許されないのだ。
でも、そんな私から逃げれると思ったのだろうか?
実際、ほたるさんは慧さんの家に行っている。
まぁ、いいだろう。
そこにも私の手が届くということを今から証明するのだから・・・。
しかし、私が声を発してから全く返事が返ってこない。
私はもう少し大きな声を出すことにして言葉を追加した。
「ねぇ、聞いてるぅ~♪」 っと―――。
そして、さらに私は追加した。
「おにぃーちゃん!答えてよ!!」
「自殺なんか・・・」
「私に怯えて自殺なんかしてないよね? おねぇーちゃんはっ!」 っと―――。
すると、なぜか私の頭にある人の顔が過るのである。
それは“私のおにぃちゃん”の顔・・・。
だけど、慧さんと私のおにぃちゃんの顔は全然似ていない。
全くと言っていいほど、似ても似つかない。
『じゃあ、なんで過ったのだろう?』
私は少し考えた。
だけど、答えはよくわかんない。
でも、私が思うに、慧さんの事を「おにぃちゃん」を呼んだことに関係があるんじゃないかと思う。
だけど、私に殺人をやめて欲しくて、おにぃちゃんが私の前に現れたとも考えられる。
でも、私は思った。
それだけは絶対にないと―――。
だって、おにぃちゃん自身が妹である私に人殺しを頼んだのだから・・・。
だから、私は心の中で『後者の考えはありえない!』と決めつけた・・・。