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黒の冥王  作者: 紅梅
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報復のお時間です 下

 シシリア達は、聞こえるはずがない声を聞いた。急いで振り返ってみると、長いすからアオイが体を起こしている時だった。

「なっ! 生きて!?」

「当たり前じゃないですか。これくらいで、私を殺せるとでも? 本当に、愚かな人達ですねぇ」

 たちまちシシリア達の顔は、醜く歪んだ。

「そうでしたか。可哀相な、姫様。せっかく、即効性の毒で苦しまないように殺して差し上げようと思いましたのに。仕方がありませんわね。やりますわよ? 苦しんで、死んでください」

 そう言いシシリア達は、アオイに向かって炎を放った。しかし、この行動はアオイにとって、やれやれとため息をつくくらいでしかなかった。それもそのはず。アオイにぶつかろうとした炎は、何かに阻まれて消されたのだから。しかし、諦めるはずもなく違う属性でも攻撃を仕掛けてきた。結果は、シシリア達の惨敗だった。どの攻撃も、アオイに届く前に消えてしまうのだ。

 シシリア達が驚いていると、グレースがアオイの腰に腕を回して抱き寄せていた。そして、シシリア達はヴァルト達によって拘束されていた。

「さすがね。グレース、レーゲン、ヴァルト、シュネありがとう。知ってましたか? 優秀な護衛が私にはいるんですよね。それも、貴女方とは比べものにはならないくらいの」

「我らは、当然のことをしたまでです。我が君を、傷つけようとする者などに負けることはありえませんよ」

 爽やかそうな笑顔を浮かべているヴァルト達だが、どれだけ強い力で拘束しているのか、苦痛の表情を浮かべているシシリア達を見ればすぐに分かる。

「こいつらよりも、強いのは当たり前だろう? むしろ、弱かったら哀しくて立ち直れないからな。姫さんに向かって、炎とかを投げようなんてありえないだろ。てか、普通は護衛がいない不自然さに気づくよな。それに、気づかなかったということはそれだけ頭が弱いって事だろ」

 この言葉で、先ほどの炎を消したのはグレースだと分かる。さらに強い力で、アオイと密着した。

「まぁ、このオレが姫さんに傷つけさせはしない」

「ありがとう」

「礼なんて、いらねぇーよ。オレは、ただ姫さんに傷一つ付いて欲しくないって思ってるんだ。それに、姫さんを守るっていうのはこの上なく役得だからな」

 見つめ合って、アオイの頬に指を滑らせるグレース。何故か甘々な雰囲気を出していたが、シシリアの金切り声で中断された。ハミールとカラリアは大人しくしているが、シシリアただ一人はヴァルトの拘束から抜け出そうとじたばたと暴れている。

「放しなさいよ! 何よ、この女が悪いのでしょう!? わたくしから、アンジェ殿下を奪ったくせに!! わたくしに、こんなことをして許されると思っているのかしら? お父様に言いつけてやるわ!!」

「自分の立場が、全然分かってないみたい。はぁ。めんどくさい」

 思わず、本音が漏れてしまうアオイだった。



「言質も取れたし、もう良いよね。アンジェ、カイン、ヒューズ、セシル出てきて良いよ」

 アンジェ達は、出てくる際にまだアオイと密着しているグレースを睨むことを忘れない。出てくるのを見て、シシリア達は顔を真っ青にした。そんな様子を見て、アオイは密かに笑う。

「何で!? いないって言ったじゃない! 騙したのね!!」

「人聞きの悪いことを言わないでくれますか? 私は言いましたよね? “ここにはいない《・・・・・・・》”と。この部屋にはいないけれど、違う部屋にはいるっていう意味ですよ? 分からなかったんですか??」

 密かに笑っていたアオイだが、だんだんとシシリア達の表情に変化が見られてきたことに疑問を覚えた。

(追い詰められているはずなのに、なんで頬を赤く染めてるの!?)

