アオイとナツメ
「キミは、双子だったんだ? しかし、なんでキミにそんなことを?」
「ええ、まぁ、そんな感じのがいますね。私だって、知りませんよ。でも、『そういう笑顔は、彼女にしなよ。』って昔に言いましたら、『俺は、葵のことを世界で一番愛してるから良いの。』って言われましてね。――――――あー!! 私、自己紹介がまだでしたね」
葵は、「すみません」と小さく頭を下げながら笑った。
「私は、葵。緋野 葵です。こちらでいうと、アオイ・ヒノになりますね。ファミリーネームがヒノです。年は、十八歳。私のことは、好きなように呼んでください」
「そうか。アオイとは、良い名だな。ところで、話を蒸し返すようで悪いんだが双子の弟とやらの話を詳しく聞かせてもらえないか?」
「あ、それ俺も気になる!!」
「僕も-!!」
全員が、先ほどの話を詳しく聞きたがった。
「えーっと、何か気になることでもありましたか?」
アンジェ達の発言に、アオイは首をかしげた。
(なんで、あいつの話を聞きたがるんだろう? 何か気になるような話をしたっけ? ただ単に、甘い表情を私に向けてくる人の話をしただけなんだけどなぁ)
アオイは、気づいていなかっただけだ。これは単に“葵を世界で一番愛してる”という言葉に6人が苛立ちを覚えたからだ。この感情の名に気づいている者は、今のところヒューズとセシル、ラシュの3人だけだった。あとの三人は、まだ自分の中にある感情の名に気づくことはできなかった。
「んーっとそうですねぇ。名前は緋野 棗と言いまして、たぶん私の双子の弟です。たぶんっていうのは、私の両親が再婚同士・・・・・つまり、最初はお互い別の人と結婚していたけれど何らかの理由で別れて、そうして出会い結婚した。という感じです。
なので、よく分かってないんですよ。でも、私的には血のつながりはないと思ってます。顔かたちなんて、まったく似ても似つかないので。あとはー・・・・・」
アオイは一生懸命考えた。
(棗について話すことって後は、女性関係くらい?)
「あと、女性受けが大変よろしくて“来る者は拒まず去る者は追わず”でしたね。この言葉の意味というのは、“心を寄せて近づいて来る者は、どんな者でも受け入れ、離れて行こうとする者はその意志に任せて、強いて引き留めない”というものです。しかも決まって、『私より大切な人がいるんでしょう!?』って言われてフラれてますね。
棗には、本当に大切で愛している人がいるらしいんですけどその話をすると、必ず哀しそうな目で私を見ながら抱きしめてくるんですよね。私には、最後までそれがなんでだか分かりませんでしたけど」
アンジェ達の中で分かったことがあった。
それは・・・・・・アオイが鈍いということと、ナツメという男がアオイのことを本当に愛していた。ということだ。
「詳しくと言ったらこれくらいですね」
「分かった。ありがとう。すまなかったな、この世界を受け入れたばかりだというのにアオイの元いた世界の話をさせてしまって」
カインは、申し訳なさそうに目を伏せた。
「いえ、大丈夫ですのでカインさん達は気になさらないでください」
アオイは、首を振りながら微笑んだ。
「あのさ、さっきから気になってたんだけどその敬語と“さん”付けってなんか一線引かれてるようでイヤだからやめてくれないか?」
突然、ラシュはそう切り出した。
「そうですか?」
「そうだ。だからやめてくれると嬉しい」
「わかり―――――分かった」
それでいいという感じにラシュは、満足そうに笑いながら頷いていた。
「話が、一段落ついたところでこの世界について話しておくよ」
あれれ?
アオイちゃんの自己紹介がさらっと流れてしまった。
ナツメくんの話の方が多い・・・・。
まぁ、気にしない方向で(笑)
これからは、葵ではなくアオイに統一させていただきます。