残していく者
少しだけ変更をしました。後の話に影響あるかもです。
ごめんなさいー!! 軽く半年くらいかそれ以上の放置をしていました(ToT)
待っていて下さった方、いるかわかりませんが心から感謝します。見捨てないでくれて、ありがとうございます!!
これからも、鈍足更新になってしまうかもしれません。ですが、完結を目指して、ちまちま頑張って行きたいと思います。
これからも、よろしくお願いします!!
話が思い出せない方は、前話と合わせてお読みください。そして、無駄に長いです。
スラーセルの言葉に、アオイは僅かに首を傾げた。
「私だけをってこと?」
「いいえ。姫様に加え、アンジェ殿下、ラシュ殿下、クリス神官長、ナツメ殿もお連れするように、と。その際には、アンジェ殿下には“アレ”を持っていただきたいそうです。他の方々は、共に行きたいと思うかもしれませんが、今回は我慢してください。そして、姫様には護衛のみを連れてきていただいとうございます」
「じゃあ、コニは連れて行ってはいけないの?」
「申し訳ございません。守る対象が増えれば増えるほど、隙は生まれやすくなってしまいますので、どうか我慢をお願いします」
コニーデを連れていけないことが分かり、少し悲しそうな表情をしたアオイにスラーセルは、直角に頭を下げた。そのことに対し、アオイは慌てたのか、無言で何度も頭を上下に振る。
「ありがとうございます。あぁ、姫様に必要な物はこちらで、全て陛下が揃えていますので、心配なさらないでくださいね。
では、参りますので殿下には例のものを、持ってきてください。その間に、姫様は専属侍女の方に、しばしの別れを告げてこられるのがよろしいかと。その方は、すぐそこの庭園で花を摘んでおられますよ」
何故スラーセルが知っているのかと疑問に思うが、おそらく闇の力を使ったのではないかと推測をする。そして、自分で出した答えに満足したアオイは、その言葉に頷きアンジェは部屋を出ていった。それに続くように、コニーデの所へとアオイは向かった。
「コニ!!」
言われたとおりに部屋を出てすぐのところにある庭園へ向かうと、コニーデが庭師と相談をしながら花を摘んでいる姿があった。
「まぁ。アオイ様。どうなさいましたか?」
尋ねてくるコニーデに、「コニに話があって」と言うと庭師は気を使ったのか、アオイに向かって一礼し去って行った。
「えっとね、これからシシレイ王国っていう所に行くんだけど、そこにコニは連れていけないんだって」
自分で言っていて、悲しくなってくるのかアオイは段々と声を小さくしていった。
「なんですって? グレース様、貴方の仕業ですか?」
「なわけないだろ。姫さんを守るためには、守る対象が少ない方が良いんだよ。それには、コニーデを連れいていくわけにはいかねーんだ。お前も、姫さんの専属侍女なんだ。自分が、何を最優先に考えるべきかぐらいわかるだろ?」
「そう、ですね。分かりたくありませんが、理解しました。今回は、諦めます。ですが、荷造りくらいはさせてください」
肩を落としながらも、アオイへと自分の希望を伝える。その言葉は「自分がアオイのことを、一番分かっているんだから、もちろんさせてくれるわよね?」という意味を含んでいたりもする。
「それが、そういったものもいらないんだって。向こうが全て用意してくれるから、そのまま行って良いみたいなんだ」
「なんですって!? では、アオイのお世話をしてくださる方に、渡してもらいたい紙を用意するので、少しここで待っていてください!!」
先ほどまで、肩を落としていたとは思えないほどの速さで、コニーデは城の中へ戻っていった。そんなコニーデを見送ったアオイは、周りに咲き誇る花を見渡す。
「ここの花って、いつ見ても綺麗だよね」
「あぁ。でも、オレとしては姫さんのほうが、ずっと綺麗だと思うけどな」
そう言って笑うグレースは、文句なしにカッコイイ。
(うわぁ、グレースめちゃくちゃカッコイイわぁ。これが、花火を見ながら女の人が『花火、綺麗だね』って言ったら男の人が『お前のほうが、花火の何倍も綺麗だよ』っていうやつの花バージョンですか!?)