「あぁでも、きっとアンジェ殿下がここにいるのは私の元に戻ってきてくれるためなんですね」

「そうですね。カイン様もきっとそうに決まってますよ」

「ヒューズ様もセシル様も私のために来てくれるなんて・・・・」

 自分達が、拘束されているのにも関わらずうっとりした表情でアンジェ達を眺めるシシリア達にアオイは嫌悪感を抱いた。グレースの耳元で、アオイは疑問をささやいた。

「ねぇ、グレース。アンジェ達に、近づく女ってこんなのばっかなの?」

「いやー、まぁ。大体が、こんな感じなんじゃねぇーの? あんまり、人の話しを聞かないし自分に自信を持ったヤツ? みたいなのが多いかな」

「最悪。こういうのが、一番質が悪いんだよね。こちらが、何を言っても聞く耳を持たない。自分の考えが、全部正しいと思っている。何で、そう思ってるような人たちは自分が間違っていることに気づかないのかな? 気づかなければ、他人からの信用は全てなくなる。誰も、手を差し伸べてはくれないというのに」

「気づきたくないからなんじゃねぇの? 気づいてしまったら、現実と向き合わなければならなくなってしまう。それは、そいつらにとっては目を背けたい現実だ。だから、目を背けたまま、自分は正しいんだと主張し続ける」

「そんなんじゃ、世の中生きてけないのにね」

 小声で、話し合っている間にアンジェ達の方も話が進んでいたみたいだ。

「俺が、ここにいるのはアオイのためであって、お前達のような品の悪い女達のためではない」

「フフ。そう、仰ってわたくしたちのためにいらっしゃるのでしょう? 照れた殿下は、可愛らしいですわ。あ、今度我が家に来てくださいませんか? 父と母が、貴方様にお会いしたいと申し上げておりました。その時に、具体的な結婚内容などを決める予定なんです」

 シシリアは、全くアンジェの話を聞いていない。いや、聞いてはいるがただの照れ隠しだと思っているようだった。

「お前が言っているその時は、永遠に訪れない。今し方、連絡が来た。シシリア・フォレス並びにハミール・グレッチェ、両者の両親はかなりの罪を隠蔽していたことなどから牢獄行きだ。そして、お前達の姉からも『両親や出来の悪い妹のことは、自分達とは関係がない。もう、縁はとっくの昔から切れている』と連絡が来た。カラリア・デルク、お前には両親から『陛下や殿下のお心のままに』と連絡が来た。よって、お前達も牢獄行きだ。連れて行け」

 兵士が、部屋の中に入って来てヴァルト達から呆然としているシシリア達を引き受け連れて行った。



「さて、アオイ。これで、お前を害する者は消えた。この噂が出回って、お前を傷つけようとする者はいなくなる」

「そうだね。これで、ちょっとは安心して過ごせるかな」

 グレースから、奪うようにアンジェがアオイを抱きしめた。それを、今に舌打ちしそうな勢いのグレースと「ずるい」と言いたげなカイン達がいたがアンジェに抱き込まれている状態のアオイはそれを見ることはなかった。

「だけど、警戒して足りないっていうことはない。悪いが、部屋を変えさせてもらうぞ。もちろん、俺の隣の部屋だ。もう、既に準備はできてる。行くぞ」

 アオイの顔をのぞき込んだと思ったら、そんなびっくり発言をするアンジェだった。既に準備ができているという言葉から、想像できるとおりアンジェは狙っていた。アオイが、自分の部屋の隣で生活を送ってくれることを。さらに、頭の回転の速い人ならすぐに分かる。アンジェの部屋の隣の部屋の存在価値を。

 突然の部屋替えに、呆然としてアオイはそこまで頭が回らなかった。こうして、新しい部屋での生活が始まるのであった。そして、アオイが気づくのはもう少し先の話である。











「やっと、見つけた。我が愛しの君。彼の国に、使者を送れ。こちらでは、我が愛しの君をお迎えするための準備を進めるとしよう」

「その使者の役目、俺がやろう」 

 一歩、一歩と着実にアオイの運命を決める歯車は回り始めた。

近日中と言いながら、遅くなってすみません!!

今年は、これが最後の更新です。

今年一年間、お世話になりました。

来年もよろしくお願いいたします。

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