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黒の冥王  作者: 紅梅
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国へのお誘い

大変、遅くなりました!!

 すごい勢いで扉を開けて入ってきたのは、ラシュだった。いまだ、クリスの膝に跨って座っているアオイを見て、手で口を覆い視線を彷徨わせていた。

「あの、なんだ~、その・・・・。その格好って、結構そそられるな」

「そうでしょ」

「あぁ。って違う! アオイのそれはすごくそそられるし、できれば俺にもしてもらいたいと思うけど! 今は、その話をしてる場合じゃない。アオイに面会を、求めてきた奴がいるんだ。しかも、そいつはシシレイ王国の使者らしいぞ」

「はぁ!? シシレイ王国!?」

「えっと、それってどこだっけ?」

 驚きの声を上げたクリスとは対照的に、アオイは首をかしげた。

「覚えてないかな? アオイが、この世界に来たばかりの時に、この世界の大陸と国を教えたでしょ?」

「あ、思い出した。それで? その国の人が、私に何のご用?」

「分からない。とにかく、アオイに会わせない限り何も言わないの一点張りだ。だから、アンジェがアオイを来て欲しいって。それに、使者殿がナツメも呼べというからナツメも来る」

「なるほどね」






「我が君」





 いつから、そこにいたのか。ヴァルトが、扉の前に立っていた。鋭い視線でクリスを見るヴァルトに、クリスは悪戯心でアオイをさらに強い力で引き寄せた。それを見たヴァルトは、眉間に皺を寄せ無言で剣に手をかけた。それを見て、ヤレヤレというように「ボクは、まだ死にたくないからね」とアオイを隣に降ろした。

「えーっと、ヴァルト? どうかした? 何かあった?」

「手紙が――――――――差出人不明の手紙が、我が君宛で魔法を利用して来た。開けて、読み聞かせしますか?」

「良いよ! 手紙くらい、自分で読めるよ?」

「いえ、送り主の名前が分からない以上、何が起こるか分からないんですよ。だから、オレが読み聞かせます。安心してください。一言も、読み間違えたりしませんから」

 アオイの拒否も、物ともせず手紙の封を開け中から紙を取りだした。

「『拝啓、我が愛しの君、アオイ様。

 突然のお手紙、申し訳ございません。使者をそちらに向かわせましたが、どうしても妾の言葉でもお伝えしたかったのです。

 妾は、貴方様が真実を知る手伝い役を、女神ユリエルより任されました。妾の国、シシレイ王国には今現在他のどの国でも、失われている文献の全てが残っております。

 正直、妾は貴方様が真実を全て知ることが、貴方様にとって良い事かは妾には判断できません。しかし、貴方様が真実を望むのであれば、妾が力をお貸しいたします。

 向かわせた使者に、言ってくだされば、妾のいる場所に繋がる闇の回廊を作り出します。

 我が愛しの君が、訪れてくれることを心よりお祈り申し上げております。

 シシリア王国女王、サンドラ・シシレイ』だそうです」

(本当に、一言一句間違わずに読んでくれたんだ。ヴァルトが“妾”って言うのは、やっぱり変というか当たり前だけど似合わない!! それより、“我が愛しの君”って一体なんですか!? 何で私の事を、そうやって呼ぶんだ?)

 ヴァルトの朗読に対し、軽く現実逃避をしたアオイは気づかなかった。クリスとラシュが、“闇の回廊”という単語に対し何も聞いてこなかったことの不自然さに。まるで、当たり前に知っていたかのような違和感に、アオイが気づくことはなかった。




「失われた文献が、全て残ってるって羨ましいな。こっちなんて、ほとんど残ってないし」

「それって、凄いことだよね。他のどの国でも、失われてる文献があるなんて。・・・・あ、アンジェの所に早く行かなきゃね」

「だね。シシレイ王国の使者殿が、来ているみたいだし。それに、アンジェが怒り出す前に、さっさと行こうか」

 アオイの手を、優しく取ったクリスはゆっくりとアオイの歩調に合わせるように歩き出した。そんな二人を、追ってラシュも歩き始めた。その片手はクリスが握っていない方の手と繋がれていた。

「使者殿は、どこにいるのかな?」

「多分、客間だな。謁見の間から移動している集団に、会ってアオイを連れてくるように頼まれたんだ」

「なるほどね」

 少し話しながら、城内を歩いているとクリスが「ここだよ」と言い、足を止めた。

 コンコンという音と共に「ラシュ・ソレーユ様並びにクリス・ブルーバル、アオイ様をお連れしました」と公の場になるからか、敬語で名乗った。それに対し、アオイは一種の感動を覚えたのだった。

「入ってくれ」

「失礼いたします」

 中に入ると、見知った顔が見えた。ナツメ、アンジェ、カインの三人。そして、アオイの知らない人間。つまり、シシレイ王国の使者が部屋の中にはいた。

「悪いな、アオイ。わざわざ、来てもらって。ナツメは、先に来てるぞ」

「大丈夫。それで? 私に、会いたいっていう人は?」

「こちらの方だ。名前は―――――」

「お初にお目にかかります、我らが愛しの君。スラーセル・ハシュセと申します。どうか、スラーセルとお呼びください」

 アンジェの言葉を遮って出てきた黒に限りなく近い青の髪を持ち、同じような色合いの瞳を持った男は、アオイの前に跪き、アオイを見上げた。そのアオイを映す瞳は、心なしか輝いていた。アオイの頭の中は、聞きたいことでいっぱいになっていたが何とかそれを押しとどめた。

「えーっと、アオイ・ヒノです。よろしくお願いします」

「姫様から、自己紹介をしていただけるとは! これは、国に帰ったら自慢をしなければ。あぁ、姫様。陛下からのお手紙は届きましたか?」

 前半、アオイには理解できなかった台詞があったが、突っ込むとめんどくさそうだと本能で感じ取ったアオイは、そこを敢えてスルーした。

「届きました」

「なら、良かった。・・・・・・姫様、敬語をなくしてはいただけませんか? 姫様に、敬語を使わせていると知られたら、私は殺されます。

 えぇ、本気で殺しにかかってくる人間がいますから。どうか、私のためを思って、止めてください。ちなみに、私の敬語は癖ですのでお気になさらず。姫様と呼ぶのも、止めることはできませんのであしからず」

「わ、分かった。止める。これで、良いんでしょう?」

「はい。本日、私がこの国を訪れた理由は、姫様に関係してです。と言っても、それを全て私からお話しすることはできません。ここは、人の目や耳が多すぎる。

 何かを聞かれ、姫様を利用しようとする人間がこれ以上、増えるのは困りますからね。そのために私は陛下から、姫様をシシレイ王国へお連れするように命を受けました」




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