よくよく思い返してみれば、地球でもよくナツメや友人たちがアオイが何かを褒めれば「アオイのほうが、かわいいよ」とか「綺麗」と言って褒めちぎっていた。しかも、周りに大勢の人がいるのにもかかわらず、それを言うのでいつも羞恥心でいっぱいだった。今回も、シュネたちが周りにいるのにもかかわらず、褒められたので頬を少し赤く染めた。
それを見て、思わず伸ばしたグレースの手を、横からすかさず出てきた手に掴まれて、結局アオイに触れることはできなかった。アオイがそっと横を見ると、ニコニコ笑いながらグレースの腕を掴んでいるシュネの姿があった。他の二人も、アオイの前に体を割り込んできてグレースの視界からアオイを消し、睨み合っていた。まさに、一触即発の状態だった。
そんなことを知らずに帰ってきたコニーデは、変な空気だなと思いつつも自分の用事を優先させた。
「はい、アオイ。これを、絶対に渡してくださいね?」
強制的に握らされた紙を見ると、びっしり文字が書いてあった。しかも、それは一枚だけではなく三枚もあった。
(もしかして、私って手のかかる人間だったのかな。ショックだわぁ)
少し落ち込んだが、それを顔には出さず、
「ありがとう、コニーデ。なんか恥ずかしいけど、ちゃんと忘れずに渡します」
「お願いします。気をつけて、怪我をしないように帰ってきてください。アオイの帰りを、毎晩グレース様を呪って、アオイを想って枕を濡らして私は待ってますから。いってらっしゃいませ」
「え? オレって、呪われちゃうの? 嫌だなぁ。そのかわり、毎晩姫さんに添い寝でもしてもらおうかな。オレが死にそうになっても、きっと姫さんなら何とかして助けてくれそうだし」
「えぇ、もちろん。私からアオイを奪っていくんですもの。当然です。ふふふ、それとも何ですか? グレース様は、私が呪ったくらいで死んでしまうような脆弱な体をしているんですか? まぁ! それなら、アオイの護衛はふさわしくありませんね。今すぐ、やめてしまってはいかがですか?」
「誰が、脆弱な体だって? まさか、オレじゃないよな。オレ以外に、姫さんの護衛にふさわしい人間なんて、この世のどこを探したって存在しねぇよ。なんたって、オレと姫さんの相性は抜群だし? 誰かさんと違ってな!」
「なんですって!?」
「なんだ、文句でもあるのか?」
いつものように、口喧嘩を始めた二人にアオイたちはため息をついた。
「ねえ、レーゲンたち。これって、放っておいて良いかな?」
「いいと思いますよ。さぁ、参りましょうか、我が君」
ヴァルトたちに促され、グレースたちの言い合いを放っておいて歩き出したその瞬間、「姫さん、オレを置いていくな!!」という声と「いってらっしゃい、アオイ!!」という声が同時に聞こえたのであった。
(どんだけ仲が良いんですか、お二人さんって私は、突っ込みたいよ。むしろ、突っ込ませてくださいよ)
元いた部屋に戻ると、既にアオイたちを覗いた全員揃っていた。
「ごめん。遅かった?」
「気にしなくても良い。俺も、今来たところだしな」
「そうです。歳優先順位は、姫様が一番なのですから、どうかお気になさらずに」
アンジェの言葉に、スラーセルが続く。この国の皇太子と他国の使者がそういうのならば、そうなのかもしれないと考えるアオイだった。
「それでは、行きましょうか」
そう言って、スラーセルが右手を前にかざすと、アオイとグレースたちアオイの護衛、そしてナツメには見慣れた闇の回廊が現れた。アオイたち以外の反応は、意外にも二つに分かれていた。驚き目を丸くさせたのは、カインとセシル、ヒューズだ。それとは逆に、まるで知っていたかのように動じなかったのは、アンジェとクリス、そしてラシュだった。
そこで、アオイは初めて疑問に思った。
(闇属性は、この世界には誰もいないと思うよってクリス自身が言った。だったら、何で驚かないの? 普通は、カイン達みたいに驚くはずだよね。
アンジェとラシュもそう。まるで、闇属性の人間がこの世界にいることを知っているみたいだ。いや、もしかしたら知っているのかもしれない。この人達は、一体何を知ってるの?)
しかし、この疑問を今この場で口に出すようなことはしなかった。なんとなくアオイの勘が、聞いても話をそらされるか、濁されるかのどちらかだと告げていたからだ。
「さぁ、行きましょうか。これを通れば、シシレイ王国にすぐに着きますよ。転移場所は、玉座のある間になっています。きっと、陛下が首を長くして待ってると思いますよ」
スラーセルの言葉に頷き、安全のため先頭をグレースとスラーセル行く事になり、その後ろをアオイ、、ナツメ、アンジェ、ラシュ、クリス、そしてレーゲンやヴァルト、シュネの順番で出発をすることにした。
「じゃあ、カインたち。行ってくるね」
「あぁ、気をつけて行ってこい」
「いざとなったら、グレースを盾にしてでも逃げてくるんだぞ」
「そうそう。グレースなら、そう簡単には死なないから。アンジェの護衛たちは、スラーセル殿を説得したが、同行が認められなかったんだ。だから、アンジェたちの命はグレースやアオイの部下たちで守ってくれると嬉しいよ」
口々に、別れの挨拶を言っていった。「オレの扱いが、何か酷くなってきた気がする」とぼやきながら、グレースは闇の回廊の中に入っていった。続いてどんどん入ってき闇の回廊は消えた。