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黒の冥王  作者: 紅梅
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報復の下準備

 セシルに、魔法を教えてもらった。結果から言うと、頭の中で魔法を構成して力に表すのはアオイは少し不得意というより、威力が半端なく強くセシルから魔法を使うのは緊急事態を除き禁止を言い渡された。反対に、ナツメはとても上手かった。

「うーん。ナツメの魔力は普通程度だけど、アオイの場合は、きっと魔力が強すぎるんだろうね。しかも、なんとなく自然に干渉せずに使ってる感じに思えるし」

 グレース指導の下で、ナツメが魔法の練習を離れたところでしていた時に、困った顔をしながら、そう言うセシルにアオイも困った顔しかできなかった。さすがに、「私は、闇そのものだから自然に干渉しなくても良いの」とは言えなかった。もう少し、秘密にしておきたいのだ。話すとしたら、アオイが全てを知った時。闇を嫌う者達の存在の真実、自分が闇そのものだという意味。この全てを知った時には多分話せるとアオイは信じている。

「だから、魔法の使用は禁止。使って、アオイが傷つくなんて、僕は嫌だからね。何かあっても、僕がアオイを守る。だから、安心して」

 困った顔から一転して、蕩けるような甘さを含んだ笑みでこちらを見られたら、頷くしかない。「闇を使えるから、守られなくても大丈夫」とは、やはり言えない。

「でも、私にはグレースとかシュネとかいるよ?」

「それでも、僕は守りたいんだ。僕が、守らないとしてもアオイには大勢守ってくれる人がいるのも分かってるし、アオイが大人しく守られてくれるような性格をしていないのも知っている。

 もしかしたらアオイは、誰かを守ろうとして傷つくかもしれない。それでも、僕は自分勝手かも知れないけど、アオイに傷ついて欲しくない。だから、アオイの事を守りたいと願うよ」

「じゃあ、何かあった時はお願いね」

 そんな約束をした次の日の午前中に、シュネ達は戻ってきた。




「ただいま戻りました、我が君」

「おかえり。それで? どうだった?」

「ちゃんと調べてきましたよ。素行や人格が悪い人ほど調べやすいんです。だから、楽に調べられましたよ」

「なるほど。じゃあ、報告よろしく」

「はい。我が君に、嫌がらせの数々を行った女は三人いました。


 まず一人目は、シシリア・フォレス。年は、二十歳。位は、伯爵家三女。


 家族構成は、帝国の小うるさいじじぃとして居座っている父親とその父親に従うしか脳のない母親。そんな両親から生まれたとは考えられないほど優秀な三十歳の長女と二十七歳の次女。そして、自己中な二十歳の三女です。


 父親の方は、殿下がやる事為す事全てに反対をしているようですね。古い考え方に囚われず、どんどん新しいことを取り入れていく殿下が、お嫌いだとか。今では、若手全員から『もう、隠居生活でも送ってろよ』と邪険に扱われているみたいです。それも、気に入らないんでしょうね。


 母親の方は、そんな夫に従うことしかできない低級な脳みそしか持っていない愚かな女ですね。


 長女の方は、そんな両親を見て育ったためか、とても優秀になんたようです。婿を取って今は、両親に代わり領地で夫婦共々、仕事に励んでいるようです。子供は、二人で跡取りも決まっているみたいですね。


 次女の方は、そんな姉に憧れてか、姉と同じように優秀に育ったようですね。現在は、隣の国のライウィン帝国と繋がりを持つために公爵家へ嫁いだようです。夫婦仲は、良好のようで子供が三人います。


 そして、三女は年を取ってから生まれた子供と言うことで溺愛のしすぎて、我が儘で自己中な女に育ったようです。父親に一人甘やかされて育ったせいか、優秀な姉二人を馬鹿にしているようです。父親が、『嫁になんぞやりたくない!』ということで婚約者もいません。


 まぁ、長女と次女は良いとして、こんな女と結婚したいという男はいないでしょうね。あぁ、でも持参金をたんまりと積めば、嫁のもらい手の一つや二つはあるんじゃないんですか。


