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黒の冥王  作者: 紅梅
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少しの知識

遅くなりました(汗)

明けましておめでとうございました。

本年もノロノロの亀更新になると思いますが見捨てずにお付き合いしてくださったら嬉しいです。

 アオイは、珍しく神殿にいるクリスを訪ねていた。

 数半刻前に、ずっとセシルに聞いた時から気になって仕方がなかった“女神サーリア”という存在についてハンスに聞いたところ、

「そういう系統のお話は、クリスに聞いた方が良いと思いますぞ。何せ、神官長ですからなぁ」

 と言われ、神殿にやってきたのだ。神官にクリスの居場所を尋ねると、仕事場らしき部屋に案内された。

「神官長、姫様がお見えになっております」

「アオイが? 良いよ、入って」

「さぁ、姫様どうぞ」

 神官が扉を開けた先には、正面の机で仕事をしているらしいクリスがいた。左右を本棚に囲まれている。どの本棚にも本がぎっしり詰め込まれていた。

「珍しいな。アオイが此処に来るなんて」

 アオイが中に入ると、神官は一緒に入ることなく一礼して去って行った。ようやく゛遠慮゛という言葉を覚えたらしいグレースや、レーゲン達は扉の前で待機することにしたようだった。

「うん。ちょっと、クリスに聞きたいことがあって」

「そっか。おいで」

 クリスが立って、アオイを手招きし、その手を優しく握り隣の方にあるアンジェの執務室にもあったような応接セットのようなものの長いすに導かれた。長いすの一つにクリスは座るが、手を握られたままのアオイは座ることができなかった。


「これじゃ、座れないんだけど?」

「大丈夫だよ。アオイは、ここに座るから」

 アオイの手を放した代わりに、腰に手を伸ばしアオイを持ち上げ、自分と向かい合わせになるように膝の上に座らせた。そして落ちないように、抱きしめるように手を回した。

「あの? クリス? 降ろしてくれない?」

「だめ。降ろしたくない」

「恥ずかしい」

「顔が赤くなってるね。かわいいよ、アオイ」

 結局、アオイが何を言っても降ろす気にはならないらしい。やはり女の力では、男の力には勝てないことが分かり諦めた。

(本当に、これは恥ずかしい。でも、良かった。着ているのがロング丈で! 膝丈だったら、もうこれはなんの羞恥プレイですか!? って絶叫するところだったもんね!)


「それで? アオイは、ボクに何を聞きたいのかな?」

 羞恥に顔を赤くさせていたアオイだったが、開き直ったようにクリスと視線を合わせる。

「“女神サーリア”について、聞きたいと思って。この人は誰? この世には、ユリエル以外の神はいないんじゃなかったの? 何で、女神なのに死んでしまったの?」

「なるほど、ね。教えてあげたいんだけど、女神サーリアについての文献はボクが知ってる限りではほとんど無いんだ。これでも、ほとんど全ての神殿の書庫とかで探してみたりしたんだけどね。それでも、良いかな?」

「良いよ。だから、教えて」

「分かった。女神サーリアが生きていた時代は、この帝国ができる前までなんだ。彼女は、アオイも知ってると思うけど闇の女神だった。この現在の世界の唯一の神である女神ユリエルの姉君だと言われている。


 この頃までは、世界の統治を女神二人で行っていた。朝から夕方にかけては、光の女神が。夕方から明け方にかけては、闇の女神がそれぞれ仕事をしていた。この二人を補佐するのが、光の補佐の一族と闇の補佐の一族と言われていた一族の代々の当主の役目。


 闇の補佐の一族が、今どうしているかは分からない。でも、光の補佐の一族が、どこにいるかは分かる。なぜなら、その一族の末裔がアンジェのシーフォ家とボクのブルーバル家。元々、両家は一つだったんだけど皇族と神官で別れたみたい。


 話が、逸れたね。ある日、女神サーリアは人の手によって亡くなった。闇がなければ、もっと遊べる。もっと、働ける。闇なんかいらない。なくなれば良いとか考えている人間が多くいて、その人間達が集まって、一つの組織を立ち上げた。その組織の名前は、テネーブル・エーヌ。意味は“憎悪の闇”


 そして、その組織の頭は当時、光の補佐の一族の当主だった人の弟だったらしいよ。彼は、女神ユリエルを敬愛していた。誰よりも、ね。だから、女神サーリアが憎かった。なにせ、姿を見ることができるのは一日のうち半分だけだったからね。女神サーリアがいなくなれば良いんじゃないのか? その思いがあったからこそ、彼はデネーブル・エーヌを創立した。


 と言っても、殺したのは彼じゃないけどね。女神サーリアを殺したのは、その兄――――――――光の補佐の一族の当主だよ。その当主は、狂おしいほどに女神サーリアを愛していた。その想いを、受け入れてもらえなかったんだ。だから、刃を向けた。それを甘んじて受け入れた結果、亡くなったんだ。


 これが、ボクが女神サーリアについて知っていることだよ。・・・・・・ごめんね」

 長い話を終えた後、クリスは謝りアオイを強く抱きしめた。


「どうして、クリスが謝るの?」

「気づいてない? 今、アオイは泣いてるんだよ。ほら」

 背中に回していたクリスの右腕が、頬を撫でると確かに濡れている感触がした。

(なんで、泣いてるんだろう。私は、哀しくない。・・・・・私じゃない“私”が泣いてるの?)


「うーん。女性を泣かす何て、ボクも男としてまだまだだね」

「別に、クリスのせいじゃないと思うけど」

 苦笑いをするアオイに、クリスは頬を撫でていた手を後頭部に移動させた。手に力を込め、顔を自分の方へと近づけると涙の痕に添って舌を這わせ始めた。

「ん。やっ。くすぐったい」

 だんだんと降りてきていた舌が、最後にアオイの唇を舐めた。

「ちょっ!? クリス!!」

「ごめん、ごめん。これ以上は、何もしないよ。・・・・・・今はね」

 真っ赤になって、降りようともがき始めたアオイの耳には“今はね”という言葉が入ってこなかった。




「アオイっ!!」



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