 この女と関係を持ったのが、カイン殿のようです。しかし、関係は一回だけだったようです」

 人畜無害そうな顔をして、ヴァルトはサラッと毒を吐く。


「次に、ハミール・グレッチェ。年は、十九歳。位は、男爵家次女。


 家族構成は、欲丸出しの脂ぎった父親とその父親を見限って家出をした二十四歳の長女と十九歳の次女です。母親は、次女が生まれてから二年後に亡くなったようです。死因は、病死ということですが、詳しい原因は不明だそうです。噂では、賢い妻を妬んだ夫が毒殺をしたというものがありました。


 父親は、領地に引っ込んでいいますが、欲望だけは人一倍らしく何かに付けては皇都に来てますね。ついでに言うと、税が重すぎて領民からの反発も強いみたいです。


 あと、国に納めるはずの税は、『今年は、たいそう最悪な年でして』とか言いながらあまりだしていないみたいですが、最悪と言うことはなく例年通りだそうです。領民から納められたものの中で、国に納めたほんの僅かな物以外の物は自分の物にしているみたいですね。


 家出をしたという長女ですが、今はここからずっと南に行ったところにある国境近くにある街で、飲食店で働きながら幸せに暮らしているようです。最近、結婚をしたらしいですよ。


 次女の方は簡単に言うと、シシリア・フォレスの腰巾着一号ですね。何かあれば、すぐにシシリア・フォレスの味方をして信頼を得ているようです。だからか、何かと援助してもらっています。シシリア・フォレスからの信頼を落とすのが怖いのか、いつも黙っていてここぞという時にだけ発言をしているみたいです。


 夫も婚約者もいないみたいですが、これはシシリア・フォレスがさせないようにしているという話です。曰く『わたくしよりも、先に結婚しようなんて認めませんからね? 何せ、わたくしの方がお前よりも身分は上ですし魅力的ですから』だそうです。


 この女が関係を持ったのがヒューズ殿とセシル殿。二人で相手をしたようで、関係は一回で終わっています。」

 レーゲンは、何を考えているのか分からない表情でアオイに報告していく。


「最後は、カラリア・デルク。年は、十六歳。位は、ハミール・グレッチェと同じく男爵家で長女です。


 家族構成は、両親は素晴らしい領主として有名ですね。兄弟はいません。必然的にカラリア・デルクが婿を取り、その婿が跡継ぎとなります。


 父親も母親も領民思いの人達らしく、無理な税の搾取や領民を虐げるなどの事はないようです。


 その血を受け継いでいるはずのカラリア・デルクは、シシリア・フォレスの腰巾着二号ですね。気が小さく何でもシシリア・フォレスに従っているという話ですが、それは表の顔での話のようです。裏では、傲慢で高飛車で捻くれた性格をしているようですね。あと、自分より身分が高い者には逆らわず、おとなしく気が小さい子を演じるという猫かぶりな性格もしてますね。


 このような性格になった原因は、多忙な両親にほとんど構ってもらえずにいたら、そうなったみたいです。まぁ、簡単に言ってしまうと、寂しがり屋の甘ったれた馬鹿な娘という事ですね。普通に、贅沢を言い自分より身分が下の領民を見下しているみたいですね。領民の専らの悩み事は『なぜ、あの両親からこんな娘が生まれるのか』だそうです。


 そして、皇都で開かれた豊穣祭でアンジェ殿下に一目惚れをしたらしいです。殿下が出る夜会という夜会に出席し、迫りに迫って、あまり貴族の娘と関係を持たないという殿下に、ようやく関係を持ってもらえましたが、一回で終わったみたいです。


 そこに我が君が出てきたので『なんなのあの女! 私のアンジェ殿下様に取り入っちゃって!! キィー! 悔しい! 所詮は、泥棒猫のくせに!』と変な妄想が出てきて、同じようなことを思っていたシシリア・フォレスに『シシリア様のカイン様に、色目を使っていてシシリア様から奪い取ろうとしているみたいなんです』と言って唆したみたいです。

 あ、ハミール・グラッチェもヒューズ殿とセシル殿に対して同じようなことを思っていたようです。


 そこから、我が君に対しての嫌がらせが始まったというわけです。ですから、首謀者はシシリア・フォレスではなく、カラリア・デルクでした。要は、この三人は可哀想な妄想癖の持ち主と言うことになりますね」

 シュネはそう言って、締めた。


「なるほど。で、その三人が犯人だっていう証拠は? ちゃんと、揃えた?」

「当たり前です。三人とも思ったよりも馬鹿で助かりました。家が遠いとかで、あまり集まれないからと言って手紙でやり取りしていたようでそれを入手してまいりました」

「手紙でやり取りって・・・・。しかもその手紙を、捨てないで置いておくなんてどれだけ馬鹿なんだろう。それを手に入れたことは、気づかれていない?」

「はい。家にちゃんと侵入して、盗んできた物と同じような紙をちゃんと置いてきましたから」

 人は、それを「不法侵入」と言うだろうが、それに気づく者は誰もいない。なにせ、盗んできた張本人達を含めこの場にはアオイとアオイ至上主義でアオイのためならなんでもするという人間だけしかいないからだ。

「よろしい。報復の準備をしようか。やられたら倍以上にやり返す。そうじゃないと、気が済まないし。コニーデは、アンジェのところに行って空いている時間を聞いてきて。報復には、アンジェ達の力を借りなきゃだからね」

「分かったわ」

 短くそう言うと、コニーデはさっそく部屋から出て行った。グレースは、その後ろ姿を見つめた後、視線をアオイに戻した。

「姫さんは、具体的に何をするつもりなんだ?」

「そうだなー。グレースは、女が一番好きな人にやられて傷つくもしくは絶望するのは、どんなことだと思う?」

 悪戯っ子のような目でアオイは、グレースを見た。

「わかんねぇーな。女心を考えた事なんて、ほとんどないからな」

 困ったように首をかしげながら言う。

「私も経験したことないから、よく分からないんだけど、浮気や裏切り、捨てられること。相手の心変わりって事かな。

 まぁ、今回のことは相手の心変わりって話じゃないけどね。だって、結局は彼女達の気持ちの一方通行でしょ。

 要は、関係を持った時に、気持ちを割り切れるか割り切れないかで、彼女たちは割り切れなかった。

 だから、私にあんなことをしてきた。だったら、それ以上のことをしてあげなきゃじゃん。その割り切れない気持ちを利用して、ね」

 悪魔のような微笑みを浮かべて言うアオイだが、その目は全く笑っていないことから本気だということが、容易に想像できる。

(私は、知っているし。このことで、どれだけ女が打ちのめされるかを。ナツメや他の人でさんざん見てきたんだし)

 口に出したら、ナツメが可愛そうかな? と思ったので心の中でそう付け足すだけに止めた。

「なるほどな。さすが、姫さん。頭良いな」

 グレースは、アオイの言葉に感心して軽く拍手を送った。



「どうぞ、我が君が、なさりたいようになさいませ。あたし達は、それに従い、その目的が為せるようにするだけですから。もちろん、汚れ仕事は、喜んで引き受けますわ」

「ありがとう。でも、シュネ達ばかりに任せてちゃダメだし。汚れ仕事だって、あんまりさせたくないもん。私は、シュネ達を道具として扱いたくないよ。対等な存在として、扱いたいんだ」

「我が君のその言葉だけで、私達は十分ですわ」

 嬉しそうに笑うシュネ達に、アオイやグレースもつられて笑ってしまう。


「『本日の一五の刻までには、仕事の目処が付くからお茶を一緒にしながら話を聞く』ということです」

 戻ってきたコニーデはそう言った。

(なるほど。三時のお茶の時間は、この世界でも地球でも同じみたいだからな)

アオイちゃん、静かに怒ってましたね。

怒ったら悪魔になるんだ・・・。

怖っ!